社会学

男性性と暴力

なぜ加害者に男性が多いのか。脱暴力と更生に向けた加害者研究


中村正先生

立命館大学 産業社会学部 現代社会学科 人間福祉専攻(人間科学研究科 人間科学専攻/教職研究科 実践教育専攻)

出会いの一冊

ドメスティック・バイオレンス 愛が暴力に変わるとき

森田ゆり(小学館文庫)

DVは深刻です。数多くの実例を扱っています。暴力を繰り返す加害者の心理と行動が、よく描けています。さらに、親しい家族の関係で、逃げたくてもどうして逃げることができないのかという被害者の心理もよく見えてきます。

こんな研究で世界を変えよう!

なぜ加害者に男性が多いのか。脱暴力と更生に向けた加害者研究

加害者との対話、暴力を振るう心理を研究

刑務所のなかの性犯罪者、子ども虐待をする父親、妻を殴るDVの夫(配偶者間の暴力)、体罰を振るう教師、ハラスメントをする上司や先生、嘱託殺人の犯人等、多くの加害者たちはどうして暴力を振るうようになったのか、その暴力をどうすればいいのかについて、対話をしています。脱暴力と更生に向けた臨床的な対話です。加害者対策の研究です。

暴力は「男性問題」

こうした暴力加害者のほとんどは、男性です。だから男性問題ととらえています。また暴力が起こる関係性も重要です。例えば、家族を媒介にして虐待とDVが交差します。家族という親密な関係性が暴力を誘発すると考えます。

これらは「加害者心理の研究」ですが、相当な広がりをもって存在していますので、個人を対象にした心理学的把握を乗り越える必要があります。脱暴力をめざすので臨床的ですが、視野は社会学的ですし、法学の知識も必要となり、包括的に「臨床社会学研究」と名付けました。

暴力は、男性性や育ちと深い関係がある

これらの暴力の加害者は、育ちの過程で虐待を受けてきたことが多いということがわかっています。何らかの問題解決のために暴力を用いることが多くあります。思考と行動の習慣となった暴力を用います。

さらに、彼らは虐待や逆境のなかを乗り越えてきたという自負とともに、男性的な自己像を創っています。それが長じて暴力を振るうのです。暴力の再生産といいます。こうして暴力は男性たちの心理と身体に宿っていき、男性性(ジェンダー)や生育過程と深く関わり、存在していると考えています。

脱暴力を、政策と心理から

そこで脱暴力のための制度・政策研究(修復的司法や臨床法学研究・治療法学といいます)と、加害者を前にした時の脱暴力への心理臨床論の双方について研究しています。男性性と暴力の関係は複雑なのですが、脱暴力は時代の課題なので、少しでも平和な世界を作りたくてこの研究をしています。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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直接的に、人間の身体と心理に攻撃を加える暴力はわかりやすいし、何よりも痛くて苦しいので否定できます。しかし、社会には見えない暴力があります。社会が作り出す差別や貧困は、構造的な暴力といいます。追いやられた死としての自殺は、内部に向かう暴力です。自信が持てずに自己肯定感が欠如していくのは競争社会のせいでもあります。

男性の暴力はジェンダー暴力でもあります。こうして暴力を社会的に考えていきます。暴力をなくすことは、いろいろな意味で要の位置にある課題だと考えています。

◆先生が心がけていることは?

きょうとNPOセンターという組織をつくって市民活動を活発にする社会活動を多様にしています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「男性性と暴力の臨床社会学的研究」

詳しくはこちら

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どこで学べる?
先生のゼミでは
◆学生が関心を持つのは

不登校、ひきこもり、子ども虐待や老人虐待、ドメスティックバイオレンス、ストーキング、薬物依存やアルコール依存、差別的言動とヘイトスピーチ、いじめやいじり等、社会病理には多くの学生が関心を持ちます。研究すべきテーマは多いです。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1) 病院・医療

(2) マスコミ(放送、新聞、出版、広告)

(3) 福祉・介護

◆主な職種

(1) 大学等研究機関所属の教員・研究者

(2) コンテンツ制作・編集<クリエイティブ系>

(3) その他医療系専門職(臨床検査技師・理学療法士等)

◆学んだことはどう生きる?

暴力だけではなく社会病理や社会問題を扱うので、マスメディアで番組を作る仕事をしている卒業が多くいます。さらに、社会問題の解決をビジネスモデルで図ろうとする、社会的事業型の組織で活動する卒業生が続きます。あとは専門職として活動している人も多いです。

先生の学部・学科は?

人間科学研究科には、臨床心理士や公認心理師という資格に関する課程もあります。もちろん大学院なのでリサーチが基本です。この研究科は、アカデミックな人間科学とプロフェッショナルな人間科学の統合を目指しています。科学的な心理学と、実践的な臨床のための学問を統合することです。これに対応する立命館大学の学部としては、大阪・茨木キャンパスにある総合心理学部があります。私自身は、京都・衣笠キャンパスにある産業社会学部で、社会病理学や臨床社会学を教えています。

中高生におすすめ

よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門

清田隆之(晶文社)

男たちが女性と付き合う際にある失敗話を集めてあります。そこから暴力につながる直前の、「あるある話」として整理されています。男子必読です。女子にはこんな付き合い方を回避するアドバイスが満載です。


男子が10代のうちに考えておきたいこと 

田中俊之(岩波ジュニア新書)

男らしくしなさい!男は泣かない!等と圧力がかかります。どうしてこんなに我慢を強いられるのでしょうか。性別によって、求められる役割や期待のされ方が違うことを、ジェンダー役割といいます。男性学の視点から自分を見つめ直すのに役立ちます。


ファイト・クラブ(映画)

デビッド・フィンチャー(監督)

「おれを力いっぱい殴ってくれ」と主人公は言います。彼は慢性の不眠症に悩んでいました。つまらない人生だと思って落ち込んでいます。そこで見かけた「ファイト・クラブ」。体を殴り合い、命の痛みを確かめ、抱き合います。

主人公は社会に倦んだ男たちを集め、全米に広がる組織を作ります。それは男たちを捉え、やがて巨大な騒乱計画へと発展していきます。暴力を通して愛情と友情が芽生えていきます。人間の内なる攻撃性の欲望を皮肉たっぷりに描いています。暴力にまみれた私たちが見えてきます。同名の原作もおすすめです。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

クイーン。特に、『ボヘミアン・ラプソディ』。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

黒澤明監督の『羅生門』。

Q3.学生時代の部活・サークルは?

高校の頃は山岳部でした。

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

京都の南座で歌舞伎の大道具係をしていました。

Q5.研究以外で楽しいことは?

演劇を見ること、そしてやってみること。


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