自分がどんな姿をしているか、どんな性格か、どんなことが得意で何が苦手か、これまでどんな経験をしているかなど、私たちは「自分」について多くのことを知っています。「自分はどんな人か」、言い換えれば「自己像」は、子どものころから日常的な経験と周囲とのやりとりの中で明らかになり、積み上げられていくものです。
私は、このような子どもの「自分づくり」の過程を、親子の会話などことばによる自己表現の分析を通して研究しています。最近は、家庭での会話から対象を広げ、小学校で子どもが自己表現をする日記・作文の指導、スピーチ活動や授業でのやりとりなども研究の対象としています。
「自分づくり」は学びや人間関係の基礎
進路指導や就職活動で「自己分析」が求められるように、自分を知ることは社会に出ていく過程でも重要になります。日常生活の中で子どもたちが「自分づくり」をする過程を理解しながら、周囲の他者(家族・先生・友人)とのやりとりを意味づけていくことが私の研究の目標です。
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「21.教育・心理」の「87.教育心理学、社会心理学、実験心理学」
一般的な傾向は?
●主な職種は→小学校教員
分野はどう活かされる?
多くの卒業生が゙学校で子どもたちの教育に携わっています。特に小学校の先生になることが多いです。子どもの心や行動、発達を理解することは、教員としてとても重要です。私のゼミでは、この点に関して深く学び、また、実際に子どもたちとのやりとりをもとに考える経験もしてから現場に出ていくことになります。
企業で、また、公務員として働くことを選択した卒業生もいます。心理学の学びは、このような職場ですぐに役立つことばかりではありません。しかし、心理学のものの見方や、人間の多様性を理解できていることは、他人の行動や考え方を理解し、適切なコミュニケーションを取りながら業務を進める上で重要であると思います。
大阪教育大学(教育学部・学校教育教員養成課程)は、教員(学校の先生)の養成を主な目的にしています。様々な子どもたちに接し、それぞれに合った形で授業や指導ができるためには、授業で教える内容や教え方だけでなく、子どもの発達や様々な関係(家族や友人間の関係)のありかたを適切に理解することも必要になります。「学校教育コース」には、大きく分けて3つの分野(専門領域)があり、その1つとして心理学に関する様々な学びを深めることができます。いずれの分野でも、小人数のていねいな指導がなされています。
私が研究している親子の会話や子どもの日記のように、心理学(教育心理学)の研究は、私たちが普段していることを対象にすることが少なくありません。しかし、普段していることだからこそ、あえて分析・説明したり、その意味を考えたりすることが難しいところもあります。そうした、「日常」のことがらを、ていねいに見直して理解してみたいときには、心理学にかかわる学部・学科を選択肢に入れてみてください。
子どもの日常の様々な経験ややりとりから、その発達を考えることができます。例えば、赤ちゃんや幼い子どもたちの様子を注意深く見て、どんなことに興味を持つのか、周囲の家族とどんなやりとりをしているのかをまとめてみましょう。長期にわたって見ていくと、その様子が変化する育ちの過程が見えるかもしれません。
小学校の時のテストや日記を大切に保管しているという人は、その分析はどうでしょうか。心理学では、小学生の時期の子どもたちの考え方や理解には、高校生の皆さんとは異なる特徴があるという議論もあります。テストの間違い(たとえば計算の間違い)を見つけたら、どんなことがわかっていなかったのかを具体的に考えてみてください。
どうやってその間違いを直してあげたらよいか、小学生にわかるような説明を考えてみると、高校生にとっては当たり前の「計算をする」という手続きを子どもたちが身につける過程の一端を理解できるかもしれません。また、小学校・中学校で行われている「全国学力・学習状況調査」の過去の問題や詳しい調査結果が、インターネットで公開されています(国立教育政策研究所)。子どもたちにとってどんな問題が難しいのかを調べることで、子どもたちの考え方や理解の特徴を考えることができます。
日記を持っている人は、自分が何を書いていたのか、自分らしい見方や考え方がどんなところに表れているかを考えてみると、子どもの「ものの見方」、そしてあなたの「自己像」がどのようにつくられてきたかを理解することができるでしょう。