実効性の高い政策を作るには、公務員の資質が重要
政府判断の良し悪しは、私たちの生活に直結
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の状況は一変しました。各国の状況が報じられることにより、政府の政策の善し悪しが私たちの生活や生命に直結することが再認識されたと思います。
しかし、このような「非常事態」だけではなく、私たちの日常において、政府のあらゆる政策は、多かれ少なかれ私たちの生活に影響を与えています。
また、それらの政策の実施にかかる費用は、私たちが納めた税金から賄われています。ですから私たちは、問題解決に対して効果が高い政策が採用され、それらが無駄なく効率的に実施されることを期待します。
科学的根拠をもとに政策を決める
それでは、問題解決に有効な政策は、どのようにして決められるのでしょうか。
もし、政策が、その決定に携わる人の思いつきや、影響力のある利害関係者の意向に沿って決められてしまったら、その政策は、問題解決の役に立ち、費用の割に効果が高く、人々に公平なものになるとは限りません。
そこで近年では、政策は科学的な証拠(エビデンス)に基づいて形成されることが望ましいと考えられるようになりました。これは証拠に基づく政策形成(Evidence Based Policy Making: EBPM)と呼ばれます。
英国や米国から始まったEBPMを、日本でも推進しようとしていますが、まだ道半ばです。そのため、国ごとに政策形成をめぐる環境が異なることをふまえ、EBPMを導入するにはどのような条件が必要なのかを探求しています。
政策を作る公務員の専門性が問われている
私はこれまで日本や英国の公務員制度を研究してきました。政策形成を担う公務員の専門性のあり方が、その問いへの解答を導くひとつの鍵になるのではないかと考えています。例えば、英国の公務員制においては、経済分析、社会調査、統計、オペレーショナルリサーチなどの専門職が政策形成のためのエビデンスを提供していますが、それらの専門性がどのように確保され、尊重されるのかなども、EBPMの実現に大きく影響すると考えられます。
「実効的なEBPM(エビデンスに基づく政策形成)の条件に関する比較研究」