半導体製造に欠かせない低温プラズマの計測・制御
低温プラズマは放電で生成できる
プラズマ状態の研究をしています。プラズマというのは、高い電圧がかかって、バチバチと火花が飛んでいるような状況を指します。身近な例としては、雷や、蛍光灯などの放電気体などです。
最近では太陽エネルギーを生じる核融合プラズマなどが注目されていますが、私の対象とするプラズマは、蛍光灯に近くずっと低温で、簡単に放電で生成できます。
プラズマの中で起こる反応を応用
このような低温プラズマは、ガスの温度は室温に近く、蛍光灯を触っても火傷などはしませんが、実はこの中の電子は数万度もあり、要するに電子だけが温度の高い状態になっているのです。
そのような状態のプラズマの中に、わずかにCF4やO2分子などを入れると、電子との反応で、酸素原子やフッ素原子が生じ、プラズマ中の物体の表面に、化学的な作用を及ぼすことが期待できます。
実際このような原理が、半導体メモリーの製造プロセスに応用され、フォトマスクに沿った原子寸法レベルのパターン加工がなされます。
光でプラズマを計測する
皆様ご利用のパソコンや、携帯等の通信機器に不可欠な半導体メモリーが、このような反応性ガスを含んだ放電プラズマを応用して量産されております。
パターンの溝掘りが不十分だったり、掘りすぎて半導体製品が壊れたりしては困ります。そのため、プラズマを半導体加工に最適な温度や密度に保たねばなりません。
私は、こうした低温プラズマの温度や、その中に生じた反応性原子の密度を、光で測る研究に取り組んでいます。
学生の頃は科学者になりたいと思っていましたが、経済的に博士課程への進学が叶わず、就職しました。
核融合の研究開発を希望して、その部署に配属されましたが、社内的にはそこは宇宙通信機開発を主とする部署でした。利益率の悪さから核融合分野は縮小され、宇宙通信機を設計させられて3年ほど勤めた頃、たまたま、博士の学位がなくても大学助手公募中の記事を見て、応募したところ助手となることができました。
その後はさまざまに論文も書けるようになって、現在のように科学者らしくなることができました。
「各種エントロピー理論に基づいた弱電離非平衡プラズマの温度の再考」
◆主な業種
(1) 半導体・電子部品・デバイス
(2) 電気機械・機器(重電系は除く)
(3) その他の電気・電子系機器
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 基礎・応用研究、先行開発
(3) 生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
・半導体開発の業界で、半導体設計・製造技術の開発を行っている人がいます。
・空調機の開発の業界で、微細な埃・塵をできるだけ取り除く様なクリーンルームの製造・開発を行っている人がいます。
・鉄鋼製造の現場で、高温処理を行う装置の温度管理を、光計測を用いて工程管理することを専門としている人がいます。
低温プラズマや半導体開発は、工学部の電気電子工学に所属しており、私が専門とする様な原子や分子の発光を理解するための「分光学」という理学部化学に近いような学問を取り入れにくいと思います。東京工業大学の工学院に来れば、電気電子だけでなく、物理学や化学との中間にあるような分野の学修が、他大学よりもしやすいかもしれません。
さまざまな材料開発や、半導体に応用される放電プラズマについて調べてみましょう。
また、そうした身近なプラズマと、太陽や地球上空の電離層など、宇宙・地学で登場するプラズマとの違いについて調べてみましょう。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 物理学 |
|
Q2.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 阪神タイガースの応援 |