日本酒の「物語」をいかに伝えるか。海外販路拡大を目指して
「文化製品」ゆえに他国の市場に浸透しづらい
日本酒の海外での浸透メカニズムについて研究しています。日本酒は、日本の文化や伝統・歴史に埋め込まれた「文化製品」です。文化製品の他国市場への浸透を考えた場合、「差別化の容易性」と「大衆化の困難性」が指摘できます。
すなわち、異文化経験としての日本酒消費は、現地で馴染みのあるアルコール飲料と差別化しやすい反面、市場に浸透する真の大衆化には、文化製品ゆえの困難性を伴います。
国境を越えた異文化圏の人々は文化製品に対する適切な情報を持ち合わせておらず、商品選択が困難となるからです。そのため、製品に付与される「情報」の観点が極めて重要になります。
日本酒の歴史や物語にも価値
日本酒の消費においては、単にアルコールという液体を超えて、その液体に付与される様々な情報を消費している側面があります。
味わいや風味などの「機能的価値」以上に、生産地、作り手(杜氏)、原材料、(食べ物との)ペアリング、その企業の歴史や物語などの「意味的価値」に重きが置かれて消費されます。
そういった観点からも、文化的製品である日本酒の海外展開を、「国境を越えた情報の流通」という観点から研究をしています。
日本酒の国内市場は縮小。販路は海外へ
現在、日本酒の国内市場は縮小しており、海外市場に販路を拡大したいと考えている酒蔵は数多くあります。そういった海外への販路開拓を狙う酒造会社に対し、海外展開のための指針を少しでも提供する研究成果を挙げることができればと思います。
日本の伝統と文化に埋め込まれた日本酒が異なる文化世界の中で普及していくメカニズムを解明することで、日本酒の魅力を世界に正しく発信する一助になればと思います。
「日本酒の海外市場での浸透メカニズム」