世界農業遺産 注目される日本の里地里山
武内和彦(祥伝社新書)
国連食糧農業機関は、環境の変化に適応し何世代にも渡り継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産システムを世界農業遺産(GIAHS)として認証しています。GIAHSは近代農業が主流となるなかで失われてきた、農業と自然、文化、生活との結びつきを再評価しようという試みで、本書はGIAHS設立の経緯や各地のGIAHSサイトについて紹介しています。各地のユニークな農業を知ることができ面白いです。
またGIAHSに認証されているような伝統農業やその対極と言える近代農業には、それぞれ一長一短があります。持続的に食料を生産し続けるには、どちらか一方がよいわけでなく、環境、経済、文化など多角的な視点から農業のあり方を考えていく必要がありますが、本書はこのような多角的な視点を持つ大切さも教えてくれます。
有機農業の普及には、農業者が生み出す優れた農法が不可欠
環境負荷を低減した有機農業に注目
近年、環境問題への関心が高まっています。農業分野においても環境負荷を低減し持続可能な食料生産への移行が求められており、化学肥料や化学農薬を使用せず、できる限り環境負荷を低減した農業である有機農業が注目されています。
有機農業を普及していくために、私が特に重要と考えているのは農業者の有する知識です。農業は、気候変動や土地条件など自然環境に影響を受けやすい特徴があり、そのため農業者が安定的に高品質の農作物を生産するには、地域の環境に対応した生産知識が不可欠です。
ブドウのユニークな有機農法に衝撃
有機農業の場合、農薬や化学肥料を使わないため病害の影響を受けやすく、また収量も不安定になりやすいため、特に優れた知識が必要です。実際、なかなか収量が安定しない場合も少なくありません。
その一方で農業者が自らの環境に適合した優れた農法を編み出し、素晴らしい成果を挙げている事例もあります。私が調査した事例では、農薬を使わなければ栽培が難しいとされるブドウを有機農業基準で栽培している方がいました。かなりユニークな栽培方法を自身で生み出し実践しており、その方法に衝撃を受けたのを覚えています。
優れた知識はどのように創造されるのか
有機農業を普及するには、有機農業者が自ら、地域の自然環境や自身の栽培作物に適合した農法(知識)を生み出せることが大事だと考えています。私は優れた有機農業者が、優れた知識をどのように創造しているのか、またその知識が地域にどのように普及しているのか、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。
「有機農業における生産知識のナレッジマネジメント構造の解明に関する研究」
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 食品・食料品・飲料品

