法律だけで解決できない契約の問題。では、契約とは何か
常に様々な争いの可能性が
私が研究しているのは、契約に関する法的なしくみです。「何を契約したといえるか」という問題だと言っても良いです。そんなこと、契約を結んだ人に聞けばいいんじゃないか、と感じるかも知れませんね。けれども、そう簡単ではありません。
当たり前のことですが、契約を結ぶためには、二人以上の人がいなければなりません。そうすると、二人のうち、一方が約束を守るように迫ったのに対して、他方は「自分は騙されて契約をしたのだ」と言うかもしれません。あるいは、契約を結んだ後に、二人とも予想しなかったことが起きることもあるでしょう。
六法全書ですべての問題は解決できない
意外に思われるかもしれませんが、これらの問題は、六法全書を見るだけですべて解決することができるものではありません。法律は、すべてを定めているわけではないのです。
法律に定めがない問題に取りかかるときには、「契約とは、そもそもどのようなしくみなのか」という見通しが必要です。より大きな視点からみれば、それは、「どのような解決が正義に適うか」を探究することだともいえるでしょう。
法の役割は「世界を支える」こと
法の役割は、普通の場合には「世界を変える」ことではありません。だからといって、夢のない話ではありません。
契約の問題一つをとってみても、人間が協力して何かを実現するためには、約束をして、これを守るしくみが不可欠です。法の役割は、「世界を支える」ことであり、法学は、何らかの意味で、人間が生きることと常に関わっていると感じます。
「契約の履行段階における信義則の基礎的研究―契約法理の構造化への一視点」