多くの研究成果により、人類の歴史がかなりよくわかってきた。かつてわれわれホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人など兄弟種とも言える人類と共存していた時代があった。その中で、最終的にホモ・サピエンスだけが生き残ったのはなぜか、ホモサピエンスの脳の特徴とどう関連しているのか。ここ数年の研究成果がわかりやすくまとめられ、「人とは何か、心とは何か」という疑問にヒントをくれる本になっている。 （馬場悠男、海部陽介：監修／NHK出版）

日本人の起源はどこにあるのか。その謎を解くために開発された細胞の核DNAを用いる解析手法について、人類進化学、ゲノム進化学の研究者がわかりやすく解説している。ここ10年足らずの間に急速に蓄積された膨大な核・ゲノムデータの解析結果に基づいて、ホモサピエンスが誕生した時間と場所から、縄文人が日本列島まで到来した時期が推測できる。今後さらに飛躍的な発展が期待される手法が持っているパワーが感じ取れる。 （河出書房新社）

ジャワ原人や北京原人など多くのヒト属がある中で、なぜ我々の祖先であるホモ・サピエンスだけが生き延び、文明を築いて現在の繁栄を手にすることができたのか。人類のルーツついて科学的に考察し、一般にもわかりやすく説明した世界的大ベストセラー。文系に近い分野で科学的に考えるということの意味についても考えさせられる。 （柴田裕之：訳／河出書房新社）

アフリカで誕生したヒトが世界中に拡散する過程をわかりやすく解説する。人類の地球規模の移動をテーマに、形態学、遺伝学、霊長類学、古環境学、言語学、考古学、古地理学、民族学など12人の研究者がそれぞれの専門分野から、2012年刊行時点での当時の最新の研究を紹介している。人類学はいろいろなアプローチ方法・分野があるが、この本は、自分の興味がどの分野にあるのかを見つけるのに適した書だ。ひとつの仮説だけを紹介するのではなく、別の仮説がある場合にはそれも紹介している。これは科学の客観性を示している点で、良い書籍だといえる。 （朝日選書）