プラズマエレクトロニクス

細胞の運命はプラズマで変える!非侵襲的・可逆的な細胞制御への挑戦


清水一男先生

静岡大学 工学部 電気電子工学科 エネルギー・電子制御コース(総合科学技術研究科 工学専攻)

どんなことを研究していますか?

細胞の老化やがん化をどう制御するかは、創薬や再生医療の根幹を成す課題です。従来は薬剤投与や遺伝子導入により対応してきましたが、副作用やストレス、可逆性の問題から限界がありました。

本研究室では、「生物の運命は化学でなく、プラズマで変えられる」という発想のもと、マイクロプラズマが生み出す低濃度の活性分子(RONS)を用いた非侵襲的・可逆的な細胞制御の実現を目指しています。これは、細胞に薬を与えるのではなく、“光と空気から生まれた分子”で働きかけるという、全く新しいアプローチです。

具体的には、老化した細胞を排除したり、細胞周期を再構成したり、さらにはがん細胞の抑制や免疫応答の変化を引き起こすなど、物理的刺激によって細胞の運命をコントロールする手法の確立を目指しています。その鍵となるのが、RONSを分子スイッチとして濃度や時間を精密に制御する技術です。

「医工融合型」の挑戦的研究

本研究は、プラズマ物理・細胞生物学・分子医学といった複数分野の知識が交差する「医工融合型」の挑戦的研究であり、まだ世界でも理解が進んでいない未踏の領域に挑んでいるのです。「細胞を壊さず、機能だけを調整する」―そんな未来の医療技術を化学や遺伝子に頼らず、“光”で切り拓く。そんな研究に魅力を感じる諸君の挑戦を歓迎します。

参考文献 F. Begum, J. Kristof, A. M. Jahangir, A. H. Sadiq, M. Hasan, S. Kinoshita, K. Shimizu, “Exploring the Role of Microplasma for ControllingCellular Senescence in Saccharomyces cerevisiae”, Molecules 2025, 30(9), 1970, DOI: 10.3390/molecules30091970, (Apr., 2025).

清水研のアクティビティ(国際会議・バーベキューなど)
清水研のアクティビティ(国際会議・バーベキューなど)
この分野はどこで学べる?
学生はどんなところに就職?

一般的な傾向は?

●主な業種は→電機メーカー、電力会社、東海地域の自動車メーカー、バイクメーカー、自動車関連電装メーカーなど

●主な職種は→エンジニア、変わったところでは航空会社の総合職など

●業務の特徴は→室内空気浄化、プラズマ美容に関する開発など

分野はどう活かされる?

制御や回路設計もありますが、医学部との連携を通して、様々な分野への知見を広げてもらいたいとも考えています。大気圧プラズマは産業の中では材料分野と同じく、川上に位置するので、半導体、空気清浄、医療・バイオなど広範囲にその応用分野が見込まれます。就職には、その知見を活かしながらも特定の狭い分野に絞らずとも、自らの好奇心で考えてもらいたいと思います。

先生の学部・学科はどんなとこ

現在の科研費では、プラズマ物理の基礎課程を探るような研究は、なかなか採択が困難です(特に地方大学の場合)、そのため、独自の特色を出した事業化まで含めた研究開発として医療応用、農業応用が盛んに研究されています。

私の研究室では、大気圧下であっても、わずか数百ボルトで生成可能な大気圧マイクロプラズマを研究しています。従来の大気圧プラズマの駆動電圧が数千~数万ボルトに対して、低い電圧のため、半導体デバイスでの生成や制御が可能となっています。そのため、日本国内は元より新興国からの製品化や応用などの照会があります。しかしながら大学であって企業ではないので、シミュレーションによるプラズマ物理の状態などを合わせて行っています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先生からひとこと

皆さんは研究にはお金が必要という意識はまだ持っていないと思います。その意味では東大など旧帝大が圧倒的に有利であるのは間違いありません。逆に地方国立大学で優れた先生はhttps://kaken.nii.ac.jp/でわかりますので、それらも調べてください。ただ世界的な産業分野も大きく変化していますので、常に自分なりに勉強する必要性を考えていっていただきたいです。

先生の研究に挑戦しよう!

プラズマを小動物に照射しての変化、室内の微生物や化学物質除去、流体などの制御観察をするため、電気電子にこだわらず医学、薬学、バイオ系や流体工学など様々な分野にまたがることを意識して研究しています。

留学生(ヨーロッパ、アフリカ、アジア)が過半数であり、研究室でのゼミは原則、英語で行います(私も客員教授としてフランス等の大学で集中講義など行っています)。皆さんにはブロークンでも喋って、コミュニケーションできる能力も養っていただきたいです。

興味がわいたら~先生おすすめ本

トコトンやさしいプラズマの本

山崎耕造(日刊工業新聞社)

プラズマとは何か、自然界にどのようなプラズマがあるのか、さらには、プラズマが産業にどのように使われているかをやさしく説明している。プラズマエレクトロニクスは、プラズマを用いて半導体集積回路や太陽電池を作る方法を研究する学問領域。この本では、どんな製品を作るのにプラズマが使われているかが書かれている。身近にある様々なモノがプラズマの助けで作られていることがわかって驚くかもしれない。