教育社会学

ダイバーシティ

性的マイノリティや障害者や外国人が生きやすい、まちづくりの実践


横田雅弘先生

明治大学 国際日本学部 国際日本学科(国際日本学研究科 国際日本学専攻)

出会いの一冊

学生まちづくらーの奇跡 国立発!一橋大生のコミュニティ・ビジネス

KF書籍化プロジェクト、横田雅弘、菱沼勇介、田中えり子、林大樹(学文社)

一橋大学の大学生が、国立市の古い団地のシャッター街と化した商店街を拠点に、商店街、行政、市民と、もがきながら活動した記録です。

参加者が多様な立場にあるのは当たり前で、利害は必ずしも一致しません。それでも、共通の目標を持てるようになると、そこには凄い力が生まれます。15年以上経つ今でも、経営を続けるまちづくりのベストプラクティスであり、私の「現場生成型研究」の原点です。

こんな研究で世界を変えよう!

性的マイノリティや障害者や外国人が生きやすい、まちづくりの実践

差別のない社会づくりのための研究

「人は自分がどう生まれたいかを選んで生まれてくるわけではない」という紛れもない事実が、私がダイバーシティを大切にする根拠です。そして、私を研究に駆り立てるのは、その事実と差別が横行する社会があまりにもかけ離れているという現実です。ですから、私の研究手法である「現場生成型研究」は、研究自体が目的ではありません。

とはいえ、私は研究職なので、「研究」は私の得意技です。差別のない社会をつくることを目的に、自分も「研究」という得意技を活かしたい。なぜなら、それが私の存在意義だからです。

「人生の物語を語る仮想の図書館」を学生たちと開催

私の最初の仕事は留学生のアドバイザーでした。留学生の支援にまちの方々と一緒に取り組むうちに、同じ日本人でも様々であり、外国人だけが異文化なのではなく、まちは異文化の宝庫だと気づきました。その後、人が「本」となって「読者」に人生の物語を語る仮想の図書館=ヒューマン・ライブラリーというイベントを知り、10年間ゼミの学生と開催してきました。

連携できるまちの仕組み

今取り組んでいる研究は、性的マイノリティや障害者や外国人など、社会で生きにくさを抱えている人たちが、自分たちだけで集まるのではなく、互いに共感・連携できるまちの仕組みをつくること。人は誰でも何らかのマジョリティであり、何らかのマイノリティです。

つまり、全てのまちの人が、どう生まれてきたかにかかわらず、自分の人生に誇りを持って生きられる社会をつくることに取り組んでいるのです。

中野ダイバーシティ・プラットフォーム
中野ダイバーシティ・プラットフォーム
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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私は、経済の問題にしても社会の問題にしても、その基盤は「誰もがその持てる力をありのままに発揮できるようになる教育」にあると考えています。それは、ジェンダーにしろ、国や民族にしろ、「人は自分がどう生まれたいかを選んで生まれてくるわけではない」という、ある意味で厳しい現実を理解することから始まります。しかし、一人ひとりがつながれば、できることも増え、可能性も大きくなります。私の研究は、そのための現場の仕組みづくりです。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「地域のダイバーシティ推進に関する現場生成型研究」

詳しくはこちら

 研究で立ち上げたWEBサイトはこちら 

どこで学べる?
先生の授業では
◆「異文化間教育学」のゼミでは

既存の知識を暗記させるのではなく、たとえテキストを使う場合でも、小グループで精読させ、ディスカッションの中で読み解かせています。内容だけでなく、その内容を導き出すプロセスも大切だと伝えています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう

横田先生のページ

研究所の設置・研究目的(明治大学国際・ダイバーシティ教育研究所)

ヒューマンライブラリーでの1コマ
ヒューマンライブラリーでの1コマ
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆学んだことはどう生きる?

企業もダイバーシティの重要性を認識し始めていますが、その感覚を肌で知っている経営者や社員は、まだ少ないと思います。私のゼミでヒューマン・ライブラリーの開催に「司書」として携わった学生は、「本」で取り上げられた多様な方々と直に接しています。その経験を自分に照らし合わせて、自分もまたダイバーシティの一部なのだと肌で知っています。人事や営業、マーケティングなどすべての領域で、それを生かして働いています。

先生の学部・学科は?

明治大学国際日本学部は、多様な専門領域が集まり、それらが「越境」していくことでダイナミックに日本や世界を見る目を養う場です。「知らない」初心者から「知っている」上級者になるという縦の学びだけでは、常に変化する現実を理解できません。異なる環境に入れば、過去の知見は役立たないどころか、妨げにもなります。上級者が初心者に「教え込む」権力的な構図ではなく、学習者が自分に引きつけて主体的に学ぶのが、この学部の魅力です。

中高生におすすめ

ワンダー 君は太陽(映画)

スティーヴン・チョボスキー(監督)

「人は自分がどう生まれたいかを選んで生まれてくるわけではない」ことを扱った映画です。それがもたらす葛藤と尊厳を描いています。


存在のない子供たち(映画)

ナディーン・ラバキー(監督)

「人は自分がどう生まれたいかを選んで生まれてくるわけではない」ことを扱った映画です。中東の貧民窟で生まれた少年が、「こんな世の中に、僕を生んだこと」を理由に両親を告訴した物語。俳優は使わず、すべて本当にそのような環境に育った人たちが演じています。過酷な現実を少しでも知ることにつながる映画です。

私にとって研究とは、「これはおかしいじゃないか」という憤りと、「こうなったら素晴らしいじゃないか」というロマンの結晶です。これまで異なった活動(留学生の相談、まちづくり、ヒューマン・ライブラリー)をしてきたと周りの人に思われることもありますが、私の中では一貫しています。これから社会に出ていくみなさんにも、ぜひこの軸となるものを持ってもらいたい。もちろん、それは最初から備わっているわけではありませんが、目をつぶって心のささやきに耳をすませると、そこに浮かび上がってくるもの。遠くに見える小さな一筋の光のようなもの。今回紹介した書籍や映画は、私のそんな原点を示すものです。


先生に一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

小学生の頃のフォークから、中高生のロックやブルース、大学生のジャズ、今はこれら全部とブラジル音楽。どんどん拡張していくのが自分でも不思議で、楽しいです。あえて一人挙げるなら、今はブラジルのシコ・ブアルキという人です。曲は優しく、味があり、そして詩人です。充実した癒しの時間をくれます。

Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『存在のない子供たち』と、ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』。後者はファンタジーがベースですが、あまりにもいろいろな要素が混じっていて凄いです。評価が分かれる作品らしく、学生に薦めたら、「私これだめ」とも言われました(笑)。

Q3.研究以外で楽しいことは?

新型コロナウイルスを機に、自宅に閉じこもって始めた膨大な家族の写真アルバムの作成。これは私の大切な終活だと気づきました。


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