外国語教育

異文化適応

アイデンティティ形成とリテラシー発達を言語横断的に捉える


根本浩行先生

立命館大学 文学部 国際コミュニケーション学域(文学研究科 英語圏文化専修)

出会いの一冊

グラン・トリノ(映画)

クリント・イーストウッド(監督)

クリント・イーストウッド演じる老人と、東南アジアから移民してきたモン族の少年との友情あふれる物語です。

主人公の老人と移民の少年の友情のすばらしさに加え、少年を一人前にするために、社会人としての規範、慣習、話し方、男らしいふるまい方、ローカルな言葉の使い方などを老人が教えていく場面がところどころにあり、暮らしの中のことばを社会言語学的視点から考察する一例として面白い作品です。

こんな研究で世界を変えよう!

アイデンティティ形成とリテラシー発達を言語横断的に捉える

異文化適応はアイデンティティを揺さぶる場

世界のグローバル化により流動性が高まる中、第二言語習得や異文化適応の捉え方が多様化し、今まさに異文化接触の再概念化が求められる、新たな段階に突入していると言えます。

異文化適応には苦悩や葛藤などがつきものですが、その一方で論理的思考力や批判的分析能力を促進する場となること、そして自己形成、キャリア形成へとつながるアイデンティティ変容を引き起こす場となることも重視されるべきでしょう。

このような視座から異文化接触を発展的に捉え、異文化適応の過程で起こる言語学習者・使用者の内的、外的な変化を、言語使用環境などの社会文化的要因を基に分析するのが、私の研究分野の面白さです。

グローバル化社会での言語横断的能力

現在、私は英語圏の大学で学ぶ日本人交換留学生を対象に、留学前、留学中、留学後の縦断的調査を実施し、言語や文化の境界線を超えて、第一、第二言語能力の相乗効果により形成される言語横断的リテラシー(translingual literacy)と言語横断的アイデンティティ(translingual identity)の相互発達過程を考察しています。

また、卒業後社会人となった交換留学経験者を対象に追跡調査を行い、言語横断的リテラシー及びアイデンティティと、昨今のグローバル化社会における雇用適性との関連性を検証しています。

グローバル人材育成における言語横断的能力の意義を明確化するとともに、このような能力が、教育場面と職業場面を通してどのように養成されるべきか示唆することで、研究成果を広域的に教育現場と社会に還元していきたいと考えています。

第6回国際言語管理シンポジウムで実行委員長を務めた時の様子
第6回国際言語管理シンポジウムで実行委員長を務めた時の様子
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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グローバル人材育成における言語横断的リテラシーと言語横断的アイデンティティの意義を明確にし、言語横断的能力が教育場面と職業場面を通してどのように養成されるべきか示唆することで、目標4.「質の高い教育をみんなに」と8.「働きがいも経済成長も」に貢献ができると考えています。

◆先生が心がけていることは?

節電、エレベーターを使わないこと。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「言語横断的視座によるリテラシーとアイデンティティの相互発達に関する縦断的研究」

詳しくはこちら

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どこで学べる?
先生のゼミでは
◆社会言語学ゼミでは

ことばの使い方の状況による変化と経時的変化、異文化コミュニケーションにおける文化的ステレオタイプなどを扱い、客観的な文化意識を高め、物事を過剰に一般化しないこと、常に“Why?”、“How?”という疑問を持ち、物事の要因を探ることなどを教えています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
2012年オーストラリア応用言語学会での発表
2012年オーストラリア応用言語学会での発表
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

(2) 交通・運輸・輸送

(3)小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

◆主な職種

(1)営業、営業企画、事業統括

(2)宣伝、広報、IR

(3)中学校・高校教員など

◆学んだことはどう生きる?

物流業界で海外との取引を担当している卒業生は、スイスで1年間の駐在なども経験し、学生時代にゼミで学んだ異文化コミュニケーション、異文化接触、第二言語習得などに関する社会言語学的知識を生かしています。

先生の学部・学科は?

国際共通語としての英語学習を軸とし、英語圏の地域と文化、国際言語としての英語や教育について広く学ぶことができます。英語圏の文化と言語に関する諸科目や、それらと連携した学術英語科目、短期・長期留学プログラムなどを通して、体系的な4年一貫教育を受けられることも本学域の魅力の一つです。また、最新の応用言語学理論を用いた英語教育の研究、そして学校英語教育に必要な実用的な知識と技術を身につけることができます。

中高生におすすめ

はじめての言語学

黒田龍之助(講談社現代新書)

ことばの面白さ、奥深さに触れることができる一冊で、文章も事例もわかりやすく、言語学の入門書としておススメです。特に、大学で言語系の学科に進みたい高校生は、ぜひ読んでみて下さい。


新・民族の世界地図

21世紀研究会(文春新書)

様々な民族の言語、アイデンティティ、宗教、日々の暮らしを歴史的観点から学ぶことができます。大学に入ると、いろいろな国から来た留学生や先生などに出会うことになるでしょう。

また、皆さん自身も留学を経験すると、いろいろな民族的・文化的背景を持った人々と遭遇します。社会に出てからも国際的な交流が求められる時代になってきました。国境を越えた人の移動が盛んになってきている昨今、異文化理解を深める上で、手元に置いておくと便利な一冊です。


自分を鍛える! 「知的トレーニング」生活の方法

ジョン・トッド、訳:渡部昇一(三笠書房)

日頃の生活を見直し、知的生活のルーティーンを作り上げる知恵が詰め込まれています。受験に向けて、大学で学びを深める上で、メタ認知能力や自律学習能力の向上につながる一冊です。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

オーストラリア。以前、数年間住んでいました。

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

ライフ・イズ・ビューティフル

Q4.大学時代の部活・サークルは?

テニス

Q5.研究以外で楽しいことは?

ランニング、家族と過ごす時間


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