新領域法学

養育費政策

養育費回収の制度がない日本 欧米の政策に学ぶ


宮下摩維子先生

駿河台大学 法学部

出会いの一作品

エリン・ブロコビッチ

スティーヴン・ソダーバーグ:監督

この映画は、巨大企業を相手に、史上最大級ともいわれる集団訴訟に勝利した実在の人物、エリン・ブロコビッチの活躍を描いた作品です。

巨大企業であるPG&E社は、とある公害物質を垂れ流しにし、周辺住民にはガンをはじめとする深刻な健康被害が出ていました。この事態を巧妙に隠そうとする企業に、法律の知識がないのにも関わらず、持ち前のまっすぐな正義感で立ち向かっていくエリンの姿には、いつも励まされます。その一方で、エリンの相棒ともいえるベテラン弁護士のベンの法律の知識や実務家としても経験に基づく活躍なくしては、このサクセスストーリーはありえません。

正義を実現するとはなにか、現実の社会で苦しむ弱者、多くの場合は法律の知識を持たない市民のために法ができることは何かを考えさせてくれる作品です。

こんな研究で世界を変えよう!

養育費回収の制度がない日本 欧米の政策に学ぶ

子どもは養育費を受け取る権利がある

この記事を読む皆さんはまだ子ども。家族や先生などの大人に守られて生活をしていることでしょう。法律では子どもを「未成年者」といい、子どもを守るためのたくさんのルールがあります。その一つが「扶養義務」です。

両親が離婚をした場合、子どもは一緒に暮らしていない親から、衣食住や教育などのためのお金である養育費を受け取ることができます。一緒に住んでいなくても、親には「扶養義務」があるからです。しかし、日本ではこの養育費が支払われないことも多く、またその回収も難しく、大きな問題となっています。権利があるのに、それを受け取ることができないというのは、大きな問題です。

欧米では行政が回収を手伝ってくれる

私の研究は、アメリカやイギリス、北欧諸国の制度を調査して、日本にどのような制度を取り入れたらよいか、検討するものです。アメリカでは行政が養育費回収を手伝う制度がありますし、北欧諸国では行政が未払いの養育費を立て替え、かわりに回収をしてくれる制度があります。

日本では、明石市とさいたま市が、北欧諸国の制度に似た「養育費立替支援事業」を開始しました。しかし、まだ自治体レヴェルでの取り組みに過ぎません。日本が国として、どのような制度を作っていくのか、考えていく必要があると考えています。

どんな家庭環境でも夢を諦めない社会を

もちろん、法律を作るだけでは不十分です。「養育費は必ず払わなくてはいけないものだ」という認識を、私たちの社会が持つことも大事です。さらに、家庭という非常にプライベートな場に国家がどこまで介入すべきかということも考えなくてはなりません。

乗り越えなければならない問題はたくさんありますが、この研究の先に、未来ある子どもが、どんな家庭環境でも自分の夢を諦めない、そんな社会の実現に少しでも貢献したいと考えています。

Royal Court of Justice(イングランド・ウェールズの最高裁判所)。イングランド・ウェールズだけでなく、スコットランドや北アイルランドまでをも管轄する最高裁判所が2009年にできました。
Royal Court of Justice(イングランド・ウェールズの最高裁判所)。イングランド・ウェールズだけでなく、スコットランドや北アイルランドまでをも管轄する最高裁判所が2009年にできました。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

大学時代に、BBSというサークルに所属しボランティア活動をしていました。BBSとはBig Brothers and Sistersの頭文字をとった略称で、様々な事情で非行に走ったり、生きづらさを抱える子どもたちに、大人ではないお兄さん、お姉さんという年齢の近い立場から、苦しむ子どもたちが立ち直るのをサポートしていく活動で、法務省の管轄下にあり、全国に拠点を持っています。この活動を通して、私が大学に進学するまで知らなかった、多様な境遇にいる子どもたちの存在を知りましたし、そうした子どもたちに私ができることは何かを考えるようになりました。

また、大学院時代に、イギリスのロンドンにあるUniversity College Londonという大学に留学したことも大きく影響しています。この大学でFamily Law(家族法)という授業を履修し、イギリス家族法の大家であるMichael Freeman教授の指導を受けました。イギリスには、様々な人種や国籍の子どもがいます。多様な文化的な背景や異なる家庭環境で育っていることを前提に、そうした子どもたちの利益を最優先に考えることをイギリスで学びました。

Royal Court of Justice(イングランド・ウェールズの最高裁判所)前で
Royal Court of Justice(イングランド・ウェールズの最高裁判所)前で
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「養育費政策に関する比較法・比較政治研究」

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◆主な業種

(1) 法律・会計・司法書士・特許等事務所等

(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

(1) 法務、知的財産・特許、その他司法業務専門職

◆学んだことはどう生きる?

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中高生におすすめ

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

哲学でしょうか。法律を研究するということは、何が正義に叶うかを考えることです。法の在り方を根本から検討してみたいなと思います。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

イギリスです。大学院時代に、ロンドンにあるUniversity College Londonという大学に留学をしました。新しい文化に触れ、多様な文化的背景を持つ人と知り合ったことで、世界が大きく、でも近しくなったように感じています。

Q3.感動した/印象に残っている映画は?

(1)『キューティ・ブロンド』(2001年、ロバート・ルケティック:監督)
恋人を追いかけて、名門ハーバード大学のロースクールに進学した主人公エルが、慣れない環境で奮闘するお話です。元気のないときに見ると、前向きになれます。

(2)『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年、ミミ・レダー監督)
『RBG 最強の85才』(2018年、ジュリー・コーエン、ベッツィ・ウェスト:監督)
どちらも同じ女性、85歳で現役の最高裁判所判事としてアメリカで広く知られる(当時)女性ルース・ベイダー・ギンズバーグを描いた作品です。女性が弁護士になることが難しかった時代に、女性やマイノリティへの差別撤廃に貢献した彼女の人生を描きます。アメリカでは、Tシャツやマグカップといったグッズまで作られるほどの知名度と人気を誇ります。

(3)『レ・ミゼラブル』(2012年、トム・フーパ―:監督、原作:ヴィクトル・ユゴー)
1815年、フランス。貧しさゆえに、姉の子どものためにパンを一切れ盗んだことで投獄されていた男ジャン・バルジャンの半生を描く物語です。19年もの長きにわたる投獄生活ですっかり社会への憎悪に支配されていたジャン・バルジャンですが、一人に司祭に暖かく迎え入れられたことで改心し、「正しい人」として生きることを決意します。しかし、そんなジャン・バルジャンを執拗に追うジャベール警部、養子となったコゼットなど様々な人の運命を巻き込んで進んでいく物語です。古くから存在する貧困と法の支配のあり方、一度罪を犯した人の更生など、法を学び、法がどうあるべきかを考えるうえで様々な視点を与えてくれるでしょう。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

趣味の社交ダンスに熱中しています。

Q5.好きな言葉は?

不退転でしょうか。心に決めたことを最後までやり抜く強さを持っていたいと思っています。

ロンドン 法律専門書店にて資料収集
ロンドン 法律専門書店にて資料収集

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