社会の良き担い手になるための、目標や倫理観を探る
模範市民として生きるのがシチズンシップ
市民性涵養、何やらややこしそうです。英語ではcitizenship cultivationと表現するようにしています。
スポーツマンシップとは、勝利だけを追究せずフェアプレーの精神を持つことであるように、シチズンシップとは市民としての模範的な生き方をすることを指します。cultivationは耕すという意味のcultivateの名詞形です。
学生の学びと成長の結果から考察
私たちの研究グループは、より良い社会の担い手となる人々の心の根っこが深くなるようにする実践的な研究を行っています。
特に立命館大学サービスラーニングセンターの取り組みを事例に、大学と地域社会とを行き来する科目での学生の学びと成長の結果から、目標設定や評価観点のあり方を探究しています。
日常的態度が洗練されるための倫理観とは
自分のことは自分が一番良くわかっている、そう思っている人もいるでしょう。そう思いたい気持ちはわかります。しかし、自分が気づいていない自分の魅力や価値もあります。もちろん、欠点や落ち度もあるでしょう。
私たちの研究は、そうして自分と他人の物、事、出来事への見方を重ね合わせて、自己と社会の成長と成熟がもたらされる場の制約条件や前提条件を明らかにするとともに、何を目指すことが大切か、そして何かを目指すだけでなく、何気なく過ごす日常の態度が洗練されていくにはどのような倫理観を携えればいいのか、歴史的・社会的・文化的な背景が異なる人々との比較の中で研究しています。
目標4.「質の高い教育をみんなに」は、質が低い、量が多いだけ、自分だけ良ければ良いという教育はダメだ、ということです。ここでは「第一世代」が重要とされています。これまで道が開かれていなかった人たちに、チャンスが与えられるということです。
具体的には、経済的・社会的・文化的な理由から、親ができなかったことを、子がアクセスできることを指します。皆さんの周りで、チャンスが奪われている人はいませんか。ともに手を携えていきましょう。
◆先生が心がけていることは?
誰かのチャンスを奪っていないかどうか、自らの行動に謙虚になる。
「市民性涵養の関係性モデルを軸とした地域参加学習カリキュラムと教授法の開発」
Andrew Furco
University of Minnesota College of Education and Human Development
ボランティア活動では利己的・利他的な動機の違いに関係なく、活動後に丁寧にその行為の結果を内省することで、人格的な成長がもたらされることを理論的に整理し提示しています。2019年7月には立命館大学での国際シンポジウムにお招きし、研究成果のみならず日本の研究者・実践家の皆さんにその温かい人柄に触れていただきました。
川中大輔
龍谷大学 社会学部 現代福祉学科
研究と実践を区別せず、いかにして一人ひとりが社会の担い手としての自覚と責任を有することができるか、「シティズンシップ共育フォーラム」を通して例証しています。大学や高等学校といった学校の枠にとらわれず、協働的実践を推進しています。
常々、自分の関心に基づく検索結果から有意義な情報を取捨選択する(search)、その結果を踏まえて再び情報収集し分析する(research)大切さを実感するグループワークを行っています。
◆主な業種
様々な業種につきますが、挙げるとすれば、
・官庁、自治体、公的法人、国際機関等
・デザイン・著述、翻訳、芸術家等
◆主な職種
(1)経営者、会社役員
(2)事業推進・企画、経営企画
(3)コンテンツ制作・編集<クリエイティブ系>
◆学んだことはどう生きる?
通常、大学では卒業間近に「ゼミ」と呼ばれる小集団教育・研究を行いますが、私は学部や学年を横断したゼミ(教養ゼミ)や、サービスラーニング手法を用いたプロジェクト学習のクラスで学生の学びと成長を支えています。古民家の活用や災害復興の過程への関わりなどを通じ、自分が誰かの役に立つのではなく、一人ひとりの活躍機会を創り出す、まちづくりの分野に携わる卒業生が多く、何気ない言葉を大切にする習慣がついています。
共通教育推進機構は立命館大学の16の学部を横断する部署です。高校では「普通科」という課程がありますが、大学は専門に分かれます。共通教育推進機構という部署は、学部や学年を横断した教育プログラムを企画・開発・導入・推進・評価しています。これらは、英語ではpedagogyと呼ばれ、先生の教え方と学生の学び方の双方に焦点を当てた、ハイブリッドな学びのコミュニティのあり方を実践的に明らかにする研究です。
いまを生きる(映画)
ピーター・ウィアー(監督)
ロビン・ウィリアムズさん演じるジョン・キーティング先生は、全寮制の進学校ウェルトン・アカデミーの卒業生ながら、後輩であり教え子である生徒たちに対して、詩は正しく理解することよりも感じることが大事だということを訴えます。
「先生は答えを教えてくれる人」だと思っている優等生たちは一瞬戸惑いますが、一部の生徒たちは自らの人生を意義深いものにするために表現することの価値と意味に気づきます。「詩を読み、書くのは、かっこいいからじゃない。人間だからこそ、僕らはこの詩というものを読んだり書いたりするわけだ」。教わるのではなく学ぶ、生きた言葉に触れて響くことばで伝える意義が、この作品に描かれています。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 同じ理工学部の都市計画分野です。理系と文系とを区別することで、人生の選択肢を狭めていることを痛感したためです。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? 音楽家ではありませんが、iPhoneに入っているCDでは立川志の輔師匠の落語です。2人のあいだで言葉がまったくすれ違って物事が進まない『みどりの窓口』をよく聞きます。音楽アーティストではMr.Childrenです。無知で無邪気な中でも、新たな事柄に挑戦する大切さを想い起こすことができる『イノセントワールド』が好きです。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? ライフル射撃。集中力と筋持久力が鍛えられました。 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? カラオケボックスでバイトをしました。歌うことの楽しみ、盛り上げることの喜び、一人になりたい人をそっとしておくことの大切さに触れることができました。 |
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Q5.会ってみたい有名人は? 法然上人です。混乱の世の中で、多くの経典を学ぶのではなく「ただひたすら念仏をするのでよい」と断言した背景を、改めて掘り下げることができればと。 |