静岡の気候風土を生かし、小学校の教室を省エネで快適に
光や風、暑さや寒さを、数値で評価する
皆さんが小学校のとき、教室にエアコンがありましたか?気候変動、異常気象、頻発する災害。夏は暑く、冬は寒く、極端な天候に驚く日が多くなりました。
建築業界では、2050年のカーボンニュートラルに向けて、脱炭素化に資するZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)化が求められています。私たち、建築環境分野は、建物の中の空間を扱う研究分野です。目に見えない光や風、暑さや寒さ、そうした建築環境の、利用する人にとっての「快適」を、客観的な数値で評価します。
空間の質とエネルギー消費のバランス
当然、「快適」感を増すためには、よりエネルギーを使って暖かく涼しくすることになるわけですが、一方でエネルギー消費が大きくなるわけですね。
私が研究しているのは、「快適」に代表される『空間の質』と省エネのような『エネルギー消費』のバランスです。バランスは、利用する人や考え方にもよって大きく異なります。小学校の教室で、児童が快適に、しかも省エネに授業を受けることができるためには・・・とこれを突き詰めていきます。
静岡という自然エネルギーの豊かな環境をフルに生かして、実際に教室に行き、行政や学校の先生方と課題解決を図っていきます。
見えない環境をデジタルで可視化
最近は、このデータ取得も無線で自動、見えない環境を可視化するツールも安価に一般展開してきています。私たちも、デジタルツイン、点群データやGISなどを用いて、教室をはじめとした建築空間から屋外を含んだ都市空間まで、可視化の取り組みをはじめています。
建築学は建築空間を扱う広い学問です。大学でその範囲の広さ、奥深さを知りました。学部では建築史の研究室で学びましたが、社会人になって実務についてしばらくして、建築と交通の人間工学を学びに大学院に戻りました。
さらに、公務員や建築事務所の社長をしていて、「建築環境の時代だ!」とまた大学院博士課程に通いました。実務の中で、学びを深めたいと思うことを突き詰めて、今がある、という具合です。一生、好きなことを学んでいきたいですね。
「コロナ下の地方部小学校学習環境現況調査と良好な環境を維持する運用方法に関する研究」
◆主な業種
(1) 建設全般(土木・建築・都市)
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(3) 不動産、賃貸・リース
◆主な職種
(1) 技術系企画・調査、コンサルタント
(2) 製造・施工
(3) 保守・メインテナンス・維持管理、運用・システムアドミニストレータ・サービスエンジニア
◆学んだことはどう生きる?
設計事務所や施工会社(ゼネコン)などいわゆる建築業にのみならず、多くの業種・業界で建築物に関わる仕事をする建築士がいます。まちづくり、都市開発などを行うデベロッパーや、建築物の広告デザイン、建築物の法的手続きの審査を行う審査機関や行政の建築職などもあります。
私の研究室では、「建築環境・エネルギー」という専門領域の基礎知識を得て、社会人として、クライアントニーズに対する「聴く力」と自身の技術を客観的に提案する「伝える力」を発揮できるよう、社会人交流や学会発表などを行っています。
静岡理工科大学の建築学科は2017年に設置された新しい学科です。新しく建築した建築学科棟が生きた教材となっており、教員もほとんど皆、実務の建築を知るメンバーです。今注目の脱炭素社会には、建築環境を理解した建築技術者が必要です。私の研究室では、フィールドワークを中心に、実学としての建築をリアルな環境で学んでいきます。
研究というより、世の中の建築士には一般常識ですが、建物の日影図を描いてみてはどうでしょう。
私の授業では手書きで描きますが、最近はGoogle Sketch upのように、無料で精度の高いモデリングができるソフトも多いですし。季節で移ろう日照が、建築物のエネルギー消費に大きく影響するのです。冬と夏での日影をみて違いを実感してください。さらに、周りの環境に与える影響も考えてみると良いですね。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? やはり、建築学。様々な視点で取り組み方が多彩なので、歴史、人間工学、環境とアプローチしてきたけど、まだまだ足りない。 |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? スキー。体育会系スキーサークルで、大学入学時には「まるは」(初心者)だったが、1級取得するほど、冬は山にこもっていた。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 俳句を再開したい。歳時記、日本の四季感がすき。 |
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Q4.好きな言葉は? 『段取り八分(だんどりはちぶ)』。建設業だけではなく、社会人の不文律。いつも心がけている。 |