米中の自由貿易の可能性を追求する
高関税をかけあう貿易戦争
2018年から2019年にかけて、米国と中国が関税(外国から物を買う時に自国に納める税金)を高め合う「米中貿易戦争」が起こりました。これは国際経済学における「最適関税の理論」によって説明できるとされてきました。
例えば、米国が中国への関税を高めると、より多くの関税を支払うので損ですが、米国の人が中国の物をあまり買わなくなり、値段が下がるので得です。米国は、損と得がバランスするところで関税を決めるのが最適です。
米国が最適関税をかけると、米国に物を売っている中国は損をします。同様のことが米国と中国を入れ替えても言えますので、米中が最適関税をかけ合う貿易戦争の状態は、お互いに自由貿易をしている状態に比べて、両国とも損です。
それなのになぜ貿易戦争が起こるのかというと、各国が外国への悪影響を無視して自国の利益だけを考えると、最適関税をかけたくなるからです。
関税の高め合いは無意味だった可能性が
私が今やっている研究は、各国にとっての最適関税がゼロ、つまり自由貿易になる可能性を追求することです。その秘訣は、経済成長を考えることです。
もし米国の関税引き上げが輸入を割高にして米国の経済成長を低めるならば、米国の最適関税は経済成長を考えない時に比べて低くなり、もしかしたらゼロになるかもしれません。もしそうならば、米国や中国が関税を高め合っていたのは、理論的にはナンセンスかもしれないのです。
「大国にとって最適関税はゼロとなり得るか:動学的視点からの再考」
村田安寧
日本大学 経済学部 経済学科/経済学研究科 経済学専攻
独占的競争モデルにおける効用関数の新しい特定化と、その空間経済学・国際貿易論への応用を研究しています。研究成果が最も世界的に知られている日本人国際経済学者です。
早稲田大学政治経済学部経済学科の特色は、新政治経済学に強みがあることです。新政治経済学では、政治的な現象をゲーム理論(戦略的相互依存関係を分析する理論)と統計学を用いて説明・評価します。政治学科と経済学科の両方から、多くの学生がそのような研究に取り組んでいます。それ以外にも、経済学科には、経済学の理論・応用の多岐にわたり、ワールドクラスの研究者が在籍していますので、好きな研究をすることができます。
続 世界珍食紀行(コラム)
日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所
アジア経済研究所は、主に開発途上国の研究を行う研究所です。本コラムは、同研究所のたくさんの研究員が研究滞在先でどのような「珍食」を食べ、何を感じたかを楽しく紹介したものです。本コラムは、世界は多様性に満ちており、その多様性こそが互恵的な国際交流を生み出す源泉であることを感じさせてくれます。
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Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? オーストラリア。アメリカに似てカジュアルな雰囲気を持ちながら、アメリカほど業績を挙げるプレッシャーがきつくないから。 |
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Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『セッション』。道を究めることの難しさ、師匠を超えていくことの尊さを教えてくれます。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? 早稲田大学外政学会。国際関係論を研究するサークルで、志の高い学生が集まっていました。だいぶ前に解散してしまったようですが、復活させたい学生がいれば教員として力になりたいです。 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? 週2回のジョギング。心身の健康の維持のため、無理しない程度にまったり走っています。 |