◆専門分野である、「コンピュータグラフィクス」について、簡単に説明してください。
コンピュータグラフィクスは主に映画やテレビ番組(実写・アニメ問わず)などの映像制作で使われる情報処理技術で、日本では略称でCGと呼ばれることが多いです。例えばハリウッド映画では、空想上のキャラクタが登場するシーンや宇宙空間などの撮影困難なシーンでは、ほぼ間違いなくコンピュータグラフィクス研究の成果が使われているでしょう。また、随分前には人間の目には実写との見分けがつかないリアルなコンピュータグラフィクスは実現しているので、普段何気なく目にしている映像にも、気づかないところでコンピュータグラフィクスが使われているかもしれません。
その他にも、ゲームやバーチャルリアリティ、拡張現実もコンピュータグラフィクス技術が使われていますし、さらには医療・建築・教育・ものづくりなど、様々な周辺領域と密接な関わりがあるのもコンピュータグラフィクス分野の特徴です。
コンピュータグラフィクス技術は、実は膨大な数式の上に成り立っています。数学を突き詰めていくことで綺麗で豊かな映像表現ができるようになるなんて、不思議に思うかもしれません。しかし、そこがこの研究分野の面白いところでもあるのです。
◆小山さんが、発展させようとしている研究やめざしているものはどのようなものですか。
私はコンピュータを駆使した新しいデザイン・創作支援技術を研究しています。コンピュータはまだまだ人間のように何かをデザインしたり創作したりすることは苦手ですが、その一方で、数学的な問題を高速に解くのは得意です。そこで、その計算能力をうまく活かすことで、人間のデザイン・創作活動を支援(自動化とは少し違います)しようとしています。
これによって、人間の脳みそによる想像力や手作業による効率の限界を超えて、もっと面白い表現を可能にしていくことをめざしています。プロのアーティストやデザイナーがもっとすごい表現をできるようになるだけでなく、プロでない人でも自由自在にデザインや創作ができるようになるかもしれません。
◆研究テーマをどのように見つけてきましたか。
もともと何かをデザインしたり創作したりする方法を学ぶことが好きでした。例えば高校生の頃(10年以上前)には、文化祭のウェブページをデザインするため、HTMLやCSSを学んだり、写真加工方法を学んだり、グラフィック素材の作り方を学んだりしていました。最近は写真撮影、映像制作、作曲、イラストなどに興味があります。
こういったもともとの興味もあったため、大学に入りコンピュータ科学を学んでいくうちに、デザインや創作の過程を数学的に記述するにはどうすればよいかを自然と考えるようになりました。そこから着想を得て、今の研究テーマにつながったのだと思います。
◆この分野に関心を持った高校生にアドバイスをお願いします。
デザイン・創作に興味を持ったなら、次はプログラミングを学んでみるのがオススメです。プログラミングを学ぶと、デザインや創作の際にできることの幅が広がるだけでなく、コンピュータの得意・不得意がわかるようになってきます。
それから、実は数学と英語が重要です。数学は、自分の実現したいことをプログラミングに落とし込む際の基礎力になります。英語は、最新の技術情報(多くの技術は英語の情報がほとんどです)を得る際に必要不可欠です。
◆高校時代は、何に熱中していたかを教えてください。
高校時代は文化祭実行委員として文化祭の準備に熱中していました。また高校からギターやキーボードを始め、バンド活動もしていました。それから大学受験に向けて勉強ももちろんしていましたが、(河合塾で受講した苑田尚之先生の講義をきっかけに)物理の面白さに気づき、物理ばかり勉強していました。
アニメCGの現場 2017
CGWORLD編集部(株式会社ボーンデジタル)
主に2016年に放送・上映されたアニメ作品(「魔法つかいプリキュア!」「ガールズ&パンツァー劇場版」「君の名は。」など)を中心に、その作品でどのようなコンピュータグラフィクス技術がどのように使われていたかが詳しく紹介されています。アニメ作品の制作過程を垣間見ることができ、アニメファンには特におすすめです。「ああ、あのシーンはこうやって作られていたんだ!」とわかります。そのときに、アーティストの技巧の素晴らしさとともに、そこで使われているテクノロジーにもぜひ着目してみてください。
この本は技術書や学術書ではありませんので、コンピュータグラフィクス研究について直接的に知ることはできませんが、コンピュータグラフィクス研究が支える産業の一つである日本のアニメ産業の最先端に触れることができ、そこから背後にあるテクノロジーにも興味を持っていただければ幸いです。