ネット時代の著作権法を考える〜図書館資料のオンライン活用に向けて
なぜネットで図書館の本をみられない?
図書館の本をインターネット上でみることができたら、便利だと思いませんか。電子書籍を導入している図書館もありますが、基本的には図書館の本をインターネットを通じてみることはできません。
その大きな理由の一つは、みなさんご存じのように”著作権”があるからです。図書館の本を、図書館に行かずに簡単にインターネット上で閲覧することができれば、本の売り上げに影響を与え、ひいては本を作って売るということが難しくなってしまうかもしれません。それは、本を利用するわたしたちにとっても望ましいことではありません。
権利の保護と著作物利用のバランスが大切
著作権法は、著作権を保護して新しい創作を奨励しつつ、そのようにして生み出された著作物がきちんと利用されるようにすることで、文化の発展を目指しています。権利の保護と、著作物の利用、双方のバランスをとることが求められます。
せっかくインターネットが発展し、便利な世の中になったのですから、図書館の本などもインターネットを通じて便利に利用することができ、同時に著作権者などにきちんと利益が還元されて、より多くの創作がなされるようになるという、よい循環が生まれることが望まれます。
時代の変化に対応した法律が必要
現在の著作権法は、デジタル技術やインターネットの発展などの急速な変化に十分対応できていません。また、国際的な条約の枠組みなどがあり、容易には変更できない部分も多くあります。
そのような状況のなかで、著作権に配慮しながらも、図書館資料のインターネット上での活用を可能とするために、著作権法がどのようにあるべきかということを、わたしの研究では考えています。
新型コロナウィルス感染症の流行により、図書館が休館を余儀なくされ、インターネットを通じて図書館の本などを利用したいというニーズが高まりました。このことをきっかけに、著作権法の改正がなされ、一定の条件のもと、図書館資料をインターネットを通じて利用することが可能となりました。図書館と著作権法をめぐる問題を検討する必要性も高まっていると考えられます。
国立国会図書館による「個人向けデジタル化資料送信サービス」はすでに開始されていますが、他の公共図書館や大学図書館などを含めた「公衆送信サービス」は今後開始されていく見込みです。その行方に注目してください。
「図書館資料のオンライン活用に向けた著作権法の将来設計」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) マスコミ(放送、新聞、出版、広告)
(3) 法律・会計・司法書士・特許等事務所等
◆主な職種
(1) 法務、知的財産・特許、その他司法業務専門職
(2) システムエンジニア
(3) 中学校・高校教員など
◆学んだことはどう生きる?
研究室の卒業生は、様々な仕事に携わっています。知的財産法や著作権法に関する専門知識や、法律分野の知識を活かした就職先としては、例えば、出版社、企業の知財部門、図書館司書・司書教諭(地方公務員)、法務省職員(国家公務員)などがあります。
筑波大学 情報学群 知識情報・図書館学類では、知識や情報を有効に活用するための様々な仕組みについて学ぶことができます。哲学からAI技術に至るまで、文理にまたがる幅広い研究領域をカバーしています。
たとえば最近では、AIと著作権法が話題になっていますが、著作権法などの情報に関わる法制度を研究する際にも、技術的な側面など、多様な観点からの知識を踏まえて研究をすることができるというメリットがあります。
令和3年(2021年)著作権法改正による図書館関係の権利制限規定の見直しによって、一定の条件のもとで、図書館資料をインターネット送信することが可能となりました。改正前と改正後でどのように変わったのか、また、どのような条件のもとでインターネット送信が認められるのか、調査してまとめてみましょう。
(1)国立国会図書館が行う絶版等資料の個人向けデジタル化資料送信サービスについて
(2)図書館等による公衆送信サービスについて