地盤工学

土砂災害

軽量資材と人力による独自工法で土砂災害を事前予防


福林良典先生

宮崎大学 工学部 工学科 土木環境プログラム

出会いの一冊

土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る

藤井一至(ブルーバックス)

斜面を構成する土の成り立ちについて、興味深く、わかりやすい表現で説明された本。若い著者の研究者魂も、読者への刺激にもなると思う。地球誕生の歴史から土の成り立ちを理解したうえで、斜面災害対策など地盤防災のための力学的な設計方法などを勉強してもらうと、より興味が持てると思う。

こんな研究で世界を変えよう!

軽量資材と人力による独自工法で土砂災害を事前予防

森林本来の治山機能を復元・補強

緑に覆われた山間部斜面では、森林の根系や下草類が降雨を地中へと浸透させ、表層付近の土砂の移動を捕捉し安定させる働きがあると言われています。しかし、森林伐採や土地開発が進むと、これらの機能は失われてしまいます。また昨今、頻発する豪雨下では、さらなる斜面災害の発生が危惧されます。

そこで、大規模災害の事前予防として、軽量資材と人力で森林本来の治山機能を復元または補強し、土砂崩れのリスクを低減する対策工(地すべりを防ぐために斜面内や表層に設置する構造物)の開発を進めています。山間部に建設される送電線の鉄塔敷地の保全に運用されてきた技術を、応用しています(㈱シーテックとの共同研究)。

大学内の演習林で降雨実験

山間部には、大きな工事用の機械やコンクリート製の資材を運搬し設置することが困難です。斜面災害への事前予防策に、大きなお金はかけられません。そのため、軽量資材と人力による対策工にならざるを得ませんが、その効果は経験的に認知されていても客観的には示されていません。

そこで、大学内の演習林の実斜面に軽量資材と人力による簡便工(地すべりを防ぐために斜面表層に人力で設置する構造物。丸太、柵、砂利入り袋など)を設置し、斜面地盤内への降雨の浸透の様子を計測しています。また、この計測結果を再現することが可能な、シミュレーション手法の開発を進めています。そして、簡便工を設置した斜面地盤内の降雨の浸透状況から、斜面の安定性を評価します。

災害に強い持続可能な森林を創る

開発中のシミュレーション手法を利用すれば、様々な地形や地質、降雨条件下で簡便工が設置された斜面の安定性を定量的に示すことができます。事前予防として、軽量資材と人力による簡便工を効果的に設置することにつながります。その結果、災害に強い持続可能な森林環境の創出が期待されます。

簡便工設置斜面での人工降雨実験の様子
簡便工設置斜面での人工降雨実験の様子
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

開発途上国農村部の土の道路で、大きな水たまりや泥をよけて通行する親子の様子をみて、土木技術者として何かできないかと考えました。地元ではお祭りの前に参道の草刈に母が参加して、缶ジュースをもらっていたことが思い出されました。現地でも人々が集まり、身の回りの材料と人力でもできうる限りの工夫をすることで、車が通れるようにできないかと住民と一緒に道直しを進めてきました。ふと国内外での土砂災害への対策にも同じような考えて対応できないか、どんな工夫ができるかを研究テーマとするに至りました。

実斜面で簡便工と降雨浸透の計測のためのセンサーを設置した区画
実斜面で簡便工と降雨浸透の計測のためのセンサーを設置した区画
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「簡易治山工による修復斜面の水文モデルと斜面安定解析手法の開発」

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実斜面の土質把握のための試料採取
実斜面の土質把握のための試料採取
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

(2) 建設全般(土木・建築・都市)

◆主な職種

(1) 製造・施工

(2) 設計・開発

(3) 技術系企画・調査、コンサルタント

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

フィールドでの調査や計測、実験と、室内実験やシミュレーションを併用した研究ができます。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

聖の青春

大崎善生(講談社文庫)

自分の運命を受け入れて、不器用だけどがむしゃらに将棋に生きた主人公とそれを支える人々の心温まる物語。信念を持ち、周りの目や空気に流されない生き方が、人の心を打ち支えてくれる人もできてくる。つい周りに流されたり、人との衝突を避けて自分を抑えたり、先が見えないことに不安を覚えるなかで、信念の大切さと勇気を与えてくれる。


吉田修一(文春文庫)

大ヒット映画「国宝」と同じ作者。台湾新幹線の建設に、日本と台湾の技術者が互いの習慣や文化の壁を越えて、協力し事業を進める様子が描かれている。日本国内だけでなく海外にも視野を広げてほしい。


高熱隧道

吉村昭(新潮文庫)

戦前の難工事であったトンネル施工に携わる人々の物語。私たちの生活社会基盤は、その建設過程に技術の結集と、多くの人々の血と汗と涙の結晶であることを知り、そこにロマンを感じてほしい。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

応用地質学

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

ターミネーター2

Q3.大学時代の部活・サークルは?

テニス

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

開発途上国で現地の人々と道直しをすること


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