1984
ジョージ・オーウェル、訳:田内志文(角川文庫)
本書は1949年に出版されたディストピア小説の傑作です。2021年の共通テストに出題されたのでご存じの方も多いかと思います。自由なき全体主義国家の姿を描いた本書を読むことで、我々が当たり前のように享受している自由がいかに大切かを感じることができるでしょう。
また、そうした小説であるにもかかわらず、現代日本との共通点を指摘されることが最近は増えています。民主主義国家であってもふとしたことで全体主義への道に進んでしまうというのも、自由主義思想の重要な論点の一つであり、読んだ方にそうした示唆を与えてくれます。
本書は映画化もされていますので、小説を読むのが大変な場合はそちらもおすすめです。
自由社会に求められるプロフェッショナリズム
自由なだけでは上手くいかない?
みなさんは自由についてどういう印象がありますか?自由な方が楽しいので自由が好きだと思います。しかし、皆が自由に好き勝手することを望む人は、あまりいないのではないでしょうか。
経済学に話を移すと、公民系科目で需要と供給、均衡価格について学んだと思います。乱暴に言うと、市場の自由に任せておけば皆が満足できる価格に落ち着くというものですが、そう上手くはいきません。
なので、市場の失敗要因を考える、政府が介入し調節する、法の支配に注目するなど、経済学者は市場について様々な研究を行っています。自由は素晴らしいものですが、単に自由なだけではダメと言えます。
自由な研究が真理に近づく
私の研究しているマイケル・ポランニーは元は物理化学者でした。彼は、社会主義やナチスが台頭していく中で、科学研究は自由に行われなければならないと感じます。国家の命令ではなく、科学者一人一人が自由に研究し、互いに議論し、時には批判しあうことで真理へと近づいていくと考えたのです。国家による自由の侵害にどう対抗するかという論点は、現代においても重要な問題です。
市場システムを円滑に動かすためにも
ポランニーは科学研究の自由を重視しますが、決して科学者が好き勝手していい、というわけではありません。彼らには、真理を追究したり社会に貢献するといった信念を持ち職務を全うする、というプロフェッショナリズムが求められます。
この議論は科学だけでなく政治や経済の分野にも適用できます。政治家やビジネスマンたちがプロフェッショナリズムを持って働くことが市場システムを円滑に動かすためには必要なのです。働くことの意義があやふやになっている現代においてこそ、こうした思想を研究する意義があると感じています。
「自由社会における暗黙知と信念:マイケル・ポランニーのプロフェッショナリズム」
福井県立大学経済学部経済学科では、オーソドックスなカリキュラムで経済学という学問を体系的にしっかり学ぶことができます。特に少人数教育に力を入れており、ゼミは1ゼミ10人前後となっています。そのため、教員によるきめ細かな指導が可能です。
また、県立大学の特色を活かし、地元である福井をより深く学べることも特徴です。行政、インフラ等へのフィールドワークも多く行われており、自身の足で地域の現状を体感することで、理論だけでなく現実もバランスよく学び、研究することができます。
政治・経済などを勉強するとアダム・スミスやケインズといった経済学者が出てきます。彼らの名前で検索したり、解説書を読んでみましょう。意外と現代にも通用することが書かれており、驚くと思います。
また、こうした勉強は一人で行うのではなく、皆で議論することで深みが増します。著作をみんなで輪読したり、大学の公開講座やイベントに参加すると良いでしょう。私も高校・大学の先生方と「哲学やろっさ」というイベントをやっていますが、高校生もたくさん参加しています。
入門経済思想史 世俗の思想家たち
ロバート・L・ハイルブローナー、訳:八木甫、松原隆一郎、浮田聡、奥井智之、堀岡治男(ちくま学芸文庫)
経済思想だけでなく当時の社会や政治についても学ぶことができます。少し難しいですが、経済学説や経済思想の歴史に興味があるならきっと楽しめると思います。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 都市工学を学んでみたいです。何度も引っ越していく中で、それぞれの街がどんな計画で作られたのか興味が湧いてきました。 |
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Q2.感動した/印象に残っている映画は? The Hustler。古い白黒映画ですが、ビリヤードのシーンがとてもカッコいいです。 |
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Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 最近はゼルダの伝説やエルデンリングをプレイしています。 |
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Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 最近自動車に乗り始めたので運転が楽しいです。 |