応用物理学一般

熱電変換システム

熱で充電する電池 未利用熱を活用する熱電変換システムの開発


柴田恭幸先生

東京海洋大学 海洋工学部 海洋電子機械工学科(海洋科学技術研究科 海洋システム工学専攻)

出会いの一冊

家庭でたのしむ科学の実験

大山光晴(角川選書)

この本は、直接私の研究とは関係ありません。また、すでに絶版になっている本のため、お勧めして良いか悩みます。

ただ、高校までの理科の知識で、身の回りにある科学(物理)現象を、身近なものを使って実験できるという意味で、物理分野だけでなく、様々な科学分野の下地を高校生が作るのに役に立つ本だと思います。執筆当時、高校の物理教員だった著者がわかりやすく丁寧に書かれているという点も非常に親しみやすい本です。最近は似たような身近な実験を紹介する本がたくさんありますので、興味があればそういった本を読んでみてください。

こんな研究で世界を変えよう!

熱で充電する電池 未利用熱を活用する熱電変換システムの開発

電池を熱で充電する

現代社会では、様々なところで電池が使われています。「電池を充電する」と聞くと、一般に充電器をコンセントにつないで…といったことを思うように、通常電気を使います。これを、身近にある熱を使ってできる技術を作ることができるとしたらどうでしょうか。

私の研究は、広い意味で「電池を熱で充電する」の実現を目指したものです。普段私たちが相手にする起電力と比べると非常に微小な変化なのでわかりにくいですが、電池の電極材料の示す起電力は温度変化に呼応してわずかながらに変化します。このわずかな変化に着眼して、新しい熱電変換システムの研究をしています。

電池回りの温度変化から起電力を得る

一般に、物質の両端に温度差をつけると電位差を生じる現象があります。これをゼーベック効果と呼んでいます。従来の熱電変換はこのゼーベック効果を利用したもので、現在も多くの研究者がその性能向上に向けた研究開発を進めています。熱電変換はエネルギーハーベストと呼ばれる技術の一つで、未利用熱を有効活用する手段の一つとして注目されています。

私が研究を進めている「熱で充電する電池」も熱電変換システムの一つですが、既存の熱電変換のように物質の両端に温度差をつけて発電するものではなく、電池電極材料の起電力の温度変化の差を利用して、電池回りの温度変化から起電力を得るという仕組みを持っています。

この技術は、1℃あたりの起電力がまだ小さく実用的な開発段階には達していませんが、大きな起電力が得られる材料開発を通して、私たちの身の回りの10℃、20℃といった温度変化を有効活用できる技術を作る研究をしています。

電池の性能評価のためのデバイス調整を、アルゴン雰囲気下に調整したグローブボックス内で行っています。
電池の性能評価のためのデバイス調整を、アルゴン雰囲気下に調整したグローブボックス内で行っています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

高校時代に物理と化学の境界領域の研究を行っており、その頃からイオンの運動に興味を持っていました。それを一つの軸として、大学・大学院・現在の研究テーマ設定(イオンの動きがもたらす物理や外場応答との相互作用が生み出す現象など)につながっています。

特に高校の頃には、日本学生科学賞での研究発表、その後の国際科学技術フェア(ISEF)への出場、国際大会で同世代の物理学を学ぶ方々との交流などの経験が物理学科への進学・研究者を目指すきっかけとなりました。

実験内容によっては、クリーンルーム内での実験を行います。
実験内容によっては、クリーンルーム内での実験を行います。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「固体の相転移を活用した高効率熱ー電気エネルギー変換機構の解明」

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先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 自動車・機器

(2) 船舶・機器

(3) 建設全般(土木・建築・都市)

◆主な職種

(1) 生産技術(プラント系以外)

(2) 設計・開発

(3) 製造・施工

◆学んだことはどう生きる?

私が東京海洋大学に着任してからまだ数年のため卒業生が多くはいませんが、造船会社、インフラ会社、自動車メーカー、電気機器メーカーなどに就職しており、多種多様の業界に進出しています。学生には、研究テーマはあくまで手法や考え方を学ぶ題材に過ぎないので、分野に固執せず研究で学ぶ技術を自身の将来の糧になるようスキルアップしてくださいと伝えていますので、どの業界でも先々活躍していってくれるものと信じています。

先生の学部・学科は?

東京海洋大学海洋工学部は前身が東京商船大学ですので、船や海に関わる研究が盛んに行われています。そのため、4年間の教育の中で乗船実習があり(ない学科もある)、他の大学にはない特徴といえます。

また、教育という意味では、船を一つのインフラと見立て、工学全般を学べることが他大学にない強みと言えます。そのため、幅広い専門性を持っている先生が多くおり、物性物理学、天文学、気象学といった理学寄りの研究をしている先生から、船舶工学、ロボット工学、内燃機関、動力エネルギー、機械材料、パワーエレクトロニクスなどの先生のもとで、様々な研究を実施することができます。

東京海洋大学では毎年海の日に記念行事を実施しています。研究室では海の日に研究内容の紹介としてポスター展示しています。写真は、研究室の学生・OBらとの集合写真です。
東京海洋大学では毎年海の日に記念行事を実施しています。研究室では海の日に研究内容の紹介としてポスター展示しています。写真は、研究室の学生・OBらとの集合写真です。
先生の研究に挑戦しよう!

ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム溶液と、様々な遷移金属イオン(Fe, Co, Mn, Ni, Cuなど)を含む溶液を反応させてみよう。どのような色の沈殿物ができるか観察、評価をしてみよう。

中高生におすすめ

中谷宇吉郎随筆集

樋口敬二:編(岩波文庫)

雪の結晶の研究者として知られる中谷先生ですが、この随筆集に収録されている作品は非常に面白いものがあります。その一つに大正時代の女子学生の霜柱の研究について触れたものがあります。当時の限られた環境で自然にどう向き合っていたのかを知る機会になると思います。


だれが原子をみたか

江沢洋(岩波現代文庫)

今となっては原子の存在は皆さんご存知の通りです。しかし、なぜ原子があると言えるのか、また歴史的にはどのように探究されてきたのか、科学の歴史を追いながら探究の面白さを学ぶことができると思います。


理系の子

ジュディ・ダットン(文藝春秋)

高校生のための科学のオリンピックと言われている「国際学生科学技術フェア」に参加した米国の高校生に焦点を当てたノンフィクション本です。

今では日本でも中高生の科学研究が盛んになっていますが、米国の高校生が科学に魅せられ、どう科学に触れあっているのか、今の日本の中高生にも学ぶ部分が多くあると思います。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

やはり物理学を学ぶと思います。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

Kalafinaさんの曲を学生の頃初めて聞いてその歌声に魅了されてから今でもよく聞きます。お勧めの曲はいろいろありますが、misteriosoなどの世界観は好きです。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

中高生に見てもらいたい映画として、マイナーですが、『遠い空の向こうに』を紹介します。

Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

シューティングゲームやタクティクス系ゲームでしょうか。RPG系は昔から好きなので今でもやります。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

家庭菜園。コロナ禍で時間を持て余したことがきっかけですが、植物栽培の奥深さにはまっています。