地球・資源システム工学

微生物による金属還元

微生物の力で金属をリサイクル。最終目標はレアメタル回収


細田晃文先生

名城大学 農学部 生物環境科学科

出会いの一冊

もやしもん

石川雅之(イブニングKC)

登場する微生物の形や特徴は、本当に顕微鏡で見たものと同じなので、よくできていると思います。また、微生物を身近に感じられると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

微生物の力で金属をリサイクル。最終目標はレアメタル回収

金属を還元して生きる微生物とは!?

一般的には微生物は、細菌、真菌(カビ)などが含まれ、土壌1グラムに10億個存在しているとされていますが、その能力がわかっているのは1%か、それ以下とされています。

この微生物のなかには、金属の還元に関わる微生物がいることをご存じですか。「還元」という言葉は「化学」ではおなじみですが、「生物」が還元とはどういうこと?ですね。

微生物を含め地球上の生物は体の中で「化学反応」をして生きています。その反応時に酸素を必要とする生物(私たちヒトも含まれますね)は呼吸をしますが、酸素がなくても生きられる細菌では、酸素に代わり金属などを還元してエネルギーを得ています。

銅を還元できる微生物を土壌から探す

私の研究では、こうした微生物のうち銅の還元ができるものを土壌などから探し出し、できるだけ高い能力を発揮できるようにするにはどうすればよいか、その反応に関わる遺伝子を見つけ、他の微生物に移すことができるか、あるいは銅以外の金属も還元ができるか、などの研究をしています。

実際に研究室では、微生物を培養した後に変化した金属を機器で化学分析したり、培養した微生物からDNAなどを抽出して遺伝子を探したり、働きを確かめたりした後に、培養中にどのような反応が起こっていたかを考えるなどしています。

地球にやさしいリサイクル技術

本研究の最終目的は銅に加えレアメタルなどの金属リサイクルにこうした微生物を応用することです。現在の金属リサイクル方法ではCO2排出が多くエネルギー消費も大きいですが、この方法ならば、地球にやさしいリサイクル技術になると期待できます。

顕微鏡で撮影した金属の周りに集まる微生物(光っている部分)の様子、右下は培養している様子です。
顕微鏡で撮影した金属の周りに集まる微生物(光っている部分)の様子、右下は培養している様子です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

学部生時代に遺伝子を扱う研究がやってみたくて、研究室を選びました。そこで、先輩たちから引き継いだ研究テーマをやっていた時に、それまでに誰も気づいていなかったこと(その微生物は1種類と思われていたが、実際は全く異種で2種類の微生物が存在していた)を見つけ、今では当たり前になった微生物同士でコミュニケーションを取っていることを明らかにしたことで、微生物学や微生物を扱う研究を続けていきたいと思うようになりました。

培養後の金属がどのようになったか、分析機器で調べた結果を確認しています。
培養後の金属がどのようになったか、分析機器で調べた結果を確認しています。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「鉱物廃材の再資源化を指向した銅還元細菌の育種と銅還元機構の分子生物学的解明」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
内側の酸素がない状態にする密閉された培養装置内で、微生物の培養準備をしています。
内側の酸素がない状態にする密閉された培養装置内で、微生物の培養準備をしています。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

酸素を必要とする細菌、必要としない細菌、真菌などの研究をしているので、卒業後に微生物との関わりが深い醸造(お酒作り、味噌・醤油作り)業界へ就職した学生さんが複数名います。

先生の学部・学科は?

先生の研究に挑戦しよう!

微生物がいそうな泥、土壌や水を採取し、微生物培養用の培地、さらに金属(例えば、銅板や鉄板など手に入れられるもの)の小片と共に試験管や培養瓶に入れます。これを適当な温度の環境に置いておけば微生物が増殖してきます。この培養物を観察すると金属板の表面や周辺にも微生物が増えてくることがあります。金属板の色や形状がどのように変化したかを調べてみると、微生物によって金属の還元や酸化が起きたことが分かるかも知れません。

中高生におすすめ

世界一やさしい! 微生物図鑑

鈴木智順(新星出版社)

身近な微生物が“キャラ化”されて紹介されています。絵が多くてわかりやすい内容です。


超・進化論(3)「すべては微生物から始まった~見えないスーパーパワー~」

NHKスペシャル

これはテレビで放送されたものですが、微生物が私たちの健康に関わっていたり、アルコールやパンなど身近な生活品を作ったり、ヒトだけでなく全ての生き物の体の中に存在していることの紹介から、地球上の生物が進化の過程にも大きく影響していたことを教えてくれます。

残念ながら金属の還元に関わる微生物は出てきませんが、色々な微生物が紹介されているので、皆さんの興味がある微生物が見つかると良いですね!

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一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

工学部(今の知識が生かせるならば)

Q2.大学時代の部活・サークルは?

ラケットボールのサークルに所属していました。ラケットボールはスカッシュのようなスポーツです。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

愛犬(ラブラドール)の散歩をしているのが一番の癒しです。

Q4.好きな言葉は?

努力が無駄になることはない(私自身の研究でも失敗したと考えないで、次につながるよう粘り強く努力を続けたいという思いです)。


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