高層の建物を支える杭と地盤の動きを模型実験で分析
建物を支える土台の杭
どんなに美しく、使いやすい建物でも、傾いては役割を果たせません。人と同様に土台がしっかりしてこそ成立します。
軟弱地盤上や高層の建物では、土台である基礎に杭を使用することが多いです。一般的には杭の先端を地中深くの硬質な地層に入れて建物を支え、建物の重量が杭から地盤内に広がって伝達されます。
隣の杭が近いとバランスが変わる
杭同士の配置間隔が広い場合には各杭の支持能力は同じですが、杭が近接していると単純ではありません。
例えば、柔らかくて厚いマットの上に皆さんが立ち、その後で同じマットに友達が載ったとします。自分よりも遠くに友達が立てば皆さんに影響はありませんが、すぐそばに立たれたらどうなりますか?足元が沈んでバランスを欠くでしょう。杭も同じです。隣の杭の影響で支持能力が変わります。これを「群杭効果」と呼びます。
地盤の時間変化を解析
杭は人と違って足元である杭の先端だけではなく、それより上の杭の周面も地盤に接しているため複雑です。近年は様々な形状の杭があり、群杭効果に不明な点が多いです。
そこで、この現象を解明しようと地中を観察できる土槽を使った模型実験を行っています。模型の杭に力を加えて地盤の状況を観察しますが、肉眼では地盤の動きはよくわかりません。地盤の動きを連続撮影し、その時間変化を解析することで地盤の動きと杭の支持能力の関係を分析しています。
建物に関する課題は皆さんの経験の延長線上で考えると非常に身近で興味深いものになります。その興味がより安心、安全な暮らしの実現に寄与するかもしれません。
将来の職業を選択する上で、「何を仕事にしたいのか」ではなく、「どんな技術者になりたいのか」の考えを持っていました。
建築構造の家系でもあり構造を選びましたが、他人があまりやらない分野の方が活躍の場が多いのではないかと考えて、「基礎構造」を専門とする研究室に入りました。民間企業を経て大学教員をしていますが、一貫してこの分野の技術者が少ないことを身に染みて感じるとともにやりがいを感じています。
「拡底場所打ちコンクリート杭の群杭効果に関する研究」
◆ 下村研究室HP
◆主な業種
(1) 建設全般(土木・建築・都市)
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
(1) 生産管理・施工管理
(2) 基礎・応用研究、先行開発
◆学んだことはどう生きる?
建築の地盤や基礎構造を専門とする研究室は非常に少ないのが現状です。そのため、大学院を修了した学生の多くは研究室の研究分野を生かして、建設会社や地盤・基礎の専門会社で研究開発や技術支援を行っています。
建築構造のはなし
マリオ・サルバドリー、訳:望月重、北島哲男(鹿島出版会)
序文に、「この本は、美しい建造物を愛し、それらがどうのようにして建っているのかを知りたいと思っている人たちのために書かれた本である」とあります。難しい数式はなく、誰もが持っている力学的感覚で理解できるように建物がなぜ立っているのかを物語っています。意匠系の教員もおススメする本ですので高校生の導入としては良いのではないでしょうか。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 農業、水産 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ドイツかスペイン。日本が一番いいですが、ビールならドイツ、食と街の居心地ならスペイン。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 料理と犬の世話(フレンチブルドッグ) |