広まる自国第一主義、問われるWTOの貿易紛争処理制度
ジャパンバッシングに憤りを感じた高校時代
私が研究しているテーマは、貿易や投資をめぐる紛争を解決するための国際法の仕組みです。
私が最初に貿易紛争に関心を持ったのは高校生の時です。当時(1990年代初頭)、日米貿易摩擦の激化を背景に、アメリカで日本車がよく売れるのは日本がアンフェア(不公正)だからだといったジャパンバッシングがアメリカで巻き起こっていました。
アメリカの労働者たちが日本車を叩き潰すニュース映像を見た高校生の私は、「日本車の方がアメリカ車よりも優れているからよく売れるのに、非難するのはおかしい」と強く憤っていました。
大学時代、貿易紛争の解決に興味を持つ
大学生になって、国際法模擬裁判に参加し、ルール(国際法)に基づき紛争を解決するという仕組みに興味を持つようになりました。
ちょうどそのころ、世界貿易機関(WTO)が成立しました。WTOは貿易に関する国際機関ですが、ルール(WTO協定)に基づき貿易紛争を解決する紛争処理制度を備えています。
WTO紛争処理制度は、日米自動車貿易紛争を解決に導くなど、大きな注目を集めました。高校時代の記憶がよみがえり、迷うことなくWTO紛争処理制度を卒業論文のテーマにしました。
正念場に立つWTO紛争処理制度
WTO紛争処理制度は、今でも私の最も重要な研究テーマです。米中貿易摩擦や日韓貿易紛争など、近年貿易紛争が増加しています。自国第一主義が強まる中、WTO紛争処理制度は貿易紛争にフェアな解決をもたらすことができるのか、今まさに正念場を迎えています。
国際紛争を平和的に解決すること、特に貿易や投資をめぐる紛争について、一方的な非難や制裁ではなく、ルールに基づき相互に受け入れ可能な解決を見出すことに対して貢献ができると思います。
「国際経済紛争処理制度における国際法の原則及び規則」
◆「書斎の窓」(有斐閣)
(主要な国際紛争処理機関の1つである常設仲裁裁判所(PCA)に勤務していた時の経験をまとめたエッセイです。高校生にも興味を持ってもらえると思います)
第1回「投資仲裁の舞台裏」
第2回「仲裁手続のハイライト」
第3回「キャリアとしての国際仲裁」
◆学んだことはどう生きる?
社会科学部には学際性という特徴があるので、ゼミ生は専門を生かした職業に就くというよりは、様々な業種、職種に就職しています。国際ビジネスに携わる人も多いです。
早稲田大学社会科学部は、社会の様々な問題を学際的に研究することを目的としています。私の専門とのつながりでいえば、貿易紛争や投資紛争の法的な問題を学ぶだけではなく、社会的、政治的、経済的背景なども含めて学ぶことを目指しています。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? スイス。素晴らしい自然と温かい人々。国民性が日本人と少し似ていると思います。 |
|
Q2.一番聴いている音楽アーティストは? Mr.Children。好きな曲は『終わりなき旅』です。 |
|
Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 最近の映画では『ボヘミアン・ラプソディ』です。 |
|
Q4.熱中したゲームは? ゲームと言えるかどうかわかりませんが、毎日『デュオリンゴ』という言語学習アプリを楽しんでいます。 |
|
Q5.大学時代の部活・サークルは? 国際法サークルで、国際法模擬裁判を行っていました。 |