抑圧される人たちと共に調査し、その人たちのコミュニティを改善したい
社会の不平等に、研究者は何ができるのか
僕はこれまでの研究の中で、米国で再定住を目指す難民たち、インドのストリートチルドレンたち、フィリピンの人身売買の被害者、戦争被害者、スラムで生活する人たちと関わり、抑圧や周縁化された状況の中でも前向きに生きるこうした人たちの姿を見る機会を得てきました。
これらの経験のたびに、こうした状況に対して、自分にはいったい何ができるのか、社会正義を達成するための研究者の役割とは何なのか、研究者は、抑圧や周縁化の対象となっている人たちの人権を守ったり、社会の中の不平等に立ち向かうために何ができるのか、ということを自分に問いかけるようになりました。
改善に結びつかぬ研究に、調査される人が不満
伝統的な研究は、研究者が明らかにしたいことを、自分が選んだ手法を用いてデータを収集・分析して、論文にまとめます。その積み重ねが政策や実践の改善に結びつていくと信じているからです。
しかし、社会の中で抑圧や周縁化の対象となっている人たちの多くが、情報収集だけで何の状況改善にも結びつかない研究や研究者に対して、懐疑心や不満を持っていることを知ってからは、もっと直接的・即時的にこうしたコミュニティの状況改善につながるような研究がしたいと思うようになりました。
今はCBPR(コミュニティを基盤とする参加型リサーチ)を活用して、抑圧や周縁化の対象となっている人たちと協働して調査を行い、抑圧や周縁化を生み出す社会やコミュニティの構造変革を目指す活動に取り組んでいます。
僕の専門領域のソーシャルワークとは、貧困者、障害者、移民や難民、女性、LGBTQ+のように、社会の中で抑圧や周縁化の対象となっている人たちが、自分らしく生きられるように支援するものです。
こうした人たちが直面する課題の原因は、こうした人たちを生きづらい状況に追いやっている社会にあります。それを変えようとするのがソーシャルワークであり、当事者の人たちと協働して調査を活用して社会を変革するのがCBPRです。
◆先生が心がけていることは?
フェアトレード商品の購入
「多様性尊重のためのSWに対するCBPRの有効性の検証」
Brij Kothari
Indian Institute of Management Ahmedabad
音楽番組に字幕をつけることで、安価で数億人の識字力を向上させる、同言語字幕を開発しています。ソーシャルイノベーションのための信念・発想力・行動力がすごいです。
日高庸晴
宝塚大学 看護学部 看護学科
【Webを活用したLGBTQ+の実態調査】調査結果を元にLGBTQ+のための政策を政府に提言したり、教育改善の活動を精力的に行っている研究者です。
◆講義「多文化共生論」では
異文化の中で生活することを実感してもらうために、「バーンガ」というシミュレーションゲームをしてもらっています。アッと驚く結末なので、事前に中身を調べず、ぜひ体験してください。
◆主な業職種
(1) 福祉・介護分野における福祉・介護関連業務・関連専門職
(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関における教員・研究者
(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等における職員
◆学んだことはどう生きる?
卒業生の中には、多様な問題を抱える在日アジア人女性たちに自信と雇用機会を提供するレストラン「SALA」を神戸に立ち上げたり、マザーハウスやシサム工房といったフェアトレード会社で店長をつとめたり、海外(米国、豪州など)でソーシャルワーカーとして活躍したり、まちづくりのNPO法人「なごみ」を立ち上げたり、アフリカでHIV陽性者の女性たちを雇用する会社を立ち上げた人などがいます。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? ボブ・マーリー。いわずと知れたレゲエの神様。リズムも好きですが、アフリカ人の解放を訴えるメッセージ性のある歌詞が大好きです。特に『Get Up, Stand Up』が好きです。抑圧されている人たちが自分たちの権利を取り戻すための応援歌です。 |
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Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『エリン・ブロコビッチ』。シングルマザーが周りからの偏見と闘いながらも、社会正義のために巨額の公害賠償金支払いを被害者のために勝ち取る、ジュリア・ロバーツがアカデミー主演女優賞を取った、実話に基づく作品です。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? アメリカンフットボール |