航空宇宙工学

超音速機

地球どこでも日帰りで! 超音速機実現のための計測技術


沼田大樹先生

東海大学 工学部 航空宇宙学科 航空宇宙学専攻(工学研究科)

出会いの一冊

衝撃波のおはなし

高山和喜(日本規格協会)

超音速機や極超音速機を開発する上で避けて通れない衝撃波とは、どのような現象なのかを知ることができる入門書です。

衝撃波は音速を超えて伝わる波であり、一見するとわれわれの日常生活にはなじみの薄い現象にも思えますが、実は身近な様々な場所において見ることができます。

また、そのような特徴があるため、航空宇宙工学に限らず、医療などをはじめとした様々な分野で研究が行われており、航空宇宙工学とは全く関係のない分野における衝撃波の研究が航空宇宙工学分野のブレイクスルーにつながるという例を見ることもあります。そのような、科学における異なる分野の間に見られるつながりを、衝撃波というキーワードを通じて知ることができるのもこの本をお勧めする理由のひとつです。

こんな研究で世界を変えよう!

地球どこでも日帰りで! 超音速機実現のための計測技術

週末、気軽にヨーロッパへ

地球上のあらゆる場所に日帰りで行ける世界では、我々はどのようなことが可能になるでしょうか。

日帰りでアメリカに新たなビジネスの打ち合わせに行くこともできるようになるかもしれませんし、週末にヨーロッパへ気軽に遊びに行けるようになるかもしれません。このように、新たな可能性に満ち溢れた世界が実現する可能性があります。

しかしながら、そのような世界をいざ現実のものとするためには、今よりもより速く遠方へ移動可能な移動手段を開発する必要があります。

音速を超えると衝撃波が

現在空の移動に用いられている航空機は、音の速さ(毎秒約 340 メートル)に近い速度で飛行しています。これは我々が普段利用する自動車などの乗り物と比べれば非常に速い速度のように思えますが、極めて遠方にある海外への移動の際には、この速度でも 10 時間以上かかることもあります。

この時間を可能な限り短縮するため、現在世界では超音速機や極超音速機といった、音速を何倍も超えた速度で飛行する航空機の研究や開発が進められています。

しかしながら、その開発のためには、飛行速度が音速を超えることで現れる衝撃波などの様々な空力現象やそれらに起因して機体に加わる力や温度の状況などを詳細に把握するための計測手段が必要となります。

超音速機の課題を光で解決

私たちは、そのような要請に応えるべく、光を用いた様々な流体計測技術を研究・開発しています。

物体周りに起こる空力現象を光の干渉現象を利用して計測する手法(点回折干渉法)や、現象の結果として物体に加わる圧力や温度などを発光する特殊な塗料を用いて計測する手法(感圧塗料法、感温塗料法)などを開発しそれらを用いることで、超音速機や極超音速機の実現に向けた様々な技術課題の解決を目指した研究に取り組んでいます。

風洞と呼ばれる気流を発生させることができる装置を用いて翼型の性能を調べる実験を行った際の、試験部の様子です。翼型に感圧塗料を塗布して UV光を当てると感圧塗料が発光するのですが(図中の白色発光部)、その明るさがどのように変わるかで翼型上の圧力がどのようになっているのかを知ることができます。発光を捉えるカメラは写真の外に設置しています。
風洞と呼ばれる気流を発生させることができる装置を用いて翼型の性能を調べる実験を行った際の、試験部の様子です。翼型に感圧塗料を塗布して UV光を当てると感圧塗料が発光するのですが(図中の白色発光部)、その明るさがどのように変わるかで翼型上の圧力がどのようになっているのかを知ることができます。発光を捉えるカメラは写真の外に設置しています。
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