金融・ファイナンス

決済通貨

米ドル?日本円? 貿易で使う通貨はどう選ぶ?


吉見太洋先生

中央大学 経済学部 国際経済学科

出会いの一作品

笑う科学 イグ・ノーベル賞

志村幸雄(PHPサイエンス・ワールド新書)

ユーモアに溢れた研究に贈られるイグ・ノーベル賞に関する本です。日本人受賞者にもフォーカスされています。私の専門とする経済学と直接関係がある訳ではありませんが、自由に学ぶことや探究することの楽しさをぜひ感じて欲しいと思います。

”科学は本来、自然の摂理を明らかにしようとする人間の知的好奇心に根差した「学問」として発生したもので、それ自体、「役に立つ、役に立たない」といった価値観に拘束されない「自由」の下で取り組まれるべきものなのだ。”(同著より引用)

中高生の皆さんは進路を考える際に、自分がやりたいことが将来役に立つか(お金になるか)といったことに悩まされることが多いと思います。でも変化の激しいこの時代に、その選択が本当に将来役に立つのかは誰にも見通せません。ぜひ自分が素直に面白いと思えているか、心が震えているかを大切にしてください。

こんな研究で世界を変えよう!

米ドル?日本円? 貿易で使う通貨はどう選ぶ?

アメリカに自動車部品を売るなら

国際貿易とは異なる国の間の財・サービスの取引を指します。国が違うということは通貨も違うので、貿易をする際にはどの通貨で支払うの?という問題が出てきます。この「支払いを行う通貨」のことを決済通貨と呼びます。

例えば日本からアメリカに自動車部品を売る(輸出する)ことを考えてみると、日本円か米ドルかという選択がありそうです。日本の企業は従業員の給料や国内での生産にかかる費用を日本円で支払う必要があり、自動車部品の販売代金を日本円で受け取りたいと思うかも知れません。

反対に、もしこの日本企業が米ドル建てで原材料などを多く輸入していれば、その支払いにあてるために米ドル建てで販売代金を受け取りたいかも知れません。

通貨の選択が企業の収益を左右する

決済通貨は為替リスクを誰が負担するかを直接決めるので、貿易を行う企業にとっては収益を左右する大変重要な契約事項です。また、経済全体の決済通貨の選択状況によって、適切な金融政策運営が異なることも知られています。

私は輸出入企業双方の特性や、関係性、あるいは交渉力といった要素に焦点を当てて、決済通貨がどのように決定されているのかを研究しています。

多くの企業が共有できる指標を提案

決済通貨の決定や為替リスク管理のプロセスは企業の内部情報であることが多く、企業同士も他社の事例から学ぶ機会が多いとは言えません。私はこの研究を通じて、企業が決済通貨選択や為替リスク管理の課題に直面したときにベンチマークにできるような共有知を提供していければと思っています。

テーマや研究分野に出会ったきっかけ

大学時代にたまたま履修していた授業の内容が面白く、その授業を担当していた先生の国際金融論ゼミに入ったことがそのまま今の研究に繋がっています。ユーロが導入された1999年から間もない時期でしたので、通貨統合がどういった経済的影響を持つのかということに当時は興味を持っていました。

現在の研究テーマもその延長線上にあったものです。職業選択や(研究者ならば)研究テーマ選択は「たまたま周りにそれをやっている人がいた」とか「たまたまそういう記事を読んだ」みたいな、偶然とか出会いの部分が本当に大きくて、最初から崇高な理念や明確な目的意識を持っていたみたいな人は稀だと思います。

中高生の皆さんには興味のままに色々なものを見て経験して、本当に面白いと思ったことには躊躇なくアタックする姿勢を大事にして欲しいと思っています。

現地の共同研究者と仕事をするために、トルコのアンタルヤという街を訪れた時の写真です。仕事の合間に眺めの良いバルコニーでコーヒーを頂きました。
現地の共同研究者と仕事をするために、トルコのアンタルヤという街を訪れた時の写真です。仕事の合間に眺めの良いバルコニーでコーヒーを頂きました。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「輸出入者間の交渉および、輸出経験、貿易信用が決済通貨選択に与える影響」

詳しくはこちら

先生の分野を学ぶには
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

(2) 商社・卸・輸入

(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

銀行や商社といった業界に入る学生が多いです。国際金融論のゼミですので、「国際的な」仕事に興味のある学生は潜在的には多い気がします。商社に入って海外駐在をしている卒業生もいますが、全体として必ずしも海外とダイレクトに仕事をしている学生が多いという訳ではないように思います。

国立大学の大学院に進学した後に金融機関でエコノミストになった卒業生もいますが、こうしたケースではゼミでの学びがある程度直接活きているのかも知れません。

先生の学部・学科は?

私は国際経済学科に所属しているので、貿易や為替、国際協力といった分野に興味のある方は大歓迎です。一方で、幅広い分野の教員が所属している学部ですので、経済学に留まらない多くの学問分野に触れることができるところも魅力だと思います。

学びたいことが決まっていない方にも、入学した後で選択肢を提供できるところは良さではないでしょうか。大学に入る前からしっかりしたビジョンがあるという方は(当時の自分もそうでしたが)ほとんどいないでしょうし、無理してそれをする必要もないと思っていますので、気負いせず気軽に大学見学など来て頂きたいです。大学は出会いの場なので、「入ってから考える」で十分です。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

0ベース思考 どんな難問もシンプルに解決できる

スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー(ダイヤモンド社)

好奇心と素直さは何をするにも大事です。知ったかぶりをしないこと、人とは違う視点で物事を捉えること、子供のように考えることの大切さと面白さを教えてくれる、皆さんにおススメの本です。

たくさんの事例もエキサイティングです。学ぶこと以上に考えることが重要だということをぜひ感じてください。(もちろん「考えるための筋肉」としての知識も大切なので、読書や授業を通じてしっかり学ぶこともお忘れなく)


22世紀の民主主義

成田悠輔(SB新書)

政治本のようなタイトルですが、筆者の優れた思考法、モノの見方が学べる一冊です。今の選挙制度や民主主義をどうアップデートし得るかが提案されています。

民主主義の機械化という一見SF的だけれど手が届きそうなアイディアもワクワクします。未来を生きる皆さんにぜひ読んで欲しい本です。「言っちゃいけないことはたいてい正しい」という帯の文句も刺さります。


LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略

リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、訳:池村千秋(東洋経済新報社)

中高生の皆さんは「少子高齢化で日本の未来が暗い」といったことをずっと聞かされてきたのではないかと思います。でも(少子化はさておき)自分が長く生きられる可能性が高い社会に生きているということは、人生を選択できるチャンスがたくさんあると捉えることもできます。

また最近は多くの企業が副業を認める流れも出てきており、一つの仕事に囚われる必要もない、自由で楽しい世の中になっていきそうです。そういった新しい時代にどう生きていくべきか、指針を示してくれる必読書です。

一問一答
Q1.一番聴いている音楽アーティストは?

The Roots、Jamiroquai、Louis Jordan、James Carter、Roy Hargrove、Rebirth Brass Band、Nujabes、PUNPEE等々、音楽は好きです。

Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

コンビニの夜勤バイト、新聞社での編集作業、大学の先生の研究のお手伝いなど。

Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

子供がまだ小さいので、子供と遊ぶことや出かけることが楽しいです。一緒に公園で延々と蟻を観察していたりすると、結構発見があったりして面白いです。

Q4.好きな言葉は?

笑う門には福来る


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