社会福祉学

調査手法

抑圧される人たちと共に調査し、その人たちのコミュニティを改善したい


武田丈先生

関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科(人間福祉研究科 人間福祉専攻)

出会いの一冊

世界で最も貧しい大統領ホセ・ムシカの言葉

佐藤美由紀(双葉社ジュニア文庫)

「豊かさとは何か、人生で大切なことは何か」ということを改めて考えさせてくれる、ウルグアイ第40代大統領の名言集。何のために生きるのか、どのような人生を送りたいのか、大学で何を学ぶのかのヒントが欲しい人は、是非読んでみてください。

こんな研究で世界を変えよう!

抑圧される人たちと共に調査し、その人たちのコミュニティを改善したい

社会の不平等に、研究者は何ができるのか

僕はこれまでの研究の中で、米国で再定住を目指す難民たち、インドのストリートチルドレンたち、フィリピンの人身売買の被害者、戦争被害者、スラムで生活する人たちと関わり、抑圧や周縁化された状況の中でも前向きに生きるこうした人たちの姿を見る機会を得てきました。

これらの経験のたびに、こうした状況に対して、自分にはいったい何ができるのか、社会正義を達成するための研究者の役割とは何なのか、研究者は、抑圧や周縁化の対象となっている人たちの人権を守ったり、社会の中の不平等に立ち向かうために何ができるのか、ということを自分に問いかけるようになりました。

改善に結びつかぬ研究に、調査される人が不満

伝統的な研究は、研究者が明らかにしたいことを、自分が選んだ手法を用いてデータを収集・分析して、論文にまとめます。その積み重ねが政策や実践の改善に結びつていくと信じているからです。

しかし、社会の中で抑圧や周縁化の対象となっている人たちの多くが、情報収集だけで何の状況改善にも結びつかない研究や研究者に対して、懐疑心や不満を持っていることを知ってからは、もっと直接的・即時的にこうしたコミュニティの状況改善につながるような研究がしたいと思うようになりました。

今はCBPR(コミュニティを基盤とする参加型リサーチ)を活用して、抑圧や周縁化の対象となっている人たちと協働して調査を行い、抑圧や周縁化を生み出す社会やコミュニティの構造変革を目指す活動に取り組んでいます。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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僕の専門領域のソーシャルワークとは、貧困者、障害者、移民や難民、女性、LGBTQ+のように、社会の中で抑圧や周縁化の対象となっている人たちが、自分らしく生きられるように支援するものです。

こうした人たちが直面する課題の原因は、こうした人たちを生きづらい状況に追いやっている社会にあります。それを変えようとするのがソーシャルワークであり、当事者の人たちと協働して調査を活用して社会を変革するのがCBPRです。

◆先生が心がけていることは?

フェアトレード商品の購入

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「多様性尊重のためのSWに対するCBPRの有効性の検証」

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注目の研究者や研究の大学へ行こう!
どこで学べる?
先生の授業では
◆講義「多文化共生論」では

異文化の中で生活することを実感してもらうために、「バーンガ」というシミュレーションゲームをしてもらっています。アッと驚く結末なので、事前に中身を調べず、ぜひ体験してください。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業職種

(1) 福祉・介護分野における福祉・介護関連業務・関連専門職

(2) 大学・短大・高専等、教育機関・研究機関における教員・研究者

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等における職員

◆学んだことはどう生きる?

卒業生の中には、多様な問題を抱える在日アジア人女性たちに自信と雇用機会を提供するレストラン「SALA」を神戸に立ち上げたり、マザーハウスやシサム工房といったフェアトレード会社で店長をつとめたり、海外(米国、豪州など)でソーシャルワーカーとして活躍したり、まちづくりのNPO法人「なごみ」を立ち上げたり、アフリカでHIV陽性者の女性たちを雇用する会社を立ち上げた人などがいます。

中高生におすすめ

社会起業家に学べ!

今一生(アスキー新書)

既存の社会や生き方に違和感を持っている人、この本を読んでこんな生き方、働き方をして社会に貢献している日本の若い人たちがいることを知って、刺激を受けてください。


パレードへようこそ(映画)

マシュー・ウォーチャス(監督)

ストライキ中の炭鉱労働者支援に立ち上がったロンドンのLGBTQ+の若者たちと、ウェールズの炭鉱労働者の交流をつづる、実話をベースにした感動作。多様性尊重のための鍵が見つかるかも。


続・入門社会開発 PLA:住民主体の学習と行動による開発

プロジェクトPLA編 (国際開発ジャーナル社)

この本は少し古くて絶版になっているので、図書館で借りて読んでほしいのですが、本書の3分の2は途上国支援の2つの物語が紹介されています(残りの3分の1はその解説)。

どちらも住民主体の地域開発の実践事例ですが、一つは成功事例で、もう一つ失敗事例です。本当に住民のためになる国際協力を行うためにはやる気、技術、知識だけでは不十分で、そのベースにある考え方、価値観、態度が重要だということを、本書はわかりやすく気づかせてくれます。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

ボブ・マーリー。いわずと知れたレゲエの神様。リズムも好きですが、アフリカ人の解放を訴えるメッセージ性のある歌詞が大好きです。特に『Get Up, Stand Up』が好きです。抑圧されている人たちが自分たちの権利を取り戻すための応援歌です。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『エリン・ブロコビッチ』。シングルマザーが周りからの偏見と闘いながらも、社会正義のために巨額の公害賠償金支払いを被害者のために勝ち取る、ジュリア・ロバーツがアカデミー主演女優賞を取った、実話に基づく作品です。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

アメリカンフットボール


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