◆先生の研究分野である「ヒューマンコミュニケーション基礎」とはどんな分野ですか。
人と人(あるいは機械)とのコミュニケーション支援に関する研究分野です。
例えば、駅などの公共施設にある案内表示の見やすさや、ウェブページの使い勝手の向上に関する研究や、人の視線や発話等の生体情報を測定して特徴を明らかにする研究、pepper君のようなロボットの自然な動作や表現に関する研究など、他にも多数の研究テーマがあります。人間そのものを分析する基礎的な研究から、人をサポートするためのツールの研究開発まで多岐に渡ります。
◆先生は、何を目指して研究していますか。
私の研究は、多様な人と人とのコミュニケーション支援に関する研究です。世代や文化が異なる人と、言葉に限らない様々な形の意思疎通方法を提案できればと思っています。それにより、コミュニケーション手段が広がり、単なる情報伝達を超えて気持ちの共有などコミュニケーションの価値も高まると思います。
◆先生は研究テーマをどのように見つけているのでしょうか。
日常生活の中で「こんな時、こんなことができたら良いのに」と思った時が研究テーマの発見です。今回のテーマも、海外旅行先でよくわからない食べ物などを見かけた時に「これ何?」にわかりやすく答えてくれるサービスがあると良いな、と思ったことがきっかけでした。
◆この分野に関心を持った高校生がアイデアを深めたりするのに、アドバイスをいただけますか。
美術館や展示会等に行ってみて、自分が一番興味を持つものは何か探してみましょう。
ライフログについては、例えば日常生活でも家計簿や手帳などの長期的な記録から何がわかるか、どんなことに使えそうか、など考えてみるとよいと思います。
ヒューマンインタフェースについては、駅の案内板、グッドデザイン賞受賞作品、便利グッズなど身近なデザインを観察してみて、「これ良いな!」と思う仕組みや「もっとこう改善してほしい!」という発想をもとに、「じゃあこんな仕組みにしたらどうだろう?」というアイデアを出してみましょう。
◆先生は、高校時代は、何に熱中していましたか。
バンド活動(ドラム)に熱中し、バンド練習や合宿、ライブハウスでライブした思い出が印象的です。ラウド系の音楽鑑賞やライブを見に行くことは今でも大好きです。
<先生が紹介されています>
・中央大学の研究者紹介記事ページ
望月理香さん(理工院修了)が文部科学大臣賞受賞
第23回先端技術大賞「色弱補正法の研究」で
ライフログのすすめ ―人生の「すべて」をデジタルに記録する!
ゴードン・ベル、ジム・ゲメル 訳:飯泉恵美子(ハヤカワ新書juice)
ライフログの基本概念と可能性、実践方法などが書かれています。著者はライフログの分野を切り開いた人です。
ライフログに興味を持った方やこれからライフログ関連の勉強を始めたい方はまず読んでいただくと、ライフログとは何かを理解できます。筆者自身がログを貯めた試行錯誤の体験談や、ライフログで世界がどう変わるか、そして、なにより筆者の実体験に基づく内容はとても面白く、参考になります。
ライフログの収集や分析に必要な手法に着目すると、何を勉強するべきかもわかります。例えば、いつどこに行ったかという位置情報や歩いた速度等の情報を集めたいと思ったら生体センサについて知る必要が、集めたデータから自分の歩き方の特徴や買い物の趣味嗜好を分析したいと思ったら、統計学を勉強する必要がある、といったようにです。
著者曰く、「人の記憶力には限界がある。だが、あなたの見聞きしたもの、触れたもの、そして普段は気にかけない自分の位置情報や生体情報まで、人生の『すべて』をデジタルに記憶させれば、いつでも簡単に検索して取り出すことができる」。
筆者のライフログ収集実体験をぜひ読んでみてください。
図解でわかる等価変換理論 ―技術開発に役立つ70のポイント
等価変換創造学会(日刊工業新聞社)
世の中にも実は類似性に基づく技術がたくさんあります。それらの事例をわかりやすく解説しています。技術のアイデアってどうやって生まれるのと思った方にお勧めです。
デジタル・メタファー ─ ことばはコンピューターとどのように向きあってきたか
荒川洋平(東京外国語大学出版会)
比喩やたとえによる説明といった言語学分野に興味がある方は、荒川先生の解説は大変わかりやすいのでぜひ一読ください。
『デザインあ』
NHK Eテレで放送。子ども向けのデザイン的思考を育てる番組ですが、大人が見ても興味深いです。デジタルアート、物理現象など面白い作品の背景に実は技術要素が隠れている点が面白いです。また、『テクネ』(NHK Eテレ)もおススメ。こちらの方がより大人向けです。
NTTインターコミュニケーション・センター(略称:ICC)
NTT東日本が運営する、初台のオペラシティにある無料でアーティストやサイエンティストの作品を見ることができる施設。最先端の技術的なアート作品・活動を知るのにおススメです。