地盤工学

焼却灰の有効利用

焼却灰を建設資材の「土」にリサイクル! ごみ問題も解消


藤川拓朗先生

福岡大学 工学部 社会デザイン工学科

出会いの一冊

土木の仕事ガイドブック

柴田 久(学芸出版社)

本書は、土木の分野(公務員、ゼネコン、コンサル、メーカー、公益企業など)に携わる35人の技術者にスポットをあて、それぞれの仕事内容ややりがいなど、仕事の醍醐味について紹介しています。

この本を通じて、土木は、道路や橋などのインフラ整備にとどまらず、防災や環境保全、資源循環、カーボンニュートラルなど、多岐にわたる課題に関わる非常に裾野の広い分野だということがわかります。人々の暮らしを支えるとともに、地球環境と共生する社会づくりにも貢献できる土木技術者としての大きな魅力や使命感を感じて欲しいと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

焼却灰を建設資材の「土」にリサイクル! ごみ問題も解消

天然資源に代わる新たな資材が求められている

私の研究を一言でいえば、「土」でないものを「土」としてリサイクルする研究です。

これまで海の砂や山の砂は、建設資材や埋め立て資材として広く使用されてきました。しかしながら、これらの天然資源の大量採取は、水産資源や自然環境(生態系の破壊)に影響を及ぼすことから、現在は規制が強化(場所によっては採取禁止)されています。そのため、天然資源に代わる新たな資材や材料の開発が求められています。

家庭ごみの焼却灰に着目

このような背景の中、私は、私たちの日常生活から毎日排出している「家庭ごみ」を清掃工場で燃やした灰(焼却灰と言います)に着目して研究を行っています。

日本は国土が狭いため、ごみは燃やして減容化してから最終処分場に埋め立てています。しかし、処分場の容量は年々減ってきており、今のペースでいくと十数年後には埋める場所がなくなってしまうことが明らかになっています。

持続可能な開発へ

これまでの研究で、焼却灰は砂や土と非常に良く似た性質(大きさや強さ)を持つことがわかってきました。そこで、処分に困っている焼却灰を天然資源に代わる資材として有効活用することができれば、世の中の環境問題を解決する一助になるだけでなく、これらは、持続可能な開発にもつながります。

まだまだ解決しないといけない課題は多いですが、1日でも早く、「焼却灰」を「土」として安全にリサイクルできる日が来ることを願いながら、日々、研究に取り組んでいます。

研究で使用する”焼却灰”です。家庭ごみを燃やした後の灰で、これが最終処分場で埋め立て処分されています。意外と砂やレキのように見えるでしょ?よく見ると、ガラス片や陶器、釘なども混じっています。
研究で使用する”焼却灰”です。家庭ごみを燃やした後の灰で、これが最終処分場で埋め立て処分されています。意外と砂やレキのように見えるでしょ?よく見ると、ガラス片や陶器、釘なども混じっています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

小さい頃からラジコンなどの機械いじりが好きで、将来は「機械」の道に進もうと考えていました。そんな中、高校時代の登下校中に毎日目にしていた建設現場が、少しずつ形を変え、やがて巨大な構造物として完成したとき、人の手で街がつくられていくことに大きな感動を覚えました。

小さな人間でも協力し合えば、橋やダム、道路のような巨大なインフラを築くことができ、それが人々の安心で快適な暮らしにつながっていることに深く感銘を受け、そこから「土木」に興味を持つようになったことがきっかけです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「比重差選別と炭酸化処理を併用した改質焼却主灰の土木資材利用に関する研究」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室の学生と一緒に、実際の最終処分場で実験をしている写真です。焼却灰で作製したマウンドの強度や密度を測定しています。一部はサンプリングして研究室に持ち帰り、より詳しい実験(強度試験や環境安全性試験など)を行います。
研究室の学生と一緒に、実際の最終処分場で実験をしている写真です。焼却灰で作製したマウンドの強度や密度を測定しています。一部はサンプリングして研究室に持ち帰り、より詳しい実験(強度試験や環境安全性試験など)を行います。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 建設全般(土木・建築・都市)

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 生産管理・施工管理

(2) 設計・開発

(3) 技術系企画・調査、コンサルタント

◆学んだことはどう生きる?

卒業後は、公務員、ゼネコン(建設会社)、コンサルタント(調査・設計会社)、メーカーなどに就職して、技術者として活躍しています。また卒業生の中には、学生時代から海外に興味があり、海外の建設現場で技術者として働く卒業生もいます。

私の専門である「地盤工学」という学問は、全ての構造物を支える地盤を扱う極めて重要な学問です。目には見えにくい存在ですが、安全・安心な社会を築く上で不可欠な役割を果たしています。

先生の学部・学科は?

焼却灰を地盤材料として有効利用する研究は、同分野では前例が少ないアプローチであり、他大学ではほとんど取り組まれていない点に大きな特色があります。また、焼却灰には人体に有害な鉛等の重金属が微量に入っているため、有効利用するためにはこれらを取り除き無害化する必要があり、これらの解決に寄与できる特殊な研究装置を所有しているのも強みです。

その他、自治体や国の研究機関とも協力体制が整っており、実際の処分場で実験をするフィールドワークの機会にも恵まれています。

研究で使用している比重差選別装置です。この装置は、振動数・空気量・スロープの傾きなどを自由に調整することができます。この装置を使って焼却灰を密度の軽いものから重たいものに分別し、分別した焼却灰を砂の代わりとして使用する研究を行っています。
研究で使用している比重差選別装置です。この装置は、振動数・空気量・スロープの傾きなどを自由に調整することができます。この装置を使って焼却灰を密度の軽いものから重たいものに分別し、分別した焼却灰を砂の代わりとして使用する研究を行っています。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

基準値のからくり

村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生

基準値以下だから大丈夫とか、基準値を超えたから危ないとか・・・。そもそも基準値って何だろう?誰がどうやって決めたんだろう?

本書は、私たちの身の回りの基準値について、わかりやすくかつ面白く書かれています。基準値の意味を知り、正しく恐れることの重要性に気づかされる一冊です。


国土崩壊

北村精男(幻冬舎)

激甚災害が相次いて発生している中、本書は、”このままでは国土が崩壊する”という強い警鐘をならし、現行の防災対策の限界や課題を鋭く指摘しています。国土を守るために、今何をすべきかを問いかける一冊です。


土はおしゃべり

地盤工学会関西支部

「地盤工学」という学問の内容について、中高生が理解できるように専門用語を使用せず、身近な事例を取り上げて、非常にわかりやすく説明しています。土の面白さや土の不思議さについて知ることができる一冊です。
※入手は下記のサイトから

[webサイトへ]

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

今と同じく「土木工学(建設工学)」の一択です。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

カナダです。1年間ほど留学した経験があり、大自然と緑に囲まれ人のぬくもりにあふれた安心して暮らせる街と感じました。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

我が子の野球の応援と少年野球チームの審判(ストライクゾーン広め)です。

Q4.好きな言葉は?

一生勉強、一生青春(相田みつを)


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