流体工学

流れのシミュレーション

流れを制御するプラズマアクチュエータで、全く新しい飛行機や風車を


佐藤允先生

工学院大学 先進工学部 機械理工学科

出会いの一冊

紅の豚

宮崎駿(スタジオジブリ)

アニメーションが持つダイナミックな表現と「流れ」のダイナミックな現象との親和性は高く、「流れ」をうまく表現している作品に心ひかれます(ここでの「うまく」は「物理的に正確な描写」ということでは決してありません)。

『紅の豚』をはじめ、宮崎監督のアニメーションでは「飛ぶシーン」が数多く描かれており、いずれのシーンも「流れ」のダイナミクスを存分に感じさせてくれます。宮崎作品の面白さについては言うまでもありませんが、「流れの表現」に注目するとまた違った楽しみ方ができるかなと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

流れを制御するプラズマアクチュエータで、全く新しい飛行機や風車を

飛行機の進歩は形状の工夫で

飛行機や風車など、空気の流れをうまく利用することで生活を豊かにする機械は数多くあります。飛行機を例にとると、1903年のライトフライヤー号からはじまり、単葉機、大型旅客機、超音速機、スペースプレーンなどなど、用途に合わせて色々な飛行機がつくられてきました。

これら飛行機の進歩においては翼や機体の形状を工夫して性能を向上させる試みが様々おこなわれ、その結果、洗練された形状を持つ飛行機がうみだされました。

「流れを形状にあわせる」ことで限界突破

一方で、「形状工夫」に頼った飛行機の性能向上にはいずれ限界がきます。このような課題に対して我々は、「流れにあわせて形状を工夫する」のではなく「流れを形状にあわせる」ことを目指し、流れの制御(コントロール)に関する研究をおこなっています。

例えば、流れの制御をおこなうことで、洗練された形状の翼でなくても(単純な平板でも)流れの状況にあわせて時々刻々流れを能動的に制御することによって洗練された翼と同等かそれ以上の性能を持つことが可能となります。

単なるテープ状だが、流体制御に有望視

流れを制御するデバイスの中でも近年注目を集めているのがプラズマアクチュエータです。プラズマアクチュエータは単なるテープ状の装置であり、その構造的なシンプルさなどから流体制御デバイスとして有望視されています。

我々の研究室ではプラズマアクチュエータによる翼周り流れの制御に関する研究を、主に流れのシミュレーションを用いておこなっています。流れの制御における流体現象を理解することで、効果的な制御が可能となるプラズマアクチュエータの設置・駆動方法が明らかになりつつあります。

本研究から、今まで見たことも想像したこともないような新しい飛行機や風車などの実現を目指しています。

プラズマアクチュエータを使った翼周り剥離制御のシミュレーション結果
プラズマアクチュエータを使った翼周り剥離制御のシミュレーション結果
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

流れのシミュレーションに興味を持ったのは大学に入ってからです。大学2年次に自分で課題を決めて研究を進めていく授業がありまして、私は「無重力環境における効率的な空調システム」の課題に対し、流れのシミュレーションをおこないました。実験が難しい条件でもシミュレーションによって色々なことがわかるのは大変興味深く、面白かったです。

そこから、学部の研究室、修士・博士課程の研究室と、シミュレーションを用いた流れの研究に取り組んできました。「流れの制御」に関する研究に取り組みはじめたのはJAXA宇宙研の研究員時代からです。余談ですが、当時のボスの言葉「流体機器の設計概念を根本から変えたい」には少なからず心動かされました。

JAXA宇宙科学研究所の惑星風洞で行ったeVTOL実験の様子
JAXA宇宙科学研究所の惑星風洞で行ったeVTOL実験の様子
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「多様な風況に順応可能な発電用風車を実現する能動的剥離制御技術の確立」

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学生たちはどんなところに就職?

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先生の学部・学科は?

先進工学部機械理工学科は国際的に活躍できるエンジニアを育成することを目標に、工学教育と英語教育の両方に力を入れています。3年次の海外研修や、ユニークなハイブリッド留学システムなど、英語を学ぶうえで様々な選択肢があります。

研究面でも生産工学、材料工学、音響工学、医療工学、システム工学、人工知能、クリーンエネルギー、航空熱流体など多方面にわたる研究がおこなわれています。加えて、パイロットを目指す学生のための専攻もあります。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

ダンジョン飯

九井諒子(ハルタコミックス)

これといって秀でた能力がない主人公が「魔物が好きすぎて魔物に関する知識(欲)が膨大」の一点突破で数々の難題に挑み解決していく冒険譚は、研究者としても学ぶところが多々あります。

漫画の完成度(特にギャグ)もピカイチであり、個人的には「グリフィンのスープ」の話は前後のエピソードも含めてブラボーの一言です。余談ですが、私の長男の名前は九井先生の一字をいただきました(諸説あり)。


RRR

監督:S.S.ラージャマウリ

インドで作られた痛快娯楽映画です。「観客を楽しませるためには一切妥協しない」という作り手側の矜持を強烈に感じる作品となっています。

ときに自分本位で自己満足に終始してしまいそうになる研究生活において、観客の存在と彼らをいかに楽しませ満足させるかの大切さを思い出させてくれます。映画としての面白さももちろんピカイチです。


新・物理入門

山本義隆(駿台文庫)

大学受験用の参考書ですが、書かれている内容はまさに「物理への入門」であり、物理学の深淵への入り口をのぞかせてくれます。

物理を学ぶうえでの数学の重要性が強調されており、特に、物理現象を記述する際の微積分の有用性とその意義が明確に理解できるので、数学を学ぶうえでのモチベーションアップにもつながります。今でも手元においてあり、時折開いて読んでみると新たな発見があったりします。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

高校時代に自主制作映画を撮っていたので、映画理論をきちんと学んでみたいです。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

映画『男はつらいよ』の主題歌が好きです。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

『秒速5センチメートル』です。余談ですが、新海監督の作品には高確率で工学院大学が出演してます。

Q4.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

小中学生の時にスーファミのマリオやマリオカートをやり込みました。今はマリオワンダーを家族でやり込んでいます。

Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

ラジオを聴くのが好きです。コロナ禍で学生の顔が見えないオンライン授業を余儀なくされたときは深夜ラジオ風に授業をおこないました。


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