商学

フランスの小売業

フランスのユニークな小売業を、日本の商店街活性化のヒントに


佐々木保幸先生

関西大学 経済学部 経済学科(経済学研究科 経済学専攻)

出会いの一冊

デパートを発明した夫婦

鹿島茂(講談社現代新書)

19世紀のナポレオン3世下のパリで、世界初の百貨店ボン・マルシェ(現在も存続)が誕生しました。本書は、創立者のアリスティッド・ブシコー夫妻の様々な経営戦略を生き生きと描いています。バーゲンセール、豪華な店舗、広告、イベント、給与システムなど、どれも現代に受け継がれています。

そのような近代的な商業のあり方や経営戦略を学べるのみならず、資本主義の発展に伴い、どのように商業が発展していくのかというテーマに接近することができ、また商業の公共性、文化・芸術の重要性についても考えることができます。

こんな研究で世界を変えよう!

フランスのユニークな小売業を、日本の商店街活性化のヒントに

非営利+営利の商業形態「コメルス・アソシエ」

フランスでは、コメルス・アソシエと呼ばれる独特な小売業が発展しています。フランス語のコメルス・アソシエは日本語での適訳がなく、「協同商業」と訳していますが、その名が示すように、これは生協のような協同組合(非営利)とスーパーのような商業(営利)のハイブリッドといえます。

フランスでは、この協同商業がスーパーや薬品、眼鏡、スポーツ用品などの専門店チェーンの分野で、一般の大手小売企業(例えば、日本にも出店した大型スーパーのカルフールなど)と肩を並べて営業しています。

ハイブリッド型経営の持つ可能性

このような協同商業に「加盟」してチェーン店を営業する多くは、一般の小売店主です。日本の一般小売店や商店街の活性化を考えるにあたって、このようなハイブリッド型経営の持つ可能性は大きいと考えます。ここに、「比較研究」の意義があります。

私が大学院で流通や商業の研究を始めた時期は、大型店の出店を規制する「大店法」の改廃問題と商業を含んだ「まちづくり」が盛んに議論されていました。

それらを研究する上で有効となったのは、「比較流通研究」でした。また、この時期には、地域商業活性化も大きな政策課題となっていました。

スーパーやコンビニ、商店街などを含む「流通における多様性」の追求は、私の大学院生時代からの研究テーマです。さらに、ハイブリッド型形態の研究は、資本主義における流通の発展に新たな示唆を与えるでしょう。

コールドプレスジュース専門店(兵庫県尼崎市)との商品開発コラボと販売会
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研究発表大会でのブロック優勝班を囲んで
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SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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資本主義の発展は経済的な豊かさをもたらしますが、格差や貧困のほか、都市においては都市問題など様々な問題を引き起こします。都市や地域で生じる問題に、商業の多様な形態の発展を通して対応することができます。巨大小売チェーンだけでなく、商店街や生協のような協同組合、そして企業と協同組合のハイブリッド型商業など、「多様性」が都市や地域のサステイナビリティを実現するでしょう。

◆先生が心がけていることは?

「もったいない」をスローガンに生活しています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「フランスのコメルス・アソシエ(協同商業)に関する実証研究」

詳しくはこちら

どこで学べる?
先生のゼミでは
◆ゼミで取り組ませていること

私たちの社会は、多様な主体によって成り立っています。大企業についての研究のみならず、経済的弱者にも目を向けて研究するよう促しています。身近な商店街について調べ研究していくことも、社会のあり方を考える重要な方法です。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
天神橋筋商店街視察後の大阪天満宮での集合写真
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夏の研究発表合宿(関西大学セミナーハウス「彦根荘」)
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先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1)金融・保険・証券・ファイナンシャル

(2)不動産、賃貸・リース

(3)商社・卸・輸入

◆主な職種

(1)商品企画・マーケティング(調査)

(2)サービス・販売系業務(店長・マネージャー含む)

(3)一般・営業事務

◆学んだことはどう生きる?

ゼミ卒業生はメーカー、流通業、サービス業、金融業など幅広く多様な業界に就職しています。いずれの業界でも、ゼミで学び研究したマーケティングや地域活性化の知見を生かしていると聞いています。どのような分野でもマーケティングマインドやその手法は重要であり、常に顧客(利用者)目線に立ちながら業務に従事しています。


例えば、「買い物弱者」について研究調査したゼミ生は、就職先がちょうど「買い物弱者」対応に注力しており、研究内容を生かして働いているようです。電鉄企業に就職したゼミ生も、地域活性化研究を電鉄企業の沿線地域活性化業務に生かしています。

中高生におすすめ

君たちはどう生きるか

吉野源三郎(マガジンハウス)

本書を読み進むにつれて、「生産関係」という経済社会を学ぶ(経済学の)入り口に到達することができます。


都市をどう生きるか アメニティへの招待

宮本憲一(小学館)

都市再生をテーマに、読者を都市経済学、内発的発展論、環境経済学へいざないます。文化や芸術の重要性にも言及しています。


里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く

藻谷浩介(角川書店)

資本主義経済に対するオルタナティブ(代替)について、地方や外国の事例をあげて示します。GDPとは別の豊かさの指標に目を向けさせます。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

理系に進んでみたいです。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

研究対象であるフランス。多様な人々による社会のあり方を、肌で感じることができます。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

学生時代からハードロック好きです。最近でも80年代のハードロックをよく聞きます。その中でも、ロニー・ジェイムス・ディオ在籍時のRainbowの曲が好きです。

Q4.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『ニューシネマ・パラダイス』は今でも印象深いです。


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