◆研究分野について教えてください。
ヒューマン・コンピュータ・インタラクションは人とコンピュータとの関わり合いを研究する学問です。人は道具を使うことで自分ができることの種類と範囲を広げてきましたが、近年は特にコンピュータの力によって飛躍的にその能力を伸ばしていると共に、自分で新しい道具を作り出すことが容易となりました。多くの道具が生まれ、多くの人に使われる時代においては、そういったものを使いやすく便利にするのと同時に、それらによって人の認識や行動がどう変化するかを考えることは非常に重要です。我々は実際に様々なシステム、デバイス、サービスなどを作って使ったり実験したりしながら未来の人間とコンピュータの関わりを模索しています。
◆先生の研究は、どんな社会的な意味や成果になっていくのでしょうか。
人間が、とても頑張ったり苦労したりすることなく、それぞれの力を発揮するためにどのような工夫が必要かということを研究しています。例えば楽しい事をする時には苦労を忘れることができます。もしすべての仕事がとても楽しければ、何事でも苦しい、たいへん、やる気が出ないという状態を経験せずに、成果を出せるかも知れません。簡単なゲームなどを通じて小さな範囲でそういった状態を実現することで、より広い範囲に応用できる人間の基本的な性質と、それをうまく使うためのシステムを日々考えています。
◆どのように研究テーマを見つけたのかを教えてください。
小学生のころからゲームを作って周囲の人を楽しませてきました。どういうことが人を楽しませるのか、楽しませるためにはどう作れば良いのかということを長年考えた結果、それはゲームに限らず多くの事に応用できると気づき、研究の道に入りました。
◆この分野に関心を持った高校生に、具体的なアドバイスをお願いします。
私自身は研究室を持っていませんが、私が所属している企業で開発しているゲーム開発のためのソフトウェア、Unityは小学生からプロまで多くの人が使っています。まずはそういったものを自分で勉強をして簡単なゲームやコンテンツを作り、周囲の人を楽しませるというところから始めましょう。
何本も作っていると、必ず自分には足りないものがあるということがわかってきます。その時に、過去に多くの研究者が積み重ねてきた知識や技術などが役に立ちます。好きな事に打ち込むことで、自分がどういったことを勉強するべきかが見えてきます。
※なお、中高生でも会社見学は可能です。
◆高校時代は、何に熱中していましたか。
ゲーム作りに熱中していました。スーパーファミコンの「ファイナルファンタジー」シリーズなどの格好良い演出やキャラクターの動きを自分でも真似して作成することで、多くの事を学びました。
◆簗瀬先生 関連記事
◆コードアカデミー高等学校インタビュー
・Unity 動画vol 1〜会社・業界編〜
・Unity 動画Vol 2〜簗瀬さん個人編〜
◆日本最大のコンピュータエンタテインメント開発者向けカンファレンス「CEDEC2016」
・CEDEC 超人スポーツ講演(CGWorld)
ドラえもん科学ワールド special −ひみつ道具Q&A−
藤子・F・不二雄 日本科学未来館:監
子供の頃に誰もがあこがれたドラえもんの道具について、科学のプロが実現の可能性やその仕組みについてわかりやすく解説しています。ドラえもんの未来は今の世の中の先にあるかも知れないと思わせてくれます。
高校生にとってドラえもんはやや子供っぽいコンテンツに見えるかも知れませんが、多くの人が「こうであったらいい」「こうだったら楽しい」と考える願望をシンプルに道具として実現したものが多く、実際に人間の未来を考えるうえで大いに役立ちます。
のび太をはじめとするドラえもんの登場人物は新しい道具を見ると、こんなことに使えるだろうと考え、実際に使い、さらに新しい、面白い使い方を模索します。中にはそれらの道具の作者さえ考えつかなかったものがあるはずです。今できないことができると人間の未来はどうなるか、と考えることこそ研究の原動力であり、科学を発展させていくために大切な力です。ドラえもんはそういった力の原点が描かれています。