ミッシング・ピーシズ アメリカ障害学の原点
アーヴィング・ケネス・ゾラ(生活書院)
著者のアーヴィング・ゾラは、医療社会学者で「アメリカ障害学創設の父」といわれる人です。彼自身、ポリオの後遺症により身体障害を有しています。障害の定義は、障害者権利条約の批准以降、医学モデルから社会モデルへと大きく転換しています。医学モデルの下では、障害者を保護される客体とみなす傾向が強いのに対し、社会モデルの下では、障害者を、非障害者と同じく、主体的に権利を行使する存在と捉えます。
インクルーシブ教育や合理的配慮は、社会モデルに基づく考え方となりますが、日本では、法制度上も一般的にも、医学モデル的な考えが根強く残っています。本書は、ゾラが自身の体験に基づいて、多くの人々が有する障害者観のいびつさをあぶりだしており、障害学に興味がない人にも是非とも読んでほしいと思います。
インクルーシブ教育をいかに法的に保障していくのか
その子が同じ場で適切に授業を受けられるように
私は、インクルーシブ教育の重要性について、障害法の観点から研究をしています。インクルーシブ教育とは、障害のある子どもが、適切な支援をうけながら、障害のない子どもと共に学ぶ教育の仕組みのことです。
重要なことは、適切な支援を受けながら、共に学ぶ、ということで、ただやみくもに、いろいろな特性を持った子どもたちが共に過ごせば良いということではありません。目が不自由な子どもがいるのであれば、教科書や板書の内容を読み上げたり、文字を点字化したり、拡大したり、その子が適切に授業を受けることができるように支援をすることが求められます。
このように、一人一人のニーズに対応するように支援をすることを、合理的配慮といいいます。
障害のない人にとってこそ重要
人は、とかく自分の周りの世界を基準にものごとを考えがちなので、よほど意識をしなければ(場合によっては意識をしていたとしても)、自分が直接に関わることがない人のことを、偏見を持たずに理解することはできません。
日本では、長いこと、障害のある子どもと障害のない子どもは、分離別学が原則となってきましたので、障害のある人のことを知らないままに、社会に出ていく人が大多数でした。
私は、インクルーシブ教育の意義は、障害のある子どもだけではなく、障害のない子ども(もちろん大人も)にとってこそ重要であると考えます。法的な権利として、インクルーシブ教育をいかに保障していくのかということを検討するのが、私の研究の柱となります。
少し前に「親ガチャ」という言葉がはやりましたが、私は、学部生のころから「再生産」の問題に興味を持っていました。「再生産」とは、親の様々な資本が子どもに引き継がれることを意味し、人は、人生のスタート地点で、個人の能力ではどうにもならないハンデを負わされることがあることを多くの研究成果が示しています。
私は、学部生のころから行政法を専攻してきたのですが、個人の研究テーマとしては、貧困や障害など、何らかのニーズを有する子どもの教育を受ける権利の保障について考えてきました。
「インクルーシブ教育と合理的配慮の法的仕組みに関する理論的・実証的分析」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆学んだことはどう生きる?
私のゼミ(行政法ゼミ)の出身者の大半は、公務員として活躍をしています。特に、地元の県庁や地方公共団体に就職する学生が多いです。
最近では、出産後に、仕事と育児を両立させながら活躍するOGも増えていて、頼もしく見守っています。卒業生の中には、聴覚障害がありながら、県庁を一般受験し、合格した女性もいます。インクルーシブな社会における、ロールモデルになってくれるだろうと期待しています。
茨城大学の人文社会科学部ではメジャー制をとっていて、法律経済学科の場合、2年生に進級する際に、法学メジャー、経済学・経営学メジャーのいずれに所属するかを選択します。副メジャーとして、他学科のメジャーを選択することも可能なので、私のゼミに所属する学生の中には、法学を学びつつ、副メジャーとして歴史・考古学メジャーを選択して、学芸員の資格を取った人もいました。彼女の卒論のテーマは「地方自治体における文化行政について」でした。
障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法における、インクルーシブ教育と合理的配慮に関する規定を調べてみましょう。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 精神医学 |
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| Q2.感動した/印象に残っている映画は? 最強の二人 |
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| Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 娘と話をすること |
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| Q4.好きな言葉は? 塞翁が馬 |

