モノをどう摘む? 手指の器用さを人体模倣ロボットで明らかに
スマホを使うとき力を入れる筋肉は?
スマートフォンでこの記事を読んでいるあなた、スクロールしようと指を動かすとき、どこの筋肉に力を入れるか考えていますか? 他の指がスマホを支える力は? 指一本一本の角度は? そんなことを考えながら操作する人は恐らくいないでしょう。
私達にとって手は最も身近ですが、身近過ぎてよくわかっていないことも多いのです。ヒトの手の機能をロボットで再現する研究は数多くなされています。しかし、その目標とするヒトの手指の器用さに関して、理解がまだまだ足りていません。
そこで私達は、ヒトの運動の器用さや巧みさのメカニズムを、ヒトの身体そっくりの人体模倣ロボットを作ることで明らかにする研究を行っています。
爪や柔らかい皮膚があってこそ
例えば物を摘むときには親指と人差し指の指先を使います。この指先の骨である末節骨は爪が正面を向いた方向から見て左右に非対称な形をしています。この非対称な形そのものが指の肉の変形に干渉して、物を摘む能力を高くしていることを、人工の指先を持ったロボットハンドを作って明らかにしました。
また、爪の有無、皮膚の柔らかさが異なる複数の人工指先を作成し、物を摘む能力を比較すると、爪があり柔らかい皮膚を持った指先が最も優れていることも明らかにしました。このように指先一つをとっても、あなたのその指の形と性質が物を摘む際に有利に働いていることがわかります。
現在は手や足、肩など研究対象の身体部位を拡大しており、最終的には全身人体模倣のロボットを作成することを目指しています。
中学高校の頃は漠然とロボットが好きだなと思っていて、大学入学後も研究者になるとは思っていませんでした。入った研究室でヒトの身体運動制御の研究にハマり、そのまま没頭していきました。
その後、大学で働くことになった際に義手ロボットを作る研究を共同で始め、ロボットを作れるようになりました。振り返ると、中学高校での漠然とした興味が20年ほどで結実し、現在のヒトを知るためにロボットを作るという取組に繋がっています。
「人体模倣ロボットを用いたヒトの手指骨格形状が把持能力を向上させるメカニズムの解明」
◆主な業種
(1) 一般機械・機器、産業機械(工作機械・建設機械等)等
(2) 電気機械・機器(重電系は除く)
(3) 医療機器
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 基礎・応用研究、先行開発
(3) システムエンジニア
◆学んだことはどう生きる?
ロボット開発を学んだ学生さんは様々な企業の研究開発職に引っ張りだこの印象です。大学での研究内容そのものが直接活きることは少ないと思いますが、研究活動を通じて培った、課題解決能力、課題発見能力、プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力は様々な仕事で活かすことができます。
また、ロボットのハードウェア開発のできるエンジニアの需要は非常に高く、今後益々重要になっていくと感じています。
私は融合系の学域に所属しているため、機械、ロボット、AI、医療福祉、生物、神経科学、スポーツ科学、等々の分野を横断した研究ができます。特に私の専門であるロボット工学では、移動ロボット、生物模倣ロボット、ソフトロボット、ヒューマノイドロボット、医療ロボット等、多様なロボットの研究を行うことができます。
また、本学の学生はものづくりなどの技術を持っている学生も多いため、互いを高め合える環境で研究できるのも魅力です。
昨今、ものづくりのハードルは下がり続けていますので、やるかやらないかの世界です。簡単なキットでいいので、何か動くものを作ってみると、世界が広がると思います。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 記憶を引き継げるなら人文社会系で哲学を学んでみたいです。当時は漫然と講義を受けていましたが、同じ講義を今もう一度受け直したいとも感じます。 |
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Q2.学生時代に/最近、熱中したゲームは? 大学院生のときに『ドラゴンクエストⅩ』と『FINAL FANTASY XIV 』をやっていましたが、なんとか辞めました。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 子育てです。ヒトを研究しているので非常に面白いです。 |
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Q4.好きな言葉は? 飛行機があれだけ高く飛べるのは、すさまじいばかりの空気の抵抗があるからこそなのだ。 |