「企業」の値段づけは難しい。企業買収の会計処理の研究
時に何千億円も動く「買い物」、企業買収
皆さんのご家族や親戚の間で、一番高い買い物は何だったでしょうか。土地や家屋という答えが返ってくるのではないしょうか。それでも1億円を超える買い物は稀だと思います。
私が専門とする経営学や会計学では、時には何千億円もの値段がつく買い物を分析します。そこで売買されるのは、ズバリ「企業」です。昨今、グローバルな競争の中で企業が成長するための重要な戦略として、企業買収(M&Aとも呼ぶ)が選択されています。
買収金額-買収される企業の財産価値=「のれん」
私はこの企業買収の問題に対し、会計学の観点からアプローチしています。
想像してみてください。各企業は唯一無二の存在であり、買収する際に評価して値段をつけるのは、非常に難しいです。場合によっては、優れた企業を安く買えたり、そうでもない企業に高いお金を払ってしまったりします。
特に後者の場合において、買手が買収先企業の財産価値(純資産)よりも多くのお金を支払って買収した場合、その差額は、「のれん」として買手企業の財務諸表(企業の成績や状態を表す書類)に記録されます。
「のれん」の会計処理方法は各国で異なる
この「のれん」は、ポジティブに捉えれば、買収した企業の潜在的な価値と言えますが、ネガティブに捉えればお金の無駄遣いを表します。
この「のれん」の会計処理方法は、日本とそれ以外の国(例えば米国)では現在異なり、議論を呼んでいます。「のれん」に対する価値観や考え方が日本と他国では異なるのか、様々な観点から現在研究しているところです。
なんと、会計学の世界には、現在、企業が作成するサステナビリティ報告書を研究する領域があります。研究者らが、企業の社会的活動を多様なステークホルダーにいかに報告・開示するかを研究しています。
そのような研究成果が足掛かりとなって、企業の社会的活動に関する報告・枠組みが作られることにより、SDGsの17の目標すべてを達成しようとする企業活動を促進する効果があると思っています。会計は決して無味乾燥な数字の羅列ではなく、力強い数字や文章を伴って、個人・組織・経済・社会を動かすことができる仕組みなのです。
「のれんの会計処理をめぐる国際的駆け引きと会計基準設定における説得の探究」
◆主な業種
(1)金融
(2)会計事務所、監査法人
◆主な職種
(1)公認会計士、税理士