部落問題と向きあう若者たち
内田龍史(解放出版社)
本書は、日本社会におけるマジョリティ(多数派)の人々に、マイノリティ(少数派)である被差別部落の若者たちと出会ってもらい、関心を持って向きあってもらうための試みとして発刊された、全国各地で私が実際に行ったインタビュー記録です。
被差別部落にルーツがあることをカミングアウトしつつ、素敵に生きている若者たちによる、生まれた家庭・地域・学校生活・部落解放運動・結婚・仕事・これからの展望などといった生活史の語りが、それぞれの顔写真とともに掲載されています。
本書を通じて、十把一絡げで見られがちな被差別部落の若者たちの個々人の魅力、社会の多様性、そして差別のアホらしさを実感してもらえればと思います。
マイノリティの若者の自己肯定感を調査 共生社会への一助へ
日本のマイノリティ問題、部落問題
私の研究関心は、「差別問題を解決していくためにはどうしたら良いか」です。そのために、日本社会における典型的なマイノリティ問題である部落問題を事例として、マイノリティ(少数派)と、マジョリティ(多数派)との関係性に着目した研究を続けてきました。
残念ながら、マイノリティの人びとは、偏見や差別の対象となったり、経済的に厳しい状況に置かれ、自分に自信を持てなくなることがあります。
他方で、マジョリティの立場でのほほんと暮らしていると、マイノリティの現状を知る機会が少なく、関心も持てません。そのため、マイノリティが直面している問題が放置されたり、忘れられることもあります。
肯定的なアイデンティティの立ち上げ
けれども、マイノリティの人々は、偏見・差別・忘却・無関心に苦しんでいただけではありません。それらに立ち向かい、闘うことによって、否定的ではない肯定的なアイデンティティを立ち上げるとともに、様々な違いが尊重されるべきだとする「共生社会」への展望をひらいてきました。
マイノリティの若者にインタビュー調査
本研究の目的は、差別の対象となりうるマイノリティの子ども・若者たちが、いかにして自分のことを肯定的にとらえることができるのか、被差別部落出身であることをカミングアウトしている若者たちにインタビュー調査を行うことによって、その諸条件を明らかにすることです。
この研究が、マイノリティの子ども・若者たちがのびのびと生きられる社会を作るための一助になることを願っています。
差別は、差別の対象となる人々を貧困に追い込み、健康的な生活を蝕み、教育の機会を与えず、格差と不平等を拡大させ、時には人の命を奪うものでもあります。
差別問題は、平等に与えられるべき権利が奪われている時に、「こんな扱いが許されて良いはずがない」というマイノリティからの告発の言葉として立ち現れることが多く、それを受け止めたマジョリティの人々とともに克服に向けた努力が積み重ねられてきました。まずはマイノリティの人々の声に耳を傾けることが重要です。
「ポスト特別措置法時代における被差別部落出身者のアイデンティティ形成に関する研究」
現代社会におけるマイノリティ・マジョリティ間の諸問題を、社会学的に分析します。マジョリティからは「見ようとしなければ見えない」問題を、いかにして見えるようにしていくのか、社会調査の技法とともに学びます。
社会学を専門とする優れた研究者が多数在籍しており、その全員が、自らが専門とする分野の授業を担当し、学生に教えています。社会学を専門的かつ幅広く学ぶには、最適な大学の一つだと言えます。私も、もう一度学生に戻って学び直したいくらいです。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 社会学を学びます。面白いので。 |
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Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 地下鉄内の広告の張り替え。待ち時間中に車内に捨てられている漫画雑誌とスポーツ新聞を読んでいました。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 就学前のふたりの子どもの子育て。研究する時間は削られますが、今だけと思っています。 |