動物にも「憲法」を!~動物の権利と保護を考える
人間には「基本的人権」があるが・・・
私は憲法学を研究していますが、「憲法」とはなんでしょうか。
憲法学では「憲法」を、私たちの基本的人権を保障するために国家権力の活動範囲を限定する規範であると考えています。基本的人権というものは、人間が生まれながらに当然に持つ権利のことです。つまり簡単に言えば、憲法は人間が生まれながらに持つ権利を保障するために存在していると言うことができます。
それでは、この「人間」が生まれながらに持つ権利の保障という考え方との関係で、「人間以外の動物」の持っている権利や利益の保障について、我々はどのように考えていくべきでしょうか。
世界で進む、動物の「憲法」
法律の世界では長らく、法的な権利を持っているのは人間だけであると考えられてきました。
しかしながら、近年、ヨーロッパ諸国や南アジア、南米諸国などにおいて、動物を人間に所有される「物」ではなく、自ら生きる「感覚ある存在(sentient being)」であると位置付け、国家は人間以外の動物の法的な権利や利益についても考慮していくべきだと議論されるようになってきています。
一部の国では、これまでは基本的人権を保障するために存在していた「憲法」に、動物の権利や利益の保障に関する内容を既に盛り込んでいます。
グローバル化が進展するなかで、日本もこうした世界的な変化を無視していることはできません。ペット動物の動物虐待だけでなく、畜産動物や実験動物の基準がグローバルから乖離することは、国際貿易においても問題となります。
動物の権利や利益の法的な保護は、いまや一部の動物好きにとっての問題というわけではなく、国家単位で取り組むべき重要な課題となりつつあります。
アメリカの動物法学を参考に
こうした関心から、私の研究では、哲学的な動物の権利論の発展を「憲法学」がどのように取り入れていくことができるか、日本ともかかわりの深いアメリカ憲法学、アメリカ動物法学での研究動向を参考にしつつ、研究しています。
こうした研究を通じて、これまで「人間」のための存在であった憲法や法律、国家といったシステムを、人間以外の存在にも開かれたシステムとして捉えなおすことが可能かどうかを検討しています。
大学時代に考えていた最初の研究テーマは、「自分で権利主張できない人の人権をどう実現するか」というものでした。というのも、憲法学では、基本的には、ある人が何らかの人権を侵害された場合、侵害された本人が当事者となって訴訟を提起して争う必要があるとされています。しかし、私自身の祖母が難病によって寝たきりの状態にあったことから、寝たきりの状態の人の権利侵害は裁判で問題にできず、救済されないということにならないのか疑問に思いました。
「動物」というテーマは、こうした研究テーマにアプローチするために様々な種類のマイノリティ(女性、障害者、高齢者、LGBTQ、少数民族など)の人権論を調べていく中で出会ったもので、ひとつの究極的な類型として、現在は他のマイノリティの権利擁護にも応用できるものではないかと考えて研究対象としています。
「動物保護をめぐる憲法理論の探求――アメリカにおける動物法学の発展と憲法理論の変容」
◆主な業種
(1) 法律・会計・司法書士・特許等事務所等
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(3) ソフトウエア、情報システム開発
◆主な職種
(1) 法務、知的財産・特許、その他司法業務専門職
(2) 人事・労務・研修、その他人事系専門職
(3) システムエンジニア
◆学んだことはどう生きる?
卒業後の進路は、地元の公務員志望の方や民間企業志望の方、ロースクール進学希望者など十人十色となっています。赴任してまだ二年目で具体的に卒業生がどのように活躍していってくれるかはわかりませんが、憲法学は法学のなかでも、特殊な専門知識としてだけでなく、ジェネラルな市民の一般教養としてもその知識を生かすことのできる分野だと思いますので、幅広い職種で学んだことを役立てていただけるのではないかと思っています。「動物」に関するテーマも、自分とは違う存在の在り方を考えるうえでのヒントとなるのではないかと思います。
動物と憲法の関係性に関する研究は、まだ研究の少ない分野なので、憲法の側から動物という存在をどう考えたらよいかに関心があるのであれば、沖縄国際大学法律学科の私のゼミは比較的研究上の専門的なアドバイスを得やすい環境ではあると思います。
ゼミでは憲法判例を中心に扱っていますが、学生の関心に合わせて、憲法学、行政法学、動物法学に関する邦語・英語文献や判例の検討を行っています。また、立地的にも沖縄は国内のなかでも生物多様性の重要性を感じやすい土地だと言えるかと思います。
動物虐待を世界で初めて禁止した法律は、およそ200年前にイギリスで成立したと言われており、日本の動物愛護管理法のもとでの動物虐待罪も、おおもとを辿っていけばこうした法律にたどり着くと言われています。イギリスで成立した法律がどういった名前のどういった内容の法律であったのか、そうした理念がどのように日本においても伝わり、どういったきっかけで立法に至ったのかについて調べてみましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 文学もいいなと思いますし、理系で物理学や獣医学、古生物学あたりに挑戦してみたいような気もします。 |
|
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? オランダのアムステルダムの雰囲気がごちゃごちゃしていて、おおらかで、よかったので、住んでみたいかもしれないです。 |
|
Q3.感動した/印象に残っている映画は? ディカプリオ主演の『レヴェナント』という映画が好きです。レニー・エイブラハムソン監督の『ルーム』という映画も好きです。 |
|
Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 『アサシン クリード』シリーズが好きでした。『ポケットモンスターブラック・ホワイト』は動物の権利論と関係している気もします。 |