国際関係史の技法
マーク・トラクテンバーグ 村田晃嗣、中谷直司、山口航:訳(ミネルヴァ書房)
国際関係史の研究が実際にどう行われているのかを、著者が実践つきで説明する希有な本。日本の大学で国際関係論を学ぶ学生の多くに読んで欲しくて、他の研究者と一緒に訳しました。
高校生の皆さんに紹介する理由は、本書を読むと教科書やその元である研究書の記述が「未完成品」だと理解できるからです。読み通すのはまだ難しいかもしれません。でも、弟子入り希望の工房を見学するつもりで、末尾の「訳者あとがき」も参考にしながら、パラパラとめくってみましょう。研究者でも資料の解釈を間違う場合があること、それに基づいた中高や大学の授業も鵜呑みにできないことがわかってきます。そうなればしめたもの。先人の成果を引き継ぎながら、さらにいい作品を作り上げるのは自分だときっと思えるはずです。
日本はなぜ約束を守れず、破滅的な戦争へと進んでいったのか
第一次世界大戦後、交わされた「約束」
戦争をなくしたい。太古の昔からこう願った人間は無数にいたはずです。しかし国際社会の総意として、この目標が追求されだしたのは、1914~18年の第一次世界大戦が終わってからです。空前の1500万人の戦死者を出した大戦争は、その勝者・敗者を問わず大きな衝撃だったのです。こうして、新しい国際組織や条約が次々と作られました。これらは、まとめていうと、国家間の争いを戦争以外の手段で解決すると誓う「約束」(専門用語でコミットメント)でした。
この約束に日本も加わりました。しかし、日本は約束を守り通せず、最後にはアメリカとの破滅的な戦争に至ります。ただし、約束を結んだ当時の政治指導者や外交官がその意味をないがしろに考えていたわけではありません。彼らはかなり真剣でした。それなのになぜ日本は約束を守り通せなかったのでしょうか。
専門家とチームを組んで、理由に迫る
そもそも約束は、本人の意思だけで守れるとは限りません。皆さんも、自分や相手の事情の変化で、約束を守れなかった経験がないでしょうか。国家間の約束も同じで、自国や相手国で起こる政治指導者・外交官の交代や政治体制の転換(たとえばクーデター)、経済・社会状態の変化も影響してきます。
ですから、日本が破滅的な大戦争を起こした理由は、日本だけを研究してもわかりません。このため私は、当時の日本の政治・外交、日米関係、日中関係、アジア経済、そして国際関係理論の専門家とチームを組んで、研究に取り組んでいます。
現在の国際社会でも、戦争をなくすという100年前の約束はまだ実現できていません。実現に少しでも近づくためのヒントを、最初の失敗例を研究することで、私たちは見つけようとしています。
奈良県で生まれ育ったこともあり、子どもの頃は邪馬台国のありかを突き止める考古学者になりたいと思っていました。初志貫徹で歴史学科に進学したのですが、1年生のときに受けた入門授業で、弥生時代の時期ごと(前期とか後期とか)の土器の文様の違いがわからず、早々と挫折。その頃には同じくらい興味を持つようになっていた近現代史に専攻を変えました。さらに大学院では、政治学・国際関係論の考え方を身に付けたくて、法学研究科の政治学専攻に進みました。
「ワシントン体制から日本はなぜ離脱したか──コミットメント問題と観衆費用の観点から」
◆
「ワシントン会議はどのように準備されたか──日米英の会議準備の比較検討」
(日本国際問題研究所「国際連盟・ワシントン体制100周年記念ウェビナー」)
※中谷先生の講演は51:20~1:20:00あたり
◆主な業種
(1) 商社・卸・輸入
(2) ソフトウエア、情報システム開発
(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
(1) 一般・営業事務
(2) システムエンジニア
(3) 総務
◆学んだことはどう生きる?
国際的な視野や多文化理解を学んだ経験を活かし、商社や多国籍企業など、グローバルな環境での活躍が期待されますが、その他の民間企業から官公庁まで幅広い分野で活躍する人が多いのも特徴です。IT業界やサービス業、金融機関などの一般企業に加え、地方自治体や国家公務員、自衛隊など公共性の高い職業をめざす傾向も見られます。より専門的な研究を志して、大学院に進学する人もいます。
公務員志望などで公共政策に関心がある学生向けの「公共政策コース」と、政治やジャーナリズムなどの世の中の動きに関心のある学生向けの「政治コース」にわかれています。本学科の特色は、公共政策や国内・国際政治だけでなく、その重要な背景となる「法律」「経済」「歴史」の学習にも力を入れていることです。加えて、教員陣には研究者だけでなく報道機関や行政機関の出身者も多く、学問と実践をバランス良く学ぶことができます。
(1)1941年に始まった日米戦争(他の戦争でもいい)の原因として教科書が紹介している内容に、重要と思われる順に番号を付けよう。その上で、その順位が妥当かどうか、教科書掲載の資料・図表や図書室にある図書を手がかりに、クラスメートと議論しながら検証しよう。
(2)(1)の検証結果は現在の戦争の原因(例えば2022年に始まったロシアとウクライナの戦争)とどれぐらい共通しているだろう。直感的に浮かんだ考えを鵜呑みにせず、それを足がかりに新聞報道などを調べ、クラスメートと議論しながら、批判的に検証してみよう。
(3)(1)と(2)の成果は、ぜひ先生にお願いして発表会をし、クラス全体で質疑応答や議論をしよう。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 考古学:もう一度、弥生土器の判別に挑戦したいと思います。 |
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| Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカかイギリス:こんな研究をしているのに外国に住んだことがありません!日米英の関係を中心に研究をしているので、やはり相手の国に住んでみたいです。 |
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| Q3.大学時代の部活・サークルは? イヤーブック(大学アルバム)作成委員会(中退) |
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| Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 大型スーパーの深夜清掃、お寺の宿坊での雑用、家電量販店のPCコーナーの店員 |
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| Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 娘の成長を実感する瞬間、家族や職場の同僚と食卓を囲むとき、週2~3回のジョギング中が、研究以外で一番楽しい時間です。 |

