構造工学・地震工学・維持管理工学

橋梁の鋼材

注目の橋梁用高性能鋼材 その強度を評価する


岸祐介先生

東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科(都市環境科学研究科 都市基盤環境学域)

出会いの一冊

トコトンやさしい橋の本

依田照彦(日刊工業新聞社)

本書は社会資本としての橋の役割、設計の考え方、維持管理に関する内容がわかりやすく説明されています。文章による説明だけではなく、1つ1つのトピックについて、イメージ図が添えられているため、読みやすい内容で構成されています。

特に、橋の形(種類)についての説明が記載されていますが、それぞれ目的に応じて決まっていることが説明されており、これは構造物の設計においても大切な内容ですので、興味のある方は是非、手に取ってみてほしいと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

注目の橋梁用高性能鋼材 その強度を評価する

国が定める技術基準のために

道路や鉄道は、物流・人流を支える重要な社会基盤であり、それらを構成するうちの一つとして橋梁が挙げられます。

橋梁はコンクリートや鋼材、あるいは木材など用途に応じて様々な材料で製作されていますが、こうした構造物を建設するにあたっては、各国が定める技術基準を踏まえて、必要な性能を確保する必要があります。

私は、橋を構成する鋼部材について、技術基準の策定のために必要な性能についての研究を行っています。

鋼材は材料の強度が重要

橋梁を構成する部材は、荷重の状態によって圧縮、引張、曲げ、ねじりなどが作用するため、設計する際にこれらの挙動に対して所定の性能を確保することが求められますが、鋼材の場合は使用する材料の強度が大きく影響します。

鋼材は主成分である鉄に、炭素や他の元素を加えて性質を調整した合金であり、橋梁用の部材では強度を調整した鋼材などが使用されます。こうした鋼材には、従来から多く使用されてデータの豊富なものと、比較的近年に開発されてデータの蓄積途上のものがあります。

新しく作られる橋梁に使おう

このデータの蓄積途上にある鋼材の一つに、橋梁用高性能鋼材(SBHS)があります。従来、使用されてきた鋼材に比べて強度が大きい、溶接する際の手間を省力化できるなどの性能を有するとされており、これから新しく製作される橋梁への適用が期待されています。

この橋梁用高性能鋼材を用いて試験体を作製し、実験や数値解析を通して、鋼部材としての性能の評価と活用についての研究を行っています。

レーザー計測装置を用いた、試験体の表面形状計測の様子
レーザー計測装置を用いた、試験体の表面形状計測の様子
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

学生時代の就職活動のときに面接官から「どのような橋を設計したいのか、説明してください」と言われて、十分な説明ができなかったことが、その後の研究につながるきっかけでした。

橋の構造や設計の考え方などについて、知識不足だったことが原因なのは明白でしたが、個人的には「あの時、このような話ができていれば...」と、今でも思い出してしまう苦い経験の一つです。同様の質問に対して言い淀むことなく返答できるようにと考えたのが、モチベーションになりました。

圧縮載荷試験によって、座屈変形が生じたH形断面部材
圧縮載荷試験によって、座屈変形が生じたH形断面部材
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「鋼橋上部工に用いられるH形断面部材における圧縮強度評価法の高精度化」

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もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究対象としているトラス形式の鋼橋の例
研究対象としているトラス形式の鋼橋の例
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 建設全般(土木・建築・都市)

(2) 交通・運輸・輸送

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 設計・開発

(2) 製造・施工

(3) 保守・メインテナンス・維持管理、運用・システムアドミニストレータ・サービスエンジニア

◆学んだことはどう生きる?

建設コンサルタント関係で、設計業務に携わっている卒業生が多いと思います。また、構造物の製作会社(ファブリケーター)で、設計や建設現場の業務に従事している、という話も聞いています。

いずれも、研究内容が業務に直結している訳ではありませんが、橋梁の設計、維持管理に関する内容を取り扱う中で得られた力学的な考え方や知識を活用して、活躍されていると思います。

先生の学部・学科は?

当学科では、主に橋梁・構造、交通、社会計画・政策、水質などの環境問題、海岸・河川に関する流体、上下水道、コンクリート、地盤、トンネルなどの地下構造物といった多くの内容を取り扱っています。

例えば、橋梁・構造関係では、鋼橋の設計、維持管理のほかに、FRP(繊維強化プラスチック)を使用した補修・補強といった内容に取り組む研究者もいます。近年ではリニアの工事が進められていますので、トンネルに関する内容も注目を集めています。

先生の研究に挑戦しよう!

橋梁は、国、自治体、事業者などでそれぞれ管理されています。地震等の災害発生時には、それぞれの管理者が管轄の橋梁について点検を行います。

自分の住んでいる地域で管理されている橋梁について、橋梁の構造形式、年数、主に使用されている材料など、どのような橋がどのくらいの数あるのか、調べてみましょう。また、災害発生時にどの橋が使用できなくなると問題になりそうなのか、考えてみましょう。

中高生におすすめ

生命と地球の歴史

丸山茂徳、磯崎行雄(岩波新書)

本書は地球の誕生から生命の進化について、わかりやすく説明されています。理系志望のみなさんだけでなく、文系志望のみなさんにも読んでみてほしい内容です。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

医学。医療に限ることではありませんが、命に関わる仕事は、とても尊い仕事だと思います。

Q2.感動した/印象に残っている映画は?

『パラノーマル・アクティビティ』と『SAW』。見れば夜に眠れなくなるので、仕事を進めることができます。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

アメリカンフットボール。世界一、面白いスポーツだと思っています。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

スキー。やっぱり何事も体が資本ですので、体力維持のための運動が、健康維持にも繋がると思います。


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