フランスではデモで顔を隠すと罰則 ~民主主義とプライバシー
私生活をみだりに公開されない権利
プライバシーの権利は、「私事」(私生活)をみだりに公開されない権利を意味します。この権利により、「私事」は周囲の目にさらされることなく、秘密を維持できる空間となります。
これは、政治の問題(「公事」)について公の場で意見を言い合い、議論を重ねていく民主主義の空間(「公共圏」)とは異なる次元のものと考えられてきました。私の問題関心は、プライバシーの権利を民主主義と密接に関連のある権利として、再構成しようとするものです。
行動や容姿の「私事」は民主主義にも必要
次のような裁判例があります。政治目的の集会に参加する人々を、警察官が道路上で監視したりビデオで撮影したりして、集会自体を妨害しようとした事件です。このようなことがあると、集会に参加したり自由に意見を述べたりすることが難しくなります。
そこで、人の行動や容姿等の「私事」を民主主義にとっても必要な要素と捉え、プライバシーの権利をより豊かな権利として位置づけなおすことが大切なのです。
フランスの法律は政治行動を委縮させる
以上の視点は、外国の最近の事例を分析する際にも役立ちます。フランスで2019年4月10日に制定された法律は、公道上のデモの際に正当な理由なく顔の全部又は一部を隠した者を、刑事罰に処することとしました。
顔をさらさなければ表現行為をすることができないというのは、積極的な政治行動を委縮させ、健全な民主主義を阻害するものです。再構成されたプライバシーの権利は、このような法律に新しい光を当てることになるでしょう。
この研究は、自由と安全の両立を目指し、人権保障と民主主義に基づく効果的なガバナンスの確立に貢献しようとするものです。通常、自由と安全とは、二者択一のように考えがちですが、それは違います。安全を維持しながら自由を最大限保障することこそを、追求すべきでしょう。
そのためには、例えば単純に防犯カメラを設置・増設するのではなく、どのような趣旨・目的で何をどのように行うのか、防犯カメラの設置がやむを得ないとしてもその管理権限を誰が持ち、データ利用の手続や削除の期限をどうするかなど、具体的なルールを定めておくことが必要です。日本のように法律や条例も存在せず、本人の気づかないところで個人情報が取得収集され利用される、ということでは、安全な社会とは言えません。自由に意見を言い合うためにも、プライバシーの保護が必要となるのです。
「民主主義におけるプライバシー権と『公共圏』の規範理論」
◆抑圧やゆがみのない民主主義国家を追求する 憲法における普遍的原理の徹底に向けて(Kansai University News Letter)
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 哲学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? フランスのパリ。歴史ある街で暮らすことで、じっくり思索にふけりたいから。 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?
『ロレンツォのオイル』 |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? ビルの警備員 |