企業の原動力は「デザイン力」。そのデザイン力ってどう測る?
「デザイン」とは絵を描くこと?
皆さん、「デザイン」は得意ですか。
得意/苦手と答える人、どちらもいるでしょう。でも、その答え自体はそう重要ではありません。僕の興味は、ここで皆さんがデザインをどのように考えたか、ということです。例えば「絵を描くのが得意」と考えて答えた人がいたとします。反対に「絵を描くのが苦手」と考えて答えた人もいるでしょう。単に、デザイン=絵を描くということなら、これではっきりするのですが、デザインとは絵を描くことだけではないですよね。
他に、デザインを「新しいことを考え出すこと」として、得意/苦手を考えた人もいるかもしれません。そうすると、さっきは絵を描くのが苦手だから、デザインは苦手と答えたけど、「新しいことを考えるのは得意だよ」という人がいたら、おかしなことになりませんか。あなたがもしデザインが得意な人を見つけたい場合、このようなことが起こると困ってしまうでしょう。
企業は「デザイン力」を持つ人を探したい
今、社会で同じことが起こっています。企業は先の見えない状況に立ち向かうべく、新しい社会を自らの手で作り出すための原動力として「デザインの力」を必要としています。
でも、先に見たようにデザインとはいろいろな能力が組み合わさってできています。いろいろな観点からデザインを問う質問を用意しないと、企業は本当にデザインの力を持った人たちを見つけられず、その力を使いこなせないのです。
デザインの力をもっと社会に活かしたい、それが僕の挑戦です。
現在、企業が今後のことを考える時に、一般的なのは「これまでどうしてきたか」「過去の成功した体験を再現する」という考え方です。一方、デザインは過去にこだわることなく「これから前向きにどうしていくか」「自分たちの手でこれからどのように新たな価値をつくり出していくか」を問います。
未来はまだ誰にもわからず、多分これまでやってきたことだけでは通用しません。そこで、過去にこだわらずに、これからのあるべき社会をつくり出す「デザインの態度」が有効になると考えています。
◆先生が心がけていることは?
自分もデザイン態度を持って、これまでのやり方にとらわれずに、これからのあるべき社会と生活を自分たちの手でどのようにつくり出していくか、という積極的に前を向いた態度を心がけています。
「企業のデザイン力を測定するための指標とツールの開発」
Roberto Verganti
ミラノ工科大学 経営工学研究所
デザインを、「問題解決」から「新しい意味の生成(新しい社会やくらしのビジョン形成)」へと捉え直す研究をしています。「問題解決から新しい意味の生成へ」の移行に着目したデザインの考え方の体系化を、世界でいち早く行っていることに影響を受け、彼の著作である『デザイン・ドリブン・イノベーション』(同友館)、『突破するデザイン あふれるビジョンから最高のヒットをつくる』(日経BP)を翻訳して出版しました。また2015年度および2019年度はミラノ工科大学に研究員として滞在し、彼のチームと共同研究を行いました。
◆3回生-4回生を対象としたゼミ「経営学部専門演習I-IV」では
このゼミは、経営学におけるデザインの有用性を明らかにすることをテーマにしています。そこでは、他者が作った問題(つまり、あらかじめ答えがある問題)に「いかにうまく答えるか」とか、頭に詰め込んだ知識を机の上で「いかにうまく取り出すか」ではなく、「何を問題とするか」を「自分で考える」ように強く課しています。
◆立命館大学 DML(Design Management Lab) (八重樫先生の所属するプロジェクト)
◆「デザイン」を経営に活かすデザインマネジメント(TWIST)
◆世界と日本におけるデザインマネジメント(TWIST)
◆主な職種
職種は特に限られず、デザインの考え方をさまざまな仕事に活かして活躍しています。
◆学んだことはどう生きる?
デザイナーという職種につかないとデザインができない/しないという時代は終わったと思っています。これからはさまざまな職種で、自分のデザイン力を仕事に活かしていくことが求められるでしょう。
立命館大学経営学部では、デザインマネジメント研究と教育を積極的に進めている点が大きな強みです。このようなデザイン学と経営学を横断した学際的な研究と教育を行っているのは、日本では本学部しかなく、美術系・芸術系や工学系・情報系の学部以外で、デザインについて積極的に教育・研究を展開しているところはほぼありません。
竜退治の騎士になる方法
岡田淳(偕成社)
「竜退治の騎士になりたければ、トイレからあなたが出る時、はいていたスリッパはもちろん、すべてのスリッパを次に使う人がはきやすい向きにきちんと揃えるのです」(本書より)。
ここでの竜とは、社会のあらゆる邪悪な心から生まれるものを示しています。それを鎮めるためには、まず身近なことすべてから邪悪さを取り除かなければなりません。それはデザインにも通じます。
良いデザインをするとは、いきなりかっこいい何かを追い求めることではなく、まず身近なことをひとつずつ丁寧にきれいに整えるところから始まるのだということを再認識させられた本です。小学生向けの児童書ですが、デザインとは何かを考えるきっかけとして、すべての人に薦めたい内容です。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? またもう一度、デザイン学を学びたいです。デザインには、自分で感じて、自分の頭と身体でものを考えるということが基礎にあり、18才の多感な時期にその基礎をしっかり身につけることは、その先の未来を拓くことにとても有効だと考えるからです。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 将来、宇宙に住めるようになったら、暮らしてみたいです。海外で暮らした時にも感じましたが、文化や生活習慣が異なる場での生活は、自分が考え行動することの意味すべてを問うことになります。一方でそれが、自分の新しい気づきを引き起こし、新たなアイデアを生み出すきっかけをつくります。宇宙は、たぶん今とはまったく違う環境で、そういうことがより強く経験できるはずで、楽しみです。 |