社会福祉学

差別と無関心

性的マイノリティのこどもたちが自分らしく生きられる社会へ


姜民護先生

関西大学 人間健康学部 福祉と健康コース

出会いの一冊

小児期の逆境的体験と保護的体験――子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス

ジェニファー・ヘイズ=グルード、アマンダ・シェフィールド・モリス:著、菅原ますみ:監修・ 翻訳(明石書店)

つらい経験による影響と、それを乗り越える人々はどういう人なのかを知りたい人にすすめます。

こんな研究で世界を変えよう!

性的マイノリティのこどもたちが自分らしく生きられる社会へ

無関心への反省が研究の出発点

「幸せ」。私は、世の中のすべての研究は、最終的に「幸せ」につながるものだと信じています。今、私が二人の研究仲間とともに進めている「社会的養護における性的マイノリティのこどもへの支援実態とそのメカニズムの検証」も、その一つです。

「差別はあってはならない」。誰もがそう思うでしょう。けれど、この言葉が「性的マイノリティ」と結びついたとたんに、当たり前ではなくなるのはなぜでしょうか。なぜ、彼らやその周りの人たちは、今も「差別はあってはならない」と声を上げ続けているのでしょうか。

「無関心も差別の一つになりうる」と、私は気づきました。自分は差別なんてしていない、そう思っていたことへの反省が、この研究の出発点です。

つらい経験に加え、無関心の中で生きるのは苦しいこと

それでは、社会的養護のもとで暮らすこどもたちの現状はどうでしょうか。虐待や親との別れといったつらい経験を経てきた彼らにとって、「差別していないから大丈夫」という空気の中で生きることは、どれほど苦しいことでしょうか。

人や状況によっては、無関心さえも差別になります。なぜ無関心が生まれるのでしょうか。その背景には、「差別してはならない」という言葉の意味を十分に理解しようとせず、ただ繰り返してきた私たちの姿があるのではないでしょうか。その結果、日々の生活の中で「差別してはならないという命題」が、曖昧な巨大言説として定着してしまったのかもしれません。

この研究では、文献調査・アンケート調査・インタビューを通して、社会的養護のこどもたちが安心して自分らしく生きられる社会をめざしています。

少しでも多くの人に、この世界に関心を持ってもらえたらうれしいです。

テーマや研究分野に出会ったきっかけ

とても単純です。社会福祉学者は、社会がフィールドですし、その社会を生きている人々の幸せの向上のために研究をします。その過程のなかで、同じ社会を生きているけど、まったく異なる世界で生きている人々に出会いました。その方々のお話が私の世界を広げてくれました。それを「研究」として答えようとしたのが、本研究のはじまりです。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「社会的養護における性的マイノリティの子どもへの支援実態とそのメカニズムの検証」

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もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 福祉・介護

(2) 病院・医療

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 福祉・介護関連業務・関連専門職

(2) 一般・営業事務

◆学んだことはどう生きる?

本学の「福祉と健康コース」は、堺市との地域連携に特化しています。これは他の大学では、あまり見られない活動です。自らこども食堂を運営するゼミ、里親会と常に交流するゼミ、出所者×アート×福祉に着目したゼミなど、本当に多くの地域連携が行われています。こうした学びを活かして、福祉職、公務員、一般企業、大学院など、さまざま分野で活動しています。

先生の学部・学科は?

関西大学人間健康学部の「福祉と健康コース」は、とても魅力的な学びの場です。同じ学部内には「スポーツと健康コース」や「心理コース」もあり、分野を横断した幅広い学びができるのが大きな特徴です。

また、他大学にはあまり見られない「国際健康福祉実習」は、10年以上の歴史を持つ人気プログラムです。既存のフィールドである「ハワイ」「スウェーデン」「インドネシア」に加え、2026年度からは「韓国」と「ニュージーランド」も新たにスタートします。

皆さんの視野を広げ、世界とつながる多彩な教育プログラムが充実しています。ぜひ、関心を持っていただければうれしく思います。

先生の研究に挑戦しよう!

(1)私たちの日常生活の中にも、さまざまな「差別」が存在しています。どのような差別が、どのような場面で起こっているでしょうか。そして、それはなぜ起こるのでしょうか。自分の身の回りを振り返りながら、調べてみましょう。

(2)社会的養護のもとで生活しているこどもの数は、この30年間、およそ4万3千人前後で推移しています。この間、社会はさまざまな意味で大きく変化してきました。こどもの権利を保障するための支援制度も整備されてきています。それにもかかわらず、社会的養護のもとで暮らすこどもの数は、なぜ減らないのでしょうか。その理由を考えてみることは、現代社会のあり方を見つめ直すうえでも、とても興味深いテーマだと思います。

中高生におすすめ

小児期の逆境的体験と保護的体験――子どもの脳・行動・発達に及ぼす影響とレジリエンス

ジェニファー・ヘイズ=グルード (著), アマンダ・シェフィールド・モリス (著), 菅原 ますみ (監修, 翻訳)

つらい経験による影響と、それを乗り越える人々はどういう人なのかを知りたい人にすすめます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

迷わず、社会福祉学です。人の幸せのために「その人の心身」だけではなく、その人が生きる「環境」へのアプローチを大事にする学問です。とても魅力です。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

母国は韓国です。日本に来てから、「母国のことを客観的に見られるようになった」とよく口にしてきました。しかし、それは「主観的に見られるほど、母国での生活を十分に重ねてきた」という前提があってこそ言えることだと、あるとき気づきました。実際のところ、私は母国のことを「主観的に語れるほど」深く生きてきたわけではありません。

だからこそ、もう一度「外から見える韓国」ではなく、「中に生きる韓国」を自分の目で見つめ直してみたいと思います。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

社会福祉研究会とレクリエーションのサークルで活動しました。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

最近は、ウィスキーにはまりました。そこに哲学が隠れているのを見つけたためです。


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