子ども若者を尊重した社会を研究
雑誌『PTA研究』から、学校のあり方を探る
私たちの「考え方」はどのように作られてきたのでしょう。思想史研究はそれをわかりやすく教えてくれます。少し前の人々の歴史を研究すると、当たり前と思っていたことがひっくり返されたり、「眼からウロコ」ということにたくさん出会ったりします。
私は「PTA民主化の思想史研究―1970-2005年『PTA研究』の分析を中心に」の研究を通して、現在の学校のあり方を新しい側面から見て、柔軟で開かれたものにしたいと思っています。
雑誌を作った人にインタビュー調査
学校を民主的に、子ども中心に考えようとした人々がいました。その市民グループには新聞記者や教師もいましたが、保護者が中心となり『PTA研究』という雑誌を作っていました。
現在、インタビュー調査に全国にうかがっていますが、本づくりに関わった方々はご高齢になり、亡くなられたり、会うことが難しい方の経験も聴取しています。彼らの意見には勇気づけられるとともに、一方で高度成長期には、教育関心が高まっていくことも見て取れます。その重なりが、現在の学校を形作っていることが分析できます。
増える、子どもの自殺者
ところで現在、日本の自殺者は全体的に減少していますが、子どものみ増えています。中でも、子どもの自殺者の7割が高校生です。進路不安や人間関係で希望を失ってゆく彼らに対して、この研究で明らかにされた、学校をめぐる課題を通して時代を対象化し、新しい自由な展望を提示する成果を目指しています。私の専門分野全体が目指す方向性は、この研究の問題意識と共通のところにあります。
「PTA民主化の思想史研究―1970-2005年『PTA研究』の分析を中心に」
◆Twitter:https://twitter.com/chie_sak
主権者はつくられる
池田賢市、桜井智恵子(アドバンテージサーバー)
昨今注目される主権者教育。「どのような主権者教育をすれば良いのか」を考える前に、主権や教育を根本から問い直し、主権者教育にまつわる様々な問題点を浮き彫りにしています。「主権者教育」とは何か、「主権者教育」は必要か、そもそも「主権」や「教育」というものはどういうことかを問い直している1冊です。
「自分自身を承認できる学校へ」の章では、若者の政治的無関心は、小学校から高校までの教育において、子どもたちが批判的に物事を考える機会が奪われているからではないかということを、学校現場や教育政策だけでなく、雇用や暮らしの構造を問う視点からも能力主義に基づく教育を問い直し、学校の内実を変えていく必要があると提案しています。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? だんぜん、思想史。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? フランス。思想の老舗だから。 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 結婚式場のオルガン弾き。スイミングクラブコーチ。スーパーでの試食品おすすめ担当。 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? 料理いろいろ。 |