経済学で貧困問題に挑んだイギリスの経済学者・マーシャル
過去の学者たちの理論・思想・政策を考究
経済学は、「豊かさとはなにか」という問いを念頭に置き、貧困問題や経済格差などの現代的な諸課題に取り組む学問です。私は、経済学のなかでも「経済学史」と呼ばれる分野で研究をしています。それぞれの時代や国において、過去の学者たちがいかなる経済問題に直面し、その問題解決のためにどのような理論・思想・政策を展開したのかを考究する学問分野です。
私は、アルフレッド・マーシャル(1842-1924年)という需要曲線と供給曲線を用いる市場メカニズムの分析枠組みを考案したイギリスの経済学者に注目しています。具体的には「マーシャルは経済学の研究を通じて、どのように労働者階級の貧困問題を解決しようとしたのか」というテーマに取り組んでいます。
貧困問題に経済分析が有効だと考えて
1870年代にイギリス経済は不況に陥り、都市部の労働者たちは貧困にあえいでいました。大学で数学を学んだ後、心理学や哲学などに熱中していた若きマーシャルは社会的使命を感じて、より良い社会を実現するために経済学の研究を開始しました。このことは、教え子のケインズなどの証言を通じて広く知られてきました。
ところが、マーシャルが、誰から、いつ頃に、どのような影響を受けて、経済分析が貧困問題を解決するために実際的に有効だと考えるようになったのかは、未だに明らかではありません。当時のイギリスの産業状態に対する理解を深めながら、マーシャルと同時代の学者たちとの交流や、マーシャルの経済分析と若き日の彼の多様な学術研究との関係を明らかにすることが、現在の私の研究課題です。
経済学史が、現在や将来の経済問題に寄与
経済学は、自然科学と異なり、同じ現象を再現して実験したり検証したりすることができません。そのため、現在や将来の経済問題を解決するための基礎研究として、経済学史は重要な役割を担っています。
過去の学者たちの学術的なネットワークを特定し、様々な経済理論がどのようにして形成されたのかを明らかにする研究を通じて、現代的な諸課題の解決に向けて貢献することができると考えています。
金融の仕組みについて学びたいと思って経済学部に進学しましたが、友人や(後に恩師となる)先生と、『社会的共通資本』(宇沢弘文、岩波新書)を輪読したことが、経済学を幅広く学ぶきっかけになりました。同書で、私たちの社会には市場メカニズムに基づいて運営してよい領域とそうでない領域があることが強調されていて、目から鱗が落ちるような思いがしました。
輪読会では、担当部分の論点を報告する度に、先生から「どうしてそのように考えたのでしょうか」と尋ねられ、自らの理解を文献に基づいて説明することが求められました。報告の準備や復習をするために図書館に通うようになり、「大学での勉強ってなんておもしろいんだ!」と感じるようになりました。その後、その先生が開講する経済学史の授業やゼミナールを履修するなかで、現在の研究テーマに出会いました。
「マーシャルにおけるリカードウ経済学方法論の受容-オックスフォード理想主義者たちからの影響」
◆主な業種
(1) 通信
(2) 商社・卸・輸入
(3) 公務員
◆主な職種
(1) 営業、営業企画、事業統括
(2) 経理・会計・財務、金融・ファイナンス、その他会計・税務・金融系専門職
(3) 総務
兵庫県立大学国際商経学部は、旧制の県立神戸高等商業学校(1929年設立)を起源にしています。伊藤眞雄初代校長は、神戸という地理的条件を活かして、貿易・経済学に関する研究教育を重点的におこなうためにカリキュラム等の制度を整えました。その伝統は、県立神戸経済専門学校(1944年〜)、神戸商科大学(1948年〜)を経て、現在まで続いています。
大学図書館(神戸商科学術情報館)には、卒業生の瀧川博司氏によって寄贈された特別文庫『瀧川文庫』が設置されています。その世界的にも貴重な蔵書を活用して、2023年にウィリアム・ペティ生誕400周年記念講演会・展示会が、2024年にはアルフレッド・マーシャル没後100年記念講演会・展示会が開催されました。入学後には、ぜひ古今東西の稀覯書にも触れながら、経済学を存分に学んでください。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 数学と科学史 |
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| Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス。伝統的な街並みや豊かな自然のおかげで散歩を楽しむことができる。 |
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| Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 近所の堤防で子供たちと一緒に釣りをすること |

