外国語教育

発音

日本語訛は消せない!が、通じる英語の発音がある


近藤眞理子先生

早稲田大学 国際教養学部 国際教養学科(国際コミュニケーション研究科 言語コミュニケーション)

出会いの一冊

脳にいどむ言語学

萩原裕子(岩波科学ライブラリー)

言語学というと「外国語を勉強すること」と思われることが多いですが、実際は発音や文法、ことばの使い方、心理学、認知科学、脳科学、工学、医学、音楽、コンピュータ科学など、非常に広い分野に関わる総合的な分野です。言語学はどういうことを勉強する分野かを知ることができる本です。

こんな研究で世界を変えよう!

日本語訛は消せない!が、通じる英語の発音がある

ネイティブスピーカーのように話したいが

外国人と英語で話したことはありますか。その時ちゃんと通じましたか。英語に限らず外国語の発音は難しいです。私たちは外国語を学ぶ時、ネイティブスピーカーのような発音で話せるようになりたいと思いますが、最近の研究では、母語の訛をなくすことはほぼ不可能だということがわかっています。

いろいろな国の人に通じる発音が大切

また、ネイティブスピーカーのように話すことはあまり重要ではなく、母語訛があっても、いろいろな国の人に通じるわかりやすい発音のほうが大切だということもわかってきました。

特に英語は母語話者よりも、外国語として英語を話している人口のほうが圧倒的に多いです。つまり、どの国の人にも自分の伝えたいことが理解される発音の方が大事です。でも、完全な片仮名で話してしまうと、通じません。

母語訛があっても通じる発音を探る

そこで、母語の訛がどの程度強いと通じないのか、どういう発音の間違いは意思の疎通の妨げになって、どういう間違いはあまり妨げにならないのか、外国語を使ったコミュニケーションで、母語訛があっても通じる外国語の発音とは何かを探る研究をしています。

現在、具体的には、日本語話者と英語話者とフランス語話者が、それぞれ互いの言葉を学んだ時に、母語の訛があっても、相手が誰でも通じる英語、通じる日本語、通じるフランス語の発音の基準を、科学的に解明することを目指しています。また、それを助けるためのコンピュータ学習ソフトの開発も行っています。

Electromagnetic Articulography (EMA: 電磁的調音観測機)という舌と唇の動きを計測する機械を使っての実験(NTT厚木研究開発センター持田研究室にて)
Electromagnetic Articulography (EMA: 電磁的調音観測機)という舌と唇の動きを計測する機械を使っての実験(NTT厚木研究開発センター持田研究室にて)
学会でフランスの共同研究者たちと。
学会でフランスの共同研究者たちと。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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外国語を勉強することは、簡単ではありません。よく言われる留学も一つの方法ですが、誰もが留学できるわけではなく、留学したから発音が良くなるわけでもありません。それよりも普段の学校の授業をどんどん活用すべきだと思います。

特別の教育を受けなくても、誰でも普通に努力をすれば、学校の授業だけで外国語が使えるようになる環境を提供できるように、わかりやすい、学びやすい、発音のコツを教えられる教材づくりを目指しています。 

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「効果的音声コミュニケーションのためのL2音声自動評価および学習支援システムの開発」

詳しくはこちら

注目の研究者や研究の大学へ行こう!
どこで学べる?
先生のゼミでは
◆ゼミ「Language and Communication:Phonetics Phonology」では

言語の音声とその習得に特化して教えています。どうして英語のLとRの区別は難しいのか、逆に英語話者はどうして「居た」と「行った」の区別ができないのかなど、音の問題について科学的に見つめています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
研究室の学生たちと。現在8か国から学生が来ています。
研究室の学生たちと。現在8か国から学生が来ています。
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1) 高校・専門学校の教員

(2) 官庁・自治体・国際機関の職員

(3) 様々な一般企業

◆学んだことはどう生きる?

卒業後の進路は様々ですが、専門を生かした分野では、外国語教育関係の職業に就く学生が毎年一定数います。海外で日本語を教えている卒業生もいます。必ずしも外国語を教える教員だけではなく、教材作成や教育の方針を決める部署や省庁に勤めている卒業生も少なくありません。最近増えてきたのが、教育関係のソフトなどを製作する会社で、システムエンジニアやプログラマーとして働いている卒業生もいます。

先生の学部・学科は?

早稲田大学国際教養学部は、全科目英語で授業を行っています。学生の出身国も様々で、母語も異なるので、同じ言語の問題を扱っても、いろいろ異なる解釈、解決法などが出てくる、言語学を学ぶにはとても面白く恵まれた環境です。

細かい日本語の発音や表現の違いについて英語で説明するなど、ちょっとした挑戦だと思います。普段当たり前だと思っていたことが、母語が変わると難しい、またはその逆など、日々新しい発見があります。

中高生におすすめ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子(朝日出版社)

この本は歴史学者が高校で行った授業をもとに書かれたものなので、複雑な近代史がわかりやすく書いてありますが、実は内容は奥が深いです。一番大切なのは、なぜ私たちは学校で歴史を学ぶのか、その重要性がわかります。これから社会の中心となっていく中高生の皆さんに、是非読んでいただきたいと思います。


日本語のニュアンス練習帳

中村明(岩波ジュニア新書)

私たちが普段、話したり書いたりするときに無意識に使っていることばや表現、文字の微妙な違いを深く、でもとてもわかりやすく解説している本です。

各項目2-3ページにまとめてあるので、とても読みやすく、でも自分の日本語の拙さにハッとさせられます。読むと背筋が伸びます。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

食物科学か地学。体づくりや健康の基本は、食物です。栄養素が整っているとなぜどんな食べ物も美味しいのか、カビなどが体の害になったり味を良くしたりする原理は、摩訶不思議です。もし機会があれば、食物のことや栄養について、基礎から勉強してみたいと思います。

地学は、高2まで真剣に進学を考えていましたが、最終的にはまったく異なる分野に進んでしまいました。今でも岩石や地層などを見るのが好きです。特に、今は音声を専門にしていて、毎日一秒の百分の一、千分の一という長さの音を扱っているので、何百万年、何億年という気の遠くなる長さで現象を考えられるのが羨ましいです。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

一番行ってみたい、何年か住んでみたいところは、中東の国々です。まだ行ったことはありませんが、写真などで見ると街並みがきれいで歴史や遺跡が素晴らしく、何より中東の食べ物が大好きです。レバノン・シリア・ヨルダン料理などの本は沢山持っています。ただ、今しばらくは行けそうもないのがとても残念です。

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

 コマーシャルと映画のエキストラ。ジャムのコマーシャルでバスケットボールの試合の観客や、怪獣映画の“逃げ惑う民衆”をやりました。大竹しのぶさん主演の『ああ野麦峠』の製糸工場の女工役も抽選で当たったのですが、地毛で髪が結えることが条件で、残念ながら髪の毛の長さが足りずに、あきらめました。

Q4.研究以外で楽しいことは?

和太鼓。もう8~9年位習っていますが、まったく上達していません。でも楽しいです。ドレミの音階がなく、リズムだけなので、一度音を外すと戻るのが難しい、奥が深い楽器です。櫓の上で太鼓を叩くのが夢です。

Q5.会ってみたい有名人は?

さかなクン。あの魚についての知識量は半端でないと思います。相当勉強をしているのだろうと思いますが、一般の人たちが興味を持ち、よくわかるように説明できるのは素晴らしいことだと思います。少し前にコマーシャルで、サックスを吹いたのには感動しました。絵も上手ですね。あと、さかなクンの声を分析してみたい。


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