人の流れを最適化し、より便利なバス・鉄道の運行を設計する

「満足度」が最大になるように選択
たとえば、横浜駅を出発して朝8時50分に後楽園駅に到着するには、何時発の電車に乗ればよいでしょうか。移動時間を短くしたい人もいれば、混雑を避けるために早めに出発する人もいるでしょう。
経路選択の数理モデルでは、私たちはそれぞれ「満足度」を表す関数を持っていて、その値が最大になるように電車を選択していると考えます。この関数を用いると、首都圏における約800万人の通勤・通学客の電車による移動をシミュレーションすることができます。
地域全体として最適化できる時刻表や停車駅
時刻表が変更されたり、急行の停車駅が変わったりすると、人々が乗る電車も変化します。その結果、移動時間が短くなったり電車の混雑が緩和されたりして得をする人もいれば、逆に不便になってしまう人もいるかもしれません。
こうした人の流れを数理的に捉え、地域全体として最適化されるような時刻表や停車駅を求めることが、私の研究テーマです。鉄道やバスの運行本数が少ない地域で、高齢者の方の生活を支える移動手段を確保できるようなバス時刻表設計の研究にも取り組んでいます。
便利にするために何ができるのかを数学の問題にする
実際に問題を解くときには、まず、鉄道やバスをより便利にするために何ができるのかを考えて、それを数学の問題にします。最適化では、満たすべき条件をすべて数式で表現し、目指すべきゴールをひとつの関数で表します。数十万本もの数式をすべて満たしながら、ゴールを表す関数の値が最大になるものを、コンピュータを使って計算します。モデリングとアルゴリズムを工夫すると、何十万個もの変数を持つ最適化問題に対しても短い時間で答えを求めることができます。

大学1年の授業で数理工学という分野に出会い、数理工学の「現象の本質をモデル化し、問題解決手法を創り出す」という言葉に強く感銘を受けました。私たちの暮らす社会は便利に設計されていると思っていたのですが、さらに良くするために自分が貢献できる余地があると知り、大学院への進学を決意しました。現実の暮らしの中で「もっと便利にできるかもしれない」と感じる問題を、数学とコンピュータを使って解決する研究にやりがいと楽しさを感じています。

「時空間ネットワークを用いた人の流れの最適化」

◆主な業種
(1) ソフトウエア、情報システム開発
(2) コンピュータ、情報通信機器
(3) 通信
◆主な職種
(1) システムエンジニア
(2) 設計・開発
(3) 技術系企画・調査、コンサルタント
中央大学理工学部情報工学科には、最適化の分野で活躍する研究者が多数在籍しています。授業では数理最適化、組合せ最適化、ネットワーク設計、アルゴリズム設計など、最適化とアルゴリズムに関するテーマを幅広く扱っていて、理論的枠組みから実践的手法まで体系的に学習できます。
卒業研究では、交通、物流、スケジューリング、マーケティングなど、様々な分野における現実の課題解決を目指した研究テーマに取り組むことができ、最適化の理論と応用の両面を学ぶことができます。
コンビニの中で、人の流れがスムーズになるような商品の配置を考えてみましょう。お客さんが商品を手に取ってレジへ進むまでの移動距離が長すぎず、しかも他のお客さんとぶつかることなく快適に動けるようにするには、どの商品をどこに置くのがよいでしょうか。
さらに、レジや棚の位置も自由に変えられるとしたら、店舗全体のレイアウトと商品の配置をどのようにすればよいでしょうか。「人の流れを最適化する」という視点に立って考えてみましょう。
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Q1.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 最近は子どもとポケモンカードゲームで遊んでいます。 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 地質部に所属し、山で黄鉄鉱を拾ったり、海でサメの歯の化石を探したりしていました。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子どもと遊ぶことです。自分が子どもの頃とは違う遊びがたくさんあって、新鮮でとても楽しいです。 |